【現地取材】製造時間を短縮、効率的かつ品質にも拘るTEINの工場経営とは…

工場一面に設置された太陽光パネルで消費電力の約90%を賄う
工場一面に設置された太陽光パネルで消費電力の約90%を賄う全 13 枚

勃興するEVメーカーの圧倒的な開発スピードに引けを取らないTEINの“多品種少量生産”かつ“高品質”なものづくりの背景には、効率的な生産ラインをもつ中国工場の存在があった。

●生産LT24時間化によるメリット

TEIN 専務取締役 中国工場董事長 藤本吉郎氏TEIN 専務取締役 中国工場董事長 藤本吉郎氏生産LTの短縮化で多品種少量生産のビジネスモデルを実現した生産LTの短縮化で多品種少量生産のビジネスモデルを実現した

現在、TEINの手がけるサスペンションをはじめとする製品は約3000種類にも及ぶが、今後EV車の展開に伴って乗り心地を求めるユーザーが増えることで、その種類がさらに増していくことは予想に難しくない。多様な製品を展開していく中で安定的に収益を上げるために生産におけるLT(リードタイム)の短さが重要である。TEINは素材から製品完成の生産LTの短縮化、24時間化に成功しており、これにより多数の在庫を抱える必要がないため低リスクで、かつ欠品に即座に対応できる高リターンな多品種小ロットでの工場運営が可能となった。

●生産LT省略可の背景にあるTEIN独自のERP一元管理

独自のERPシステムでリソース、アウトプットの情報をリアルタイムで共有する独自のERPシステムでリソース、アウトプットの情報をリアルタイムで共有する

生産LT短縮のためにTEINグループ12拠点でERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)を一元で管理している。具体的にはTEIN内の情報連携だけではなく、サプライヤーや販売店とリアルタイムで情報を共有している。販売店から得た3カ月先の売上予測のデータをもとに生産品種、個数を決定し、サプライヤーに対して発注情報を迅速に共有する。リソースからアウトプットを徹底的に管理することで、LTの短縮を行っているのだ。

●24時間で完成するTEINのサスペンションの強み

超仕上研磨装置超仕上研磨装置
中央のピストンロッドに赤いレーザー光をあてることで傷検査を行う中央のピストンロッドに赤いレーザー光をあてることで傷検査を行う

TEINは生産LTを短くする一方で一つ一つのサスペンションにも性能、耐久性に関してこだわりを持ってモノづくりをしており、ピストンロッドの表面には“超仕上研磨”と呼ばれる独自の研磨を施す。鉄材から削り出されたピストンロッドは図面を元に、より精巧な成型をするために研磨を行うことが一般的で、筒状のピストンロッドの円周に対して平行方向に研磨を行うが、前後に動く砥石に回転させたピストンロッドを挿入することで斜め方向の研磨を行う。表面にクロスハッチ目をつけることで、平行方向の研磨では得ることのできない低フリクション性を獲得しつつオイル漏れのリスクを最小限にていて、これにより潤滑性と耐久性を兼ね備えたサスペンションを製造する。また、ピストンロッドやベースバルブなど重要部品は独自開発の画像処理検査機で傷検査を行うことで品質を担保している。

●環境に配慮した工場経営

TEIN 中国工場 生産技術副総経理 大森 栄氏TEIN 中国工場 生産技術副総経理 大森 栄氏
切削水再生装置切削水再生装置

20~30年前の公害問題がクローズアップされた背景から、現在は中国での環境基準が非常に厳しくなったという。その中でTEINは環境に配慮した工場運営を行っており、工場全体に設置された太陽光パネルは1日当たり1万kWhの発電が可能で、工場で使用される1日の消費電力の約90%を賄っているほか、生産工程で生じる切削水・切削油・研磨水などの廃液は一切廃棄せず、メッキ工程における老朽化されたメッキ液については再電解処理を行い再び使用している。中国では外資系企業にあたるTEINは一層環境問題に配慮をしておりゼロエミッション・カーボンニュートラルを掲げ、環境に負荷のない工場運営を実現し、2015年現在比でサスペンション1本当たりのCO2排出量は半減した結果、宿遷市ではTEINの中国工場は地域のモデル工場として認知されており、様々な認定証を獲得している。環境に配慮した工場運営を健全に行いつつ、小ロット多品種生産で利益を伸ばすTEINの経営に感服した。

<取材協力:TEIN>

《斉藤諒》

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