海上保安庁は9日、中国漁船衝突事件の逮捕ビデオがインターネット上に流出した事件を被疑者不詳のまま警視庁に告発した。まさかその翌日に足下の職員から重大な告白がなされるなど想定外だったからなのか。
海上保安庁を担当する馬淵澄夫国交相は、同日の会見でこう述べていた。
「昨今、本件を含め、海上保安庁に対し、国民のみなさんからの高い関心をお寄せいただいております。このため海上保安庁長官の記者会見を増やすことや、丁寧な説明を行うなど、国民のみなさんへの説明責任を的確に果たすよう、あわせて海上保安庁長官に指示しました」
しかし、捜査当局の事情聴取が続いている中でも、国土交通省も海上保安庁も沈黙を続けている。
夕方、衆議院予算委員会から戻った馬淵国交相や鈴木久泰海上保安庁長官は、いつもとは違う出入口から報道陣を避けるように省内に入った。
国会答弁でも、仙谷由人官房長官は、刑事事件になる可能性のある報告は、むしろ政府に報告を上げるべきではないという持論を展開した。
第五管区海上保安本部の職員の告白は9日朝、巡視艇の船長から同本部へともたらされ、午前9時30分には鈴木長官のもとに届いている。
しかし、その事実は馬淵国交相はおろか、菅直人首相や仙谷由人官房長官にも、すぐにはもたらされなかった。そろって「予算委員会が休憩になったときに(正午過ぎ)秘書官から聞いた」という。
そのことについて、仙谷由人官房長官は海上保安庁長官に不満を漏らすことはなかった。逆に、そのことを擁護した。
「海保は告発者の立場であり、自らの内部に被疑者を抱える可能性のある立場。告発を受けた警察と検察が、すでに動き出しているという現時点。つまり、あるところから刑事事件として強制捜査に切り替わる可能性がある時点。その種の捜査に関わる情報を、いわゆる一般行政情報と同じように上げてくるというのは、むしろ私はそうでないほうがいいと考えている」
追求する自民党・中谷元元防衛庁長官は漏らした。
「それこそ隠蔽ではないか」