20年ぶりに再会、初代「Audi TT」に見たバウハウスの血統と変わらぬ世界観

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アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)
アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)全 36 枚

日本導入20周年を迎えた初代Audi TTとの「再会」

アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)
そうそう、コクピットのこの包まれ感! 始めのうちは冷静を装っていたが、走行シーンの撮影が始まり、ひとりになった途端、“再会”できたことの嬉しさのあまり、心のなかで小躍りしていた。

再会の相手とは、今年で登場20周年を迎えたアウディ『TT』の最初期型、「Audi TT Coupe 1.8T quattro」。アウディジャパンがコンディションのいい個体を選び、外観はもちろん、ブッシュ類も含む足回りの細部に至るまでレストアをかけ、仕上げたという個体だ。

きのう納車されたばかりのように磨きあげられた……そう言われてもおかしくないボディ色は、初代TTのイメージカラーだったシルバーレイクメタリック(5B)、6アームデザインのアルミホイール(7.5J×17)も標準そのままだ。

アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)
インテリアも、本革&アルカンターラのシートを始めオリジナルを保っていた。特徴的だったコンソール、エアコンの吹き出し口、オーディオのカバーなど随所にちりばめられたアルミパーツ、“回す”ではなくレバーを左右に“クリック”させて操作する空調ダイヤル、カメラのレンズのようなコーティングがかかったメーターガラス etc……。

精緻、クール、そんな言葉で言い表せる室内空間の心地よい緊張感と斬新さは、懐かしくも今なお新鮮に感じる。

ピュアスポーツカーだったのだと再認識した

アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)
一方で走りは、20年前に試乗した時よりも“手応え”があった。搭載エンジンは1.8リットルの4気筒5バルブターボで、225ps/28.6kgmの性能は、当時としても“奮った”スペックだった。

これに電子制御油圧多板クラッチを用いたフルタイム4WDのquattroが組み合わせられ、アウディならではのスポーツカーの走りをモノにしていたのだが、今回改めて乗って実感したのは、エンジン、ハンドリングなどのすべてのフィールが、コチラの心構えを超越した、きわめてダイレクトで気骨あるものだった……ということ。

率直なところその感覚は意外でもあり、もっと大人しいクルマのイメージを持ってきたのだが、『TT』が単にスペシャルティクーペではなくピュアスポーツカーだったのだと再認識、そのイメージが上書きされた次第。

100km/hは6速で2500rpmを切る程度だが、高速巡航も安楽というよりも、クルマが懸命に疾走しているのを感じていられるところが刺激に溢れている。

「バウハウス」の流れを色濃く受け継いだデザイン

アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)アウディ TTクーペ 1.8T クワトロ(初代・フルレストア車両)
ところで『TT』は、その登場以来、アウディのデザインを象徴する存在としても役割を果たしてきた。そしてデザインの観点で言われてきたのが“バウハウス的”ということ。

バウハウスはアウディと同じドイツにある造形学校で、建築家ヴァルター・グロピウスにより古都ヴァイマールに開校されたのが1919年のことだから、今年でちょうど100周年を迎えた。もともと建築が中心だったが、“造形は機能に従う”の思想は、後にデザイン、プロダクトの分野に広く影響をおよぼし今日に至るのはご承知のとおり。

我々の身の回りにもバウハウス由来のシンプルで機能的な美しさで目を惹くデザインや製品は数多く、広く愛されているが、自動車の分野でいえば、凛とした存在感を放つアウディ『TT』のデザインは、ドイツを象徴するバウハウスの流れを色濃く受け継いでいるといえる。

ブレることなく新型へ受け継がれた、Audi TTの世界観

アウディ TT 改良新型アウディ TT 改良新型
なお『TT』は最新モデルで3世代目にあたり、今年フェイスリフトも実施した。注目したいのは、時代の流れる速度がこれだけ速い現代でも、いささかもブレることなく初代からのコンセプトが受け継がれているという点だ。

とはいえ、今回試乗のチャンスがあったレストア版初代モデルと較べれば、当然ながら現行型からは20年分の時代の進化は否応なしに感じられるところ。とくに走りは、意のままのハンドリングはそのままに、現代の『TT』は最新の技術を得て、乗り味や各部の操作系を始め、全体の洗練度が格段に高められていることを肌で実感する。

たとえば20年前の初代『TT』の味が忘れられない、または憧れた、そんなクルマ好きがもう1度、今の『TT』のコクピットに収まったとしたら、進化しつつも変わらない世界観と『TT』ならではの思いのままの走りが健在であることが嬉しく思えるに違いない。

アウディジャパンは、バウハウス100周年を機に開催される巡回企画展「開校100年 きたれ、バウハウス -造形教育の基礎- 」を協賛している。新潟市美術館で8月から、西宮市大谷記念美術館で10月から開催された(すでに終了)。2020年は、高松市美術館で2月8日(土)~3月22日(日)、静岡県立美術館で4月11日(土)~5月31日(日)、東京ステーションギャラリーで7月17日(金)~9月6日(日)に開催される。バウハウスの一端を見て、体験できる機会となる。

Audi TT Coupe 詳細はこちら

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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