【トミーカイラ ZZ 試乗】味わったら病み付きになる加速、まさに公道のレーシングカー

試乗記 国産車
トミーカイラ ZZ
トミーカイラ ZZ 全 25 枚 拡大写真

『トミーカイラZZ』(ZZ)は、公道を走れるEVレーシングカーと表現される。2シータ―でリクライニングしないバケットシート。幌は装着可能だがフロント以外ウィンドシールドなどはいっさいない。そのため、車体外側にはドアノブもない(内側に手をいれて開ける)。もちろんエアコンやヒーターなどもない。まさにレーシングカーと呼ぶにふさわしいまで走りに必要のない装備をそぎ落としている。なお、さらに補足するとEVなのでシフトレバーやクラッチペダルもない。

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とはいえ、装備を落としただけで、レーシングカーを名乗っているわけではない。アルミフレームにボディはすべてFRP。サスペンションはパイプフレーム式の4輪ダブルウィッシュボーン。一般の乗用車やスポーツカーに採用されるストラット方式のサスにAアーム(ロアアーム)とアッパーリンクを組み合わせた方式ではない。最大出力は305ps、最大トルクは42.2kgmと、2リットルターボのスポーツカー並みの動力性能を持つ上、重さがおよそ850kg。スペックだけでも「スポーツカー」ではなく「レーシングカー」と表現する理由がわかるだろう。

試乗コースは、東雲から一般道を経由して台場から首都高に乗り、横浜の大黒PAを目指す。帰路は、本牧ふ頭で降り、みなとみらいエリアを抜けて一般道で戻るコースとした。乗り降りはまさにレーシングカーそのものだ。ハンドルにチルト機構はついているが、コックピットはフレームと一体化したアルミの箱であり、シートとハンドルの隙間に足を入れる。ドアは開閉するが、「箱」のへりをまたぐ必要がある。ヘリはロールケージのサイドバーくらいの高さがある。ただし、乗ってしまえば足元は十分なスペースがある。

EVなので走りだしは非常になめらかだ。インバーターの制御はテスラ『モデルS』とも違うレーシングカーを意識した制御と聞いていたが、ゆっくり踏めば踏み方のとおりの反応をしてくれる。ただし反応は、リニアかつダイレクトなので普通の乗用車のようにラフな操作をすると出足に驚くかもしれない。EVドライバーならその加速はわかるかもしれないが、ZZはさらにその比ではない。ガソリン車でターボ車を運転している人でも、おそらく「すごい」と思うだろう。まさに異次元の加速といってよい。

そしてもっと注意しなければならないのはブレーキだ。ブースター(エンジンの負圧を利用してペダル踏力をアシストする機構)がついていないので、意識して踏まなければならない。とくに踏み込み始めに空走している感覚があるので、慣れないうちは早めのブレーキを心掛けたい。ブースターがない分、ブレーキの効き具合もダイレクトに感じられるので、足で聞き具合を感じつつ停止までの速度調整をできるようにするとよいだろう。

高速に入るときや走行中の中間加速も、EVならではの感覚が体験できる。加速のための合流ランプではアクセルをすこし踏み込むだけでよい。速度は踏み込んだ量にほぼ比例する。いわゆる自動車のアクセルペダルというより、電車のマスコンを足で操作していると思ったほうが分かりやすかもしれない。アクセルに乗せる足の力をちょっと加減するだけでスピードコントロールが可能だ。慣れてくると、合流の速度調整も意のままという感じで苦にならない。

ハンドリング性能もレーシングカーといってもそん色ないだろう。クイックであり操作に対して非常にシャープな反応をしてくれる。半面、「遊び」がないので気を抜けないのだが、パワーステアリングではないので、適度なハンドルの重さが安定感を生み、操作に神経をすり減らすほどではない。むしろ、適度な緊張感が運転している楽しみを増幅してくれる。また、ステアリングラックから路面の反応やタイヤのグリップ具合など、ハンドルでダイレクトに感じることができるのも、余分なアシスト機能などない車の醍醐味だ。

そして、交差点や高速のカーブなどでロールしない感覚、地面に吸いつくようなコーナリングは、パイプフレーム式の4輪ダブルウィッシュボーンならではの感覚だ。

走行性能は申し分ないが、EVの場合、どうしても気になるのは航続距離、バッテリーの減り方だ。カタログスペックではフル充電で120kmとなっている。今回、東雲から横浜までの往復(往路:高速道路、復路:一般道)で走行距離はおよそ70km。大黒PAで10分ほどの急速充電を行ったが、返却時のバッテリー残量はおよそ60%だった。

バッテリーの残量は、モーターやバッテリーの温度も加味して表示されるとのことで、走行中や走行直後は実際より多めに減っているように見えるそうだ。バッテリーを節約するような運転は意識しなかった(というか、運転が楽しくてそこまで気が回らなかった)が、おそらく途中の充電がなくても戻ってこれたのではないかと思う。なお、大黒PAの充電の前の残量が70%くらいだった。10分の充電で、残量はほぼ100%まで回復している。

トミーカイラZZは、加速性能とハンドリングに関しては、いわゆる「スポーツカー」とは違った性能を楽しめる類まれな車といっていいだろう。EVでスポーツ走行なんて無理だろうと、もし思っている人がいたら、このZZはそんな固定観念をみごとに打ち砕いてくれるだろう。とくに、信号待ちから音もなく加速していく感覚を味わったら病みつきになるのではないだろうか。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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