近年、アメリカのビッグ3各社はワゴンらしいワゴンをほぼラインアップしなくなっていた。従来ワゴンを愛用していた層は軒並みSUVを選ぶようになり、大ヒットしたダッジ『マグナム』すら短期間で生産中止に追い込まれた。そこに打って出る新型ワゴン車が、まさかキャデラックから登場するとは予想外だった。
古き佳き時代、アメリカの成功の象徴であったキャデラックのイメージからすると、CTSのようなクルマをラインアップする上、さらにセダンだけでなくワゴンまで出してきたのは、ほとんど「降臨」に近いと思う。
クルマの仕上がりはそつなく、乗り味はいたって現代的。本当は欧州製ワゴンが好みだが、一味違うワゴンが欲しいという人も十分に納得できるはずだ。ワゴンとしてどうかというと、実用性は低くはないが、それほど高いわけでもない。基本的にはデザインを楽しむためのワゴンだろう。
内容のわりに価格は控えめなほうだと思う。ただし、いかんせん日本におけるGMのネットワークが整っていないのが弱点。どこで売っているのかよくわからないし、何かあったときにちゃんと面倒を見てもらえるのかという不安も残る。
キャデラックというブランドの神通力もあるし、CTSのサイズは日本で使うにも適している。ネットワークさえ整えば、かつてのAK34型やAK54型『セビル』のように、CTSもまずまずの人気モデルになる可能性は十分あると思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジンの編集部員、自動車専門誌の記者を経てフリーランスに転身。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点を忘れず、幅広い守備範囲を自負する。近年はウェブ媒体を中心に活動中。