【シボレー ボルト 試乗】エコカーであることを忘れた

エコカー EV
デトロイトの街を疾走するボルト。その走りはとてもスポーティだ
デトロイトの街を疾走するボルト。その走りはとてもスポーティだ 全 24 枚 拡大写真

デトロイトモーターショーが開催されたタイミングで、GMが世に送り出す意欲的な次世代エコカー、シボレー『ボルト』の試乗の機会を得た。その様子を写真とともにレポートする。

画像24枚:デトロイトを疾走するシボレーボルト

ボルトの最大の特徴は、そのパワートレーンだ。電気自動車(EV)でありながらエンジンを搭載、バッテリーの電力がなくなるとエンジンが始動しバッテリーに電力を供給するというシステムを採用している。ハイブリッドと混同しがちだが、エンジンが直接の駆動力となることはないため「ハイブリッドではなく、あくまでEV」というのがGMの主張である。ではクルマは何と語るのか、ハンドルを握ってみた。

運転席は、大柄に見えるエクステリアに反してタイトでスポーティ。セダンよりもスポーツクーペの感覚に近い。後席はセンタートンネルにバッテリーを搭載している関係で独立式の2人掛けシートとなっている。おかげで横空間は余裕がある。足下スペースにも余裕があるものの、スポーティなスタイルの影響もあり身長176cmの筆者が座ると後頭部がリアガラスに当たってしまうため、ヘッドクリアランスはあまり良いとは言えない。

センターコンソール左側にあるブルーのパワーボタンを押し、操縦桿のようなセレクトレバーをドライブに入れスタート。ブレーキペダルから足を離すだけでも前にグイグイと進む。クリープ(ATではないが)はかなり力強い印象だ。アクセルペダルを踏み込むと、「ヒュイーン」という音とともにEVらしいトルクフルな加速を見せる。試しに力強く踏み込んでみても、エンジンがかかることはない。

しばらく「ノーマルモード」で走り、「スポーツモード」に切り替える。走行モードの切り替えはスタートボタンの上にあるボタンで走行中でも操作できる。ノーマル時は1715kgの重量を感じさせるゆったりとした走りだが、スポーツに切り替えた途端、アクセルレスポンスが格段に上がり「エコカー」に乗っていることを忘れさせるほどの加速を見せる。

トヨタの『プリウスPHV』はファミリーカー『プリウス』をベースに車両下部に140kgの電池を追加していることもあり、しっとりとした重厚感ある走りを見せるのに対し、三菱『i-MiEV』は軽自動車の軽さとEVのトルクフルな特性を活かしたスポーツカーのような走りを実現している。このボルトはちょうどその中間に位置するイメージで、さらにモードの切り替えによってファミリーカーとしての一面と、EVらしいスポーティな走りを両立していると言える。

ステアリング奥にある大型の液晶ディスプレイには、速度のほか、ガソリン、電池それぞれの残量や平均燃費などが表示される。中でも面白いのは、右側にふわふわと漂う緑のボールだ。これはエコメーターの役割を果たし、アクセルの開度やブレーキに応じてこのボールが上下を漂う。加速するとボールが上に行き電池を消費していることを示し、下に行くほどブレーキによってエネルギー回生をおこなっていることをアニメーションで示す。ちょっとしたデザインの工夫でエコドライブもエンターテイメントにしてしまうあたりがアメリカらしく、また日本のエコカーに足りない点でもあるだろう。

しばらく走行し電池容量が少なくなったところでモードを「マウンテン」(エンジンの始動を電池残量2kWから5kWに切り替え、充電に余裕を持たせるモード。登坂時などに使用する)にし、エンジンを始動させる。この状態こそが今回の目玉でもあった。始動の際も特に振動を感じることはない。興味深いのが、エンジンはアクセルとリニアに連動しているわけではないにも関わらず、踏み込みに応じてエンジンの回転が若干上がる点。試乗後に開発者に尋ねたところ、「ユーザーの違和感をなくすため」の味付けだということだ。

センターパネルの液晶にはナビや燃費のほか、エネルギーの供給状況を知らせる画面に切り替える事ができる。EV走行時はバッテリーからタイヤへ、エンジン作動時は、エンジンからバッテリー、そしてタイヤへと矢印が示される。停車時には矢印は表示されない、とった具合だ。

しばらくすると、わずかな時間ではあるが何度か走行時にエンジンだけでタイヤを駆動しているように見えるグラフィックが表示されることがあった。ボルトはエンジンから駆動力の供給はないと聞いていたので戸惑う。後で開発者に指摘したところ、「単にグラフィックの誤差の範囲。エンジンによる駆動はありません」との回答。一般ユーザーがここまで細かい点を気にするかは不明だが、これが「ボルトは実はハイブリッドなのでは」という誤解を生み出してしまったようにも思う。

全体で20km強の距離であったが、車載の燃費計によるとガソリンエンジンも使用した燃費は78.8mpg(約33.5km/リットル)、巡航時は110mpg(約46.7km/リットル)あたりを示した。やはり他のピュアEVと比べ、航続距離や充電場所の心配をする必要がないという心理的なメリットは大きい。となると居住性とエンジン作動時の“味付け”部分に若干の課題が残るが、GMは「ボルトは第一号で実験的な意味もある。今後は他車種への展開も視野に入れている」と語っており、この点も解決されていくだろう。今回の試乗ではボルトの未来感、そして実用性を十分に感じることができた。

《宮崎壮人》

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