【D視点】職人魂が創った…ガヤルドLP560-4

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ガヤルドLP560-4
ガヤルドLP560-4 全 15 枚 拡大写真
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 強面の内面は意外に優しい

『ムルシエラゴ』のコンパクト版として2003年にデビューしたランボルギーニ『ガヤルド』。08年にマイナーチェンジされ、ボディサイズは全長4345mm×全幅1900mm×全高1165mm、車両重量1500kg(2ペダルMT)となっている。

最新の顔を持った「ガヤルドLP560-4」は、ネーミングが示す通り、4WDシステムと560馬力を発する5.2リットルV10エンジンを搭載する。6速MTと2ペダルMTとの2種類の設定は変らないが、ハイパフォーマンス化により、車両価額も2500万円(2ペダルMT)と、前モデル比4割弱アップしている。しかし、この種のクルマの購買層には、気にならないのかもしれない。

刃物で切り取ったようなデザインは、尖った大型のチンスポイラーを加えたフロントエアインテークにより、さらに鋭くなった。新たなサイドのエアダクト、そしてディフューザ付きの2本出しのダブルエキゾーストマニホールドが、新型のハイパフォーマンスを誇示している。

室内背後から入ってくる、乾いた甲高いエクゾーストノートは、ドライバーの脈拍を高める。しかし、ステルス戦闘機に似た好戦的な外観に反して、2ペダルMTの市街地走行は、拍子抜けするように扱い易い。新モデルでの馬力アップに伴う4WD化は、見栄だけではなく、走行安定性に不可欠であったようだ。


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 見て楽しむスーパーカー

1970年初めにヨーロッパで出現し、理想の美を追求したボディに最強のエンジンを搭載したクルマをスーパーカーと呼ぶ。車型としては、スポーツカーや、GTカーと呼ばれる種類のクルマが相応しい。

超ワイド&ロウのボディに大馬力のエンジンを搭載したスーパーカーは、最高速300 km/hオーバーの性能を誇るものが多い。そのデザインから自ずと納得させられてしまうようなオーラを発しているのも共通の特徴と言える。

スーパーカーも良いことだけではない。高価額や燃費の悪さを納得したとしても、乗降に苦労させられたり、直進安定性が悪かったり、オーバーヒートに悩まされたりするものが多い。故障や事故などの際に、修復に法外な費用と時間を要する恐れもある。

このような種類のスーパーカーは見て楽しむか、あるいは、持ってもあまり乗らない方が無難ということになる。最右翼として挙げられるのが、ランボルギーニ『カウンタック』(クンタッチ)であろう。マルチェロ・ガンディーニの傑作デザインとしても知られ、宇宙船艦を想わせるボディにシザースドアを備えたドリームデザインが特徴だ。


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 磨き一筋のスーパーカー

1970年初めにヨーロッパで出現したスーパーカーは、バブル崩壊を境にほとんど忘れ去られてしまった。しかし、新たにドイツの資本が入ったランボルギーニは、01年のフランクフルトモーターショーでムルシエラーゴを発表して、久々にスーパーカー登場となった。

ムルシエラゴのデザインのオリジナルは、カウンタックだと言われている。したがってムルシエラゴをサイズダウンしたようなガヤルドも、オリジナルはカウンタックと言ってよい。扱いにくいスーパーカーの代表格、カウンタックの子孫となると、運転に際して構えるのは自然だが、ガヤルドに関しては杞憂だ。

オリジナルのデザインを守りながらも、クルマ作りに妥協を許さないドイツ人の血が、ガヤルドを扱い易いスーパーカーに仕立てたようだ。オリジナルを大切にしながらさらに良いものを作り上げるのは日本人の誇るべき職人魂だが、ドイツ人にも同様の姿勢があることを証明したのが、ガヤルドLP560-4なのだ。

40年ほど前の登場時には、平面を組み合わせたように見えたカウンタックも、時代の経過か、いまや、ふくよかな面を感じさせるだけではなく、優れたデザイン固有のオーラさえ発している。大物デザイナーが育たない現状を考えるに、このような先達に代わるようなスーパーカー誕生の可能性は今後なさそうで、寂しくなってくる。


D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。

《松井孝晏》

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