日産の新型低燃費エンジン…CO2排出量95g/kmを実現するために

エコカー 燃費
新型HR12DDRエンジンを搭載したマーチ
新型HR12DDRエンジンを搭載したマーチ 全 10 枚 拡大写真

日産自動車が7月16日に発表した、EU混合モードにおけるCO2排出量95g/kmを達成した「HR12DDR」型3気筒1.2リットルエンジンのプロトタイプは、直前にデビューしたばかりの新型『マーチ』に搭載されている3気筒エンジンをベースに作られている。

画像10枚:新型エンジンを搭載したマーチ

低燃費化達成のための中核技術は、燃焼状態を最適化しやすい直噴方式と、実効圧縮比9.x(小数点以下は現時点では公表していない)に対して膨張比(幾何学的圧縮比)が13という高効率なミラーサイクル方式だ。加えて、ピストンリングにDLC(耐久性が高く、摩擦係数がきわめて低いコーティング)や油圧損失を低く抑えるための可変容量オイルポンプ、各部鏡面仕上げなどの損失低減技術をふんだんに使い、同クラスの4気筒エンジンに比べて内部摩擦損失を3割減らしたという。

パワートレイン開発本部主坦の佐藤健氏は、「車体の空力改善やアイドルストップ機構も使うとはいえ、95gを達成可能なガソリンエンジンというのは今までにない高い目標でした。数年前に欧州で流行っていた99gと比べても、確実に1ステップ上のレベルだった」と語る。

95gエンジンの排気量はノーマルと同じ1198ccだが、これは、物理的な膨張比で計算される容積。空気を吸い込む量は圧縮比相当分であるため、実効排気量はもっと小さい。かりに圧縮比を9.5とすると、排気量は約875cc。ちょうどフィアットが世界に先駆けてリリースする95グラム達成ガソリン車『500ツインエア』の2気筒エンジンと同クラスということになる。ノーマルマーチの燃費が10.15モードで26km/リットルを達成している。このエンジンに換装し、車体側のフリクションロスをもう一歩削減すれば、非ハイブリッドで30km/リットルを狙えるものと思われる。

環境性能だけでは商品力を十分に高めることはできない。そのため、この小さなキャパシティで1.5リットルエンジン並みの出力特性を持たせることを第2目標に置いた。その実現のため、ルーツブロワースーパーチャージャーを実装している。低速クルーズ時など、要求トルクが小さい時にはスーパーチャージャーを切り離し、摩擦損失の増大を防ぐという。

「当初、高圧縮比、高過給圧でノッキングを起こさないようにするのには苦労しましたが、今では大体問題は解決しました。リリースまでに、エコ性能の高さと走りを両立させられるエンジンとしてさらに磨きをかけますよ」(佐藤氏)

このプロトタイプエンジンを搭載した新型マーチをテストコースでドライブしてみた。燃費性能向上を狙ったハイギアードな5速MTであったため、VW『ポロTSI』のような、軽量ボディに1.5リットル級エンジンという組み合わせを連想させるような力強さは感じられなかったが、ギア比のわりにはよく加速するというのも確かであった。6速化して変速ステップを詰めるなど、仕様を変更すれば、エコと走りを両立したエンジンとして良い評価を受ける可能性は十分にある。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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