往年のスーパースポーツ・ブランド「デ・トマソ」(あるいは「デ・トマゾ」)が復活し、MINIのライバルとなる可能性が浮上した。
現在「De Tomaso」の商標を所有しているイタリアの実業家ジャンマリオ・ロシニョーロ氏は、「デ・トマソ」ブランドを冠した新型車を2011年ジュネーブモーターショーで発表する予定だ。
これはすでにロシニョーロ氏の企業を通じて昨年末から報じられてきたが、11日付けのイタリアの新聞『イル・ジョルナーレ』紙は、関係筋の話としてさらに踏み込んだ内容を伝えている。
同紙によると、新デ・トマソ車の1タイプは、BMWグループ『MINI』をライバルとしたコンパクトなプレミアムカーで、年産3万台を予定している。同時に、BMW『X1』を仮想敵としたSUVも開発中で、こちらは年産8000台の計画だ。
それらの生産拠点には、フィアットが閉鎖を予定している南部シチリア島のテルミニ・イメレーゼ工場を活用する構想という。
パーツのプレス成型には「ウニビス」といわれる新方式を採用。これにより、1車種あたり30 - 200のプレス型を削減でき、関連費用の7割削減を可能にする。
歴史を紐解くと、デ・トマソは1959年、アルゼンティン人レーシングドライバーだったアレハンドロ・デ・トマソ(1928 - 2003)によってモデナに設立されたスポーツカー・メーカーだ。
1963年の『バレルンガ』を皮切りに、66年『マングスタ』、70年『パンテーラ』などを発表し、とりわけアメリカ市場で成功を収めた。最盛期には、マセラティ、インノチェンティをはじめとする、さまざまな企業・ブランドを傘下に収めた。
しかし80年代後半からはヒット車種に恵まれず、グループ事業を次々と売却。復興プロジェクトとして立ち上げたロシア製4駆「UAZ」のイタリア生産計画も頓挫した。アレハンドロが死去した翌年である2004年には、未亡人イザベルが会社を清算し、事実上消滅した。
そうしたなか昨09年11月、ロシニョーロ氏率いる企業「IAI」がデ・トマソの商標権を取得。新「デ・トマゾ・アウトモービリ」(イタリア語だとソは濁る)社をトリノに設立し、自ら会長に就任した。
ロシニョーロ氏は、1930年アレッサンドリア生まれ。フィアット、SKF、I.DE.A.イスティテュート、テレコムイタリアなどの役員を歴任後、自らの企業であるIAIを立ち上げた。2009年12月31日には、設立間もない「デ・トマゾ・アウトモービリ」を通すかたちで、経営危機にあったピニンファリーナから主力生産工場を買収している。
デ・トマソのブランド復活は2011年のイタリア自動車業界にとって、関係者の間ではちょっとしたニュースになるだろう。ただし若者の間では、すでにデ・トマソの名前を知らない世代も増えている。ロシニョーロ氏がどのようなマーティティング戦略をとるのか注目に値する。