神奈川県警は1日、江ノ島電鉄バスが国土交通省に無届けのまま、本来の運行ダイヤよりも恒常的に多い本数を運行していたとして、同社の幹部と法人としての同社を道路運送法違反容疑で書類送検した。
神奈川県警・戸塚署によると、道路運送法違反容疑で書類送検されたのは、江ノ島電鉄のバス部門である自動車部の前部長で、常務取締役を務める54歳の男と、運行ダイヤの策定を行う自動車部・計画管理課で課長職にある41歳の男。そして法人としての同社。
同社はJR戸塚駅前と明治学院大学横浜キャンパス(横浜市戸塚区上倉田町)を結ぶ路線バスを1985年4月から運行している。
開業時に国土交通省・関東運輸局に対しては「1日上下48本運行」として運行計画届を提出。1992年には乗客が増えたことを理由として、これを54本とする変更届を出していた。
ところが、実際には開業直後から運輸局には届け出の必要がない「波動輸送用の続行便」、つまりは混雑時に正規ダイヤで運行されたバスに続行するかたちの臨時増発便として、正規便とは別に50本近くを運行していた。
増発便を運行することで1日あたりの本数は1日あたり約100本と、実際に届け出を行っていた本数の2倍近くとなっていた。
通常、波動輸送便は「突発的かつ短期間で行われるイベント」などへの輸送力確保と、通常それを利用する乗客への混乱や影響を避けることを目的に運行される。
短期間運行を前提としているため、運輸局への届け出を必要とせず、運行会社の判断のみで設定できるようになっているが、同社はこの制度を自社にとって有利なように解釈。混雑緩和を目的に毎日増便を設定していた。
今年に入り、沿線の住民がダイヤと実際の運行状況の乖離に気づいて警察へ告発するとともに、関東運輸局にも通報。同局が実態を調査した上で同社に対して是正するように指導していた。
当該路線はすでに続行便の運行を前提としたダイヤが組まれ、営業所への車両の配置が行われていたことから、同社では関東運輸局からの指導を受けいれるかたちで昨年7月、1日あたりの運行本数を上下103本とするダイヤ改正を届け出て、当該路線のみという異例のダイヤ改正を行った。
警察でも同社が指導を受けいれ、実態に則したダイヤとしたことによって、「過去には不正な運行が行われていた」と判断。関係者と法人としての会社を書類送検することを決め、1日までにこれを実施した。
なお、同社は現在のところ、届け出た本数の運行を厳守しており、当該路線では続行便というかたちでの運行取り止めている。