アッパークラスのシトロエン、なおかつ例のハイドロ・サス搭載モデルということで、超ゆったりモードのクルージング車というイメージを持つと大いに裏切られる……というか、勝手に先入観などを持って試乗してはいけないと、ヒソカに反省。
この『C5』をワゴンとセダン両方に乗っての発見は、これはシトロエンがつくったスポーツ車なのだということ。V6エンジンにしても、ドカッとしたトルクよりは高回転を好むタイプだし、ステアリングの直進付近での反応はきわめてクイック。そしてシートも硬く、何より足が、これがフランス車かというくらいに、ゆったりしてない。足は非スポーツモードである「オート」を選択できるのだが、これでも、たとえば『C6』が持つようなあの“揺りかご感覚”からは遠いものがある。
ただし、スポーツセダン&ワゴンとしてのまとまりなら、これは高水準。典雅きわまるデザインをぶっ壊すような、タイトでシャープなコーナリング性能。そして、それを知っているのはオーナーだけ……なんていうフクザツな楽しみを与えてくれるモデルは、たしかに、そんなにないかもしれない!
家村浩明|ライター
雑誌編集者を経て、1985年頃よりフリーランスで執筆活動を開始。時代を映す「鏡」としてのクルマに関心を持ち、歴史的考察や新型車の批評のほか、開発ドキュメントやモータースポーツを執筆テーマとしている。著書に『自動車コラム大全』、『ル・マンへ…レーシングNSXの挑戦』、『最速GT-R物語』、『プリウスという夢』など。