【川崎大輔の流通大陸】コロナ禍のアセアン主要5カ国、新車販売事情

タイの首都バンコク(アソーク付近)
タイの首都バンコク(アソーク付近)全 2 枚

◆2021年のアセアン主要5カ国の、新車販売台数15%増加

2021年のアセアン主要5カ国合計の年間新車販売数は、通年で272万台だった。2020年比(237万台)で15%増加したが、2019年比(333万台)には届かなかった。2020年はコロナ以前の19年対比で30%以上の落ち込みで、2021年はコロナ以前の19年対比で20%のマイナスであった。コロナ以前の市場規模への回復にはまだ至っていない。

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月別新車販売台数の推移を見ると、コロナショックによる落ち込みは2020年4月に底を打った。コロナ以前の販売台数よりも低いレベルでの推移ではあるが、2020年末まで右肩上がりを維持し、2020年12月にはコロナ前の水準にまで回復した。しかし再び、2021年の1月に販売台数が減少。新型コロナウイルスの感染再拡大で経済活動の制限が厳格化されたタイとマレーシアで販売状況が悪化したためだ。第2波が発生し消費者心理が冷え込んだ。その結果、両国とも新車販売台数が対前年比同月で20%以上落ち込む結果となった。

2021年4月から6月期は5カ国全ての国の経済がプラス成長となり新車販売市場も上向いたが、2021年6月から7月にかけて発生したコロナ変異種デルタ株の感染急拡大による影響で販売台数が減少。一方、足元では回復をしており、2021年12月には主要5カ国の新車販売台数はコロナ以前比で約10%増加している。12月単月で見ればインドネシア、マレーシア、ベトナムがコロナ以前の販売台数を超えている。アセアン各国とも2022年の新車販売台数は2021年を超えると見通されている。

◆インドネシアの新車販売台数

~予測上回り21年新車88万台

2021年に主要5カ国の中でトップ、88万台の新車販売台数だったインドネシア。2021年12月単月ではコロナ以前の2019年同月比で10%も増加した。一方で、2020年のインドネシアの自動車販売台数は53万台と50%の大幅減。2020年4月からジャカルタを含む主要地域でのロックダウンで4月、5月の新車販売は落ちこみ、その後の月も対2019年同月比で50から70%ほどのマイナス成長と低迷が続いた。

しかし、2021年3月に政府は新車購入時の奢侈(しゃし)税減免措置を導入してから販売が回復。2021年12月は対2019年比で10%以上増加した。奢侈税減免措置が、2021年12月の年末で期限を迎えたことによる駆け込み需要、および年末の販促活動が年末の販売台数増加を後押しした。インドネシア政府は2022年も奢侈税の減免を続けるか方針がまだ出ていないが、関係者によれば22年通年の新車販売台数は90万台に達すると予測を示している。

◆タイの新車販売台数

~コロナ禍で落ち込んだ前年も割り込み76万台

2021年の新車販売台数は前年比4.2%減の76万台となった。前年(2020年)の落ち込みの反動でプラスが期待されたが、コロナ禍によって落ち込んだ2020年の販売台数をさらに下回るという結果となり、コロナショックによる市場縮小への圧力を再認識する結果となった。

特に2021年6月から8月にかけて発生したデルタ株の感染急拡大により、消費者心理が冷え込み新車販売台数減となった。コロナショック以降、2020年通年では79万台。2019年の100万台に比べて20%以上も落ち込み、3年ぶりに100万台を割り込んだ。

2020年1月は新型コロナウイルスの国内感染が確認されタイ国内に広がった。3月下旬に非常事態宣言が出て、夜間外出禁止や越境移動制限などの厳しい規制措置を実行。日系自動車メーカーの多くが3月下旬から5月にかけて、工場の一時停止や減産措置を行い、新車販売台数が落ち込んだ。5月以降は少しずつに回復傾向を見せたが、コロナ以前の市場規模までの回復はできず約20%の大幅な減少となった。関係者によれば市場は徐々に改善するとみており、22年通年のタイの新車販売台数は86万台を見込んでいる。

◆マレーシアの新車販売台数

~厳しい移動制限令に左右された自動車市場

2020年のマレーシアの自動車市場は、コロナショックによる感染拡大で発令された移動制限令に大きく左右される結果となった。2020年通年は53万台で、コロナ以前の2019年60万台に比べ12%落ち込んだ。2020年3月以降、移動制限令により1ヶ月半ほど自動車製造・販売ともに操業が停止し一気に落ち込んだ。誤解を恐れずに言えば需要がゼロになった。2020年4月単月の販売台数はわずか141台。

経済活動が活性化しだした2020年6月以降に政府は景気刺激策を実行。乗用車にかかる10%の売上税に対する減免措置を行った。これが新車販売を後押し。下半期は毎月前年同月比を上回る販売台数となった。2021年通年では、3.7%減の50.9万台でコロナ以前の販売台数を超えることはできなかった。

