ミドルクラスのミニバンの中で好調な売れ行きを続けてきた『セレナ』がフルモデルチェンジを受け、走りの性能や使い勝手を大きく進化させてきた。
外観デザインが室内の広さを強調するのは従来と同じで、一見するとあまり変わっていないような印象を受けるかも知れないが、傾斜を強めたAピラーなど、実際には従来のモデルとはずいぶん違ったデザインだ。インテリアもマルチグラフィックのアッパーメーターが新鮮な印象を与えている。
スライドドアの開口部を拡大して乗降性を良くしたほか、乗り込んだ室内空間にはこれまで以上に十分な広さが確保されている。スライドドアの開閉もボタンひとつで可能なので、老人や子供にも操作しやすい。
走らせた印象は格段に良くなった。従来のモデルはミニバンにありがちなふらつきを感じさせる典型的なクルマだったが、新しいセレナではそれが大きく改善されているのだ。プラットホームをキャリーオーバーしているのでメカニズムに大きな変化はないのだが、細かな改良を積み重ねて走りの安定感を実現した。これなら高速で長距離を走ろうという気持ちになれる。
エンジンは直噴化によって動力性能を向上させると同時に、アイドリングストップ機構を採用して燃費をクラストップの15.4km/リットルに向上させた。このアイドリングストップが良く止まる上にコンパクトカーとはレベルの異なるスムーズな再始動を実現する。現時点では最良のアイドリングストップ機構といえる。
フロントに大きめの三角窓を設けて死角を減らしたり、ロール式のサンシェードを採用して2列目の乗員の安眠を助けたり、ビタミンCを放出するエアコンを採用するなど、いろいろな小技が利いているのも新型セレナの特徴。値ごろ感のある価格設定も含めて、いかにも売れそうなクルマに仕上がった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。