自動車産業におけるデザインの変遷…FACSセミナー

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自動車産業におけるデザインの変遷…FACSセミナー
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米13日、FACS(Foundation for American Communications)がセンター・フォー・オートモティブ・リサーチと共同で職業ジャーナリストに対するセミナーを開催。その中の1つ、自動車産業におけるデザインの変遷について、講師として、パサデナアートセンター・カレッジ・オブ・デザインのジェフ・ワドル氏よるセミナーが行われた。

BMWのクリス・バングル氏をはじめ、世界に名だたる自動車デザイナーを数多く輩出してきたことで知られるアートセンター。

ジェフ・ワドル氏は90年代から同校の専任講師を勤めるが、それ以前は自動車業界で辣腕をふるってきた人物だ。初代『MINIクーパー』のデザインからサーブ、クライスラーなど数々のメーカーのデザイナーを歴任し、時代とともに移り変わる自動車デザインをその目で見て来た。

そのワドル氏が現在もっとも強く感じているのは、自動車メーカーも「エコロジーに対する責任、サステナビリティを念頭に置いたデザインを考える時代に入っている」ということだ。

ワドル氏は、「21世紀に入り、自動車業界は大きなターニングポイントを迎えている」という。中国、インドの台頭、それに伴うエネルギー需要の増加などで、従来の需要ー供給のチェインが大きくシフトしている。また、あまり注目されていないが、工業に欠かせない「汚染されていない水」不足も深刻だ。

飽和状態になりつつある自動車市場、環境問題への注目、インターネットなどによりコンシューマーの知識が高まっていること、アドバンスド・ドライビング・システムの普及など、デザイナーが考えなければならない課題は山積みだ。

環境問題ひとつとっても、CO2排出は車のテイルパイプからだけにとどまらない。製造工程、リサイクル過程、原料調達など、すべての面でいかにCO2排出量を減らし、サステナビリティのある車をデザインするかは、デザイナーにとって大きなチャレンジとなっている。

このように変化する時代の中で、今後自動車デザイナーを目指す人には、3つの選択肢がある、とワドル氏は指摘する。

まず、マス・トランスポーテーションとしての自動車デザイン。これは自動車が世界中に普及し、コモダイズ(一般化)することを前提に、誰もが乗りやすく、価格も適正で、派手さはないが堅実な大手企業による自動車のデザイン。

2つ目は、プレミアムマーケット用の「違いのある」デザイン。今日ではマス・トランスポーテーションである、例えばトヨタ『カローラ』、ホンダ『アコード』などの品質、グレード感がアップしているから、メルセデスベンツ、レクサスといったブランドは「なぜこの車が3倍もの価格の価値があるのか」を説明することを強いられる。ユーザーを納得させられるプレミアムデザインは、決して易しくはないがそれなりに必要な分野でもある。

最後に、リスクテイカーとしての新たな車のデザイン。一例として挙げるなら、カリフォルニア州で高級EVメーカーとして注目を集めるテスラーなど。規模は小さく成功の保証もないけれど、成功すれば既存のメーカーに割って入ることができる分野だ。

最後にワドル氏は、現在の自動車業界のビジネスモデルが継続できるものか、という疑問を投げかけた。

投資に見合う結果をコンスタントに出しているのは、トヨタ、ホンダ、BMWの3社だけで、業界全体に新たなビジネスモデルが求められている。それは乗用車に限らず、スマートハイウェイシステム、公共交通システムなどに踏み込んだ都市計画の一部としての自動車のあり方かも知れないし、あるいは新テクノロジーによるこれまでの概念を打ち崩す自動車の「発明」かも知れない。

そんな時代の中で、自動車デザイナーに求められる要素はますます増えつつあり、単に技術のパッケージングとしてデザインを行う時代は終わった。環境、ユビキタス社会、テクノロジー、都市の景観など、あらゆる背景を考慮しながらデザインを提案できる人材を生み出すことが、教育の使命である。

《Sachiko Hijikata, US editor》

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