新しい日野『デュトロ』におけるトピックは色々あるが、何と言っても注目されるのはハイブリッドだろう。
ハイブリッドモデル自体は先代モデルから用意されているが、今回、市販ディーゼルで初のアトキンソンサイクルを採用し、エンジンの進化を図った。
アトキンソンサイクルとは、吸入と圧縮行程の仕事率を変え、少ない燃料を燃焼させて大きく膨張させることにより、駆動力としてより多くのエネルギーを取り出せる機構。
実際には吸気バルブを圧縮行程に入るまで開いておき、吸入空気を押し戻すことで圧縮行程を減らしているのだ。マツダがミラーサイクルと呼んでいるのも、同様の機構。実際のストロークは変わらないから摩擦やポンプ損失はほとんど減らないが、燃焼によるエネルギーをより無駄なく回収できるメリットは大きい。
しかしディーゼルの場合、圧縮比を落とすと燃焼温度が下がってしまうため、排ガスのクリーンさを維持する問題もあって、実現はガソリン車以上に難しい。それでも燃料の噴射制御など様々な技術を駆使しても実現したのは、ハイブリッドと組み合わせるからだ。
通常のディーゼルと比べ、アトキンソンサイクルにした場合、低負荷時の燃料消費率は向上するが、発生するトルクも大きく下がってしまう。元々ロングストロークで空気をギュッと圧縮してトルクを生み出すエンジンだから当然のことだ。トラック用エンジンでトルクが小さいのは大きな弱点となるが、それを補うモーターがあればデメリットは打ち消され、低燃費というメリットが輝き出すのである。
ハイブリッド技術に磨きをかける、その一方でディーゼルエンジンの省燃費化や排ガス浄化も進化させた。設定されるボディバリエーションに制限はあるものの、今度のデュトロではハイブリッドが大本命なのである。