【キャンバスマップル マップルナビ3】「人の気持ちを動かすナビを実現したい」…山本幸裕社長

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クラリオン NX501
クラリオン NX501 全 12 枚 拡大写真

旅行ガイドブックの使い勝手とノウハウをカーナビに

キャンバスマップルは道路地図や旅行ガイドで知られる昭文社のナビ用アプリを開発・販売を手掛けるグループ会社として2006年に設立された。これまでにも同社は自社で開発した地図データ/ナビアプリを多くのカーナビゲーションに提供してきたが、今回、新たに加えられたのがクラリオンのAV一体型メモリーナビ『NX501』。

これまでは、一部のAV一体型ナビへは旅行ガイド情報だけの提供に留まっていたが、地図やナビゲーションエンジンも含めた全てのアプリケーションがAV一体型ナビに採用されるのは初のことになる。

それだけに、キャンバスマップルの代表取締役社長 山本幸裕氏をはじめとしてこの製品へ懸ける意気込みは熱い。「今までどこかへ出掛けたくなるのはガイドブックからでした。カーナビは目的地を探せても、その場所がどんな場所なのか見当がつきません。そこで旅行ガイドブックで培った弊社のノウハウを採り入れ、ガイドブックとしても利用できるナビアプリとしたのが『マップルナビ3』です」(山本氏)。

確かに今までカーナビで目的地を探しても簡単なガイドがテキストで紹介しているだけというパターンがほとんどだ。しかもデータだけを紹介されても、そこが行くべきところなのかも見当もつかない。では旅行ガイドブックのノウハウとはどんなものなのか。

「カギとなったのは写真ですね。写真をふんだんに採り入れることで視覚から行きたくなるような仕掛けを採り入れたんです。写真点数はおよそ12万枚ですから、他のどんなナビアプリよりも多いと思います」。

◆カーナビを家族のコミュニケーションツールに

NX501では、時速7km未満が1分間以上続くと画面上では周囲にあるオススメのスポットを紹介するスライドショーに切り替わる。気になるスポットを見つけたらタッチするだけで詳細な情報が表示される仕組みだ。また、行き先を大体決めたらサムネイルでオススメのスポットを見ることもできる。写真で紹介するから同乗者にもわかりやすいし、最低限オススメのスポットとして紹介されているから大きな外れはない。これなら立ち寄ってみる気になる。

『オススメスポット』の紹介も大きなポイントだ。NX501で目的地をリストアップするとそこには「りんご」形状の独自のアイコンが並んでいるのに気付く。この数が多ければオススメ度が高いという意味だ。この情報は昭文社の『まっぷるガイドブック』のスタッフが集めた情報という根拠に基づく。

永年の経験から集められた貴重な情報。「この情報を活かすことこそが他のナビにはない弊社独自のノウハウ」というわけだ。同席した企画制作部の水品渡氏によれば「最近は家族が一堂に集まる機会は意外と少ない。車内で行き先を話し合うことも増えてきた」という。つまり、旅行ガイドブックを開くというよりカーナビを前に家族みんなが行き先を話し合う、そんなコミュニケーションツールとして『マップルナビ3』の機能は最適化しているというわけだ。

クラリオンからアプリ開発の依頼を受けて製品化するまで、4〜5カ月という異例の短期間だったが、もちろん通常のナビ開発ではそうはいかない。

「我々はナビアプリの開発は主体的に行うべきものと考えています。常に先を読んで、必要なものを準備していく。ある意味、『提案型』の体制を整えているのが弊社の特徴です」と山本氏。今までなら、ハードメーカーからの開発依頼があって初めて動き出すものだが、キャンバスマップルでは完成されたものをタイプ別に用意し、それをハードメーカーに働きかける。今までのナビアプリとはここが大きく異なる。

山本氏はこの提案型アプリ開発にはメリットとして大きく二つあると話す。まず一つめが「NX501での証明されたように、スピードですね。既に出来上がっているアプリだけに、それを採用するだけで簡単に製品として完成してしまいます。多少のカスタマイズは避けられませんが、それでも一から開発する工数に比べれば雲泥の差です」。

二つめは「完成されたアプリとして納入するため、今までナビとは無縁だったメーカーでも簡単にカーナビを製品化できます」。つまり、カーナビと無縁だったメーカーであっても、短期間でカーナビの製品化ができることを最大の特徴とし、カーナビの裾野を広げることが可能になるのだ。

ただ、山本氏は『マップルナビ』のブランド戦略についても重要なポイントであると語る。「今まではナビアプリは完全な“黒子”でした。我々がいくら良いものを提供しても表に出ることはありません。当社では、完成したものを提供する引き替えに、アプリとしての存在を前面に出していただいています。スマホで展開するナビアプリと考え方は一緒です」。考え方としては“このナビにこのアプリあり”といったスタイルを確立していきたいということだろう。

◆目指すのは「人の気持ちを動かすナビ」

すでにキャンバスマップルでは『マップルナビ3』の次バージョンの開発にも着手済み。そこにはユーザーから届いた様々な声を活かす努力をしている最中だという。「ユーザーからは、通信サービスやソーシャルメディア等を活かして欲しいとの声もありました。そうした対応も一つのアプローチであると考えています。そのスポットがホントにいいのかどうか、人によって大きく違いますからね」。現在は完全にローカルなアプリとしている動作している『マップルナビ3』だが、ネットワークとの連携も見越した活用を目指しているのは間違いない。

またNX501も含めてこれまでは、GPSのみでの測位だったが、ジャイロや車速パルスなどの自律センサーとマップマッチングとのすり合わせの技術はどうか。「確かに現在まではGPS測位のナビだけでの対応でしたが、加速度センサーやジャイロ、車速パルス対応への最適化もチップメーカーと共同で取り組んでおり、ひととおりの開発は完了しています」とも山本氏は話す。しかし、そこでは当然“精度”に対するユーザーの厳しい目が注がれる。「もちろん、そうした対応もカーナビメーカーと一緒に動作チェックを行い、結果には満足しています」と自信をのぞかせた。

そして山本氏は最後に「人の気持ちを動かすナビを作りたいんです」とも語った。山本氏はあくまで「私見」であることを前置きした上で、「東日本大震災によって、出掛ける機会を見失っている人がとても多いように感じています。震災の報道を見ていると、つい出掛けるのを遠慮しよう、と思う人はまだまだ多いんでしょうね。でも、被災地方面へ出掛ければ地域経済にも良い影響を与えるのは間違いありません。私としては『マップルナビ』をそんな助けになるナビアプリにしていきたいと思っているのです」

停滞気味の地域経済に加え、最近は風評による被害もますます広がっている。ナビアプリが場所を的確に案内することで、そこから家族同士の絆が深まり、少しでも地域経済にプラス効果を生み出すことにつながるかもしれない。山本氏が『マップルナビ』に寄せる思いはそんなところにあったようだ。

《会田肇》

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