BMWグループとSGLグループは6日、次世代の自動車用カーボン素材の製造工場を、米国ワシントン州モーゼスレイクに建設すると発表した。このカーボンファイバーは、BMWの新型EV、『メガシティビークル』(仮称)に採用される。
ドイツ・ビースバーデンに本社を置くSGLグループは、炭素ベースの製品を生産する世界有数のメーカー。炭素・黒鉛製品、カーボンファイバー、複合素材など、幅広い商品を手がけている。生産拠点は世界40か所、サービスネットワークは100か国以上。従業員は約6500人で、2008年の売上高は16億ユーロ(約2172億円)だ。2009年5月には、ブレーキメーカーのブレンボと、カーボンセラミックブレーキ分野で提携を結んでいる。
2009年10月、BMWグループとSGLグループは、次世代カーボンファイバーを生産する合弁会社、SGLオートモーティブカーボンファイバー社を設立。出資比率はBMWが49%、SGLが51%で、BMWの投資額は9000万ユーロ(約115億円)に上る。
軽量・高剛性なカーボンファイバーは、運動性能を高める素材として、レーシングカーや一部スポーツカーが採用。最近では、車体を軽くすることでCO2排出量を削減するという、カーボンが持つ環境面での効果も注目されている。BMWはすでに、『M6クーペ』のルーフにCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)を使用。カーボンは現時点では価格が高いのがネックだが、BMWとSGLは、低コストのカーボンファイバーの共同開発に乗り出した。
米国ワシントン州モーゼスレイクに建設する新工場は、その足がかりとなるもの。ここでは、三菱レイヨンとSGLが開発したアクリル繊維を使った炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)を、カーボンファイバーに加工する。このカーボンファイバーはその後、ドイツへ送られ、最終的にCFRPに生成。BMWグループは、モーゼスレイク新工場建設に1億ドル(約94億円)を投資し、80名を雇用する計画だ。
カーボンファイバーの価格を引き下げるには、技術開発だけでなく、量産効果も必要。そこでBMWは、SGLと共同開発したCFRPをメガシティビークル(仮称)と呼ぶシティコミューターEVに採用する方針だ。
メガシティビークルの詳細は明らかにされていないが、『1シリーズクーペ』をベースにした実験用EV、『コンセプトアクティブE』のノウハウを応用した小型EVとなる見込み。2010年2月には、メガシティビークルを、ドイツ・ライプツィヒ工場で生産すると発表済みだ。BMWによると、2015年までには市場へ投入する予定だという。
BMWグループのFriedrich Eichiner取締役は、「軽量なカーボンファイバーは、燃費とCO2の改善という面で効果的な素材。次世代CFRPを採用するメガシティビークルは、持続可能な車社会の実現に向けて、大きなステップとなる」と述べている。