マレーシアはデルタ株の感染拡大によって他国に比べても厳しい規制を行った。2021年6月にロックダウンを実施し7月以降も出勤制限等の措置が続いた結果、6月、7月の新車販売台数は例年の5%から15%ほどのわずかな販売台数となった。感染が沈静化した9月になると販売台数が大幅に改善し10月以降はコロナ以前の販売台数を超えて推移をした。マレーシア自動車協会(MAA)は2022年の新車販売台数は60万台と見通しを立てており、コロナ前の水準にまで回復が期待されている。

◆ベトナムの新車販売台数

~アセアン4位の市場規模30.5万台

ベトナムは、2020年通年では29.6万台(ヒュンダイ・タインコンと地場のビンファストは含まず)で、コロナ以前の2019年に比べて8%減となった。しかしこの数字はタイ、インドネシア、マレーシアに次ぐアセアン4位の台数。昨年に続き4位を維持した形となった。

2020年1月下旬に新型コロナウイルスの感染が発覚以降、外出自粛など人々の消費マインドや行動が変化。4月にベトナム全土で外出制限を伴う隔離措置を出し、自動車販売店も一時的に休業となり新車販売は大幅に落ち込んだ。7月末に第2波の感染がダナン中心に発生したが、アセアン他国に比べ感染拡大を早期に封じ込めることに成功。その結果、新車販売は9月以降に上昇に転じた。2020年前半は厳しい状況だったが後半に一気に回復。

ベトナムが後半に回復できた理由として、1つ目に、政府による減税措置の支援策がある。2020年6月から12月までの期間、国内で組み立て生産された自動車の登録料を50%減額。この減税が国産車の販売を後押し。2つ目に国内のコロナ感染早期封じ込めに成功したことだ。これによってベトナム経済はコロナ禍の中でも2020年に入ってから4四半期連続でプラス成長を維持できた。2021年通年の新車販売台数は、コロナ以前の2019年の通年販売台数(19年対比-5%)は超えることはできなかったが、前年比3%増の30.5万台だった。

2021年初頭は経済の回復に向けて順調なスタートを切っていたが、4月に発生した第4波が猛威をふるい、新型コロナウイルス感染拡大に伴う隔離措置が実施された。更に7月以降により厳格な隔離措置が実施された結果、新車販売台数は減少した。9月以降は隔離措置の緩和とともに販売は持ち直した。10月から12月は、コロナ以前の2019年同月比でプラスとなった。2021年11月に再び政府は国内生産車の自動車登録料を12月から6カ月間半減することを決定した。その結果2022年の新車販売台数の増加が期待されている。トヨタベトナムの上田社長は、2022年のベトナムの新車販売台数は回復を見込んでおり、現状で30万台強の市場規模は向こう数年で50万台を突破するとしている。

◆フィリピンの新車販売台数

~コロナ以前比で40%減(2020)、26%減(2021)

フィリピンは、通年は22.3万台(2020)、27万台(2021)でコロナ以前の37万台(2019)に比べて40%(20)、27%(21)の大幅減となった。2020年のフィリピンの新車販売は、タール山の噴火活動活性化による影響で、マニラ首都圏およびその周辺の自動車販売代理店の営業が停止し2020年1月の新車販売台数が1割近く落ち込む影響を及ぼした。

更に、新型コロナの感染拡大を防ぐため、3月中旬から厳格な経済・移動制限措置を実施。3月中旬から5月中旬まで、厳しい制限により新車販売に大きな制約が課され自動車販売代理店は休業を余儀なくされた。2020年5月中旬以降、制限が緩和され、一部の販売代理店は営業を再開したため、4月を底として新車販売台数は回復基調となったが、通年の大幅減少をカバーするまでには至らなかった。2021年通年の新車販売台数は、前年比20%増の27万台だった。

2021年8月に入ってマニラ首都圏に最も厳しい隔離措置を適用したことから8月の新車販売数が減少したが、9月中旬以降、コロナ感染者数は急速に減少し、制限が緩和されたことから9月以降は緩やかな回復基調となり2021年を終えた。

◆アセアン各国の政府施策に期待

2022年に向けて自動車生産、販売台数が増えるかどうかまだ楽観視はできない。コロナの拡大状況、サプライチェーンの構築、半導体の確保などの長期的な課題もあるが、2020年6月以降にマレーシアが行った景気を刺激するために乗用車にかかる10%の売上税に対する減免措置、また2021年にインドネシアが消費喚起のために行った新車購入時の奢侈(しゃし)税減免措置、ベトナムで行われている国内の自動車生産と販売を促進するための減税措置など、政府によるコロナ対応施策としての上手なコントロールが2022年度以降の新車販売台数を大きく左右するだろう。

<川崎大輔 プロフィール>

大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年より自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。2017年よりアセアンからの自動車整備エンジニアを日本企業に紹介する、アセアンカービジネスキャリアを新たに立ち上げた。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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