【池原照雄の単眼複眼】国内市場争奪戦へ日産がゴング鳴らす

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日産ジューク
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◆シェア20%で「明確な2位」を

日産自動車が中期経営計画(2011~16年度)に沿って、日本市場でのシェア拡張を宣言した。10年度に13%だったのを13年度に15%、さらにその先には20%レベルまで引き上げ、「明確な2位の獲得」(日本営業担当の片桐隆夫副社長)を目指す。同社は国内生産100万台の維持を掲げており、国内販売の拡大によりそのラインを死守していく。

1970年代末まで国内シェア30%台(軽自動車除く登録車市場)をキープし、トヨタ自動車と2強時代を形成した日産だが、80年代以降は凋落の一途をたどった。経営危機に見舞われた90年代末には20%(同市場)を割り込み、99年のルノーとの提携後も市場喪失のトレンドは変わらなかった。

今世紀に入ってOEM調達による軽自動車への参入を図るなど市場構造の変化への対応は図った。だが、肥大化していた販売網(チャンネル、店舗数)や営業要員は、伸びが止まった国内市場にアジャストすべく縮小均衡を余儀なくされた。

日産の資料によると、09年度までの10年間に営業要員は38%減少して約1万3000人に、また店舗数は25%減の約2200店となった。10年度のシェアは前年度から若干プラスに転じたものの、軽自動車を含む総市場で13%だった。


◆営業要員は地域によって増員する

軽自動車が市場全体の3分の1を占めるようになった日本のマーケットは、軽を主体とするスズキとダイハツ工業が勢力を伸ばし、2位グループはこの2社に日産とホンダを合わせた4社がシェア12~13%で、だんごレースを演じている。

日産は、まず13年度までに15%を確保して頭ひとつ抜け出したい方針だ。時期は明示していないものの、その後「明確な2位」、つまり20%水準にチャレンジする。片桐副社長は販売戦力について、店舗数は2200店体制を維持するももの、営業要員は「1万3000人では不足であり、商圏に応じて増員を図る」と、過去十数年なかった増強に転じる方針を示す。

商品面でも新モデル(全面改良含む)の手厚い投入を図る。16年度までの中計期間中に日産は、世界で51の新モデルを発売する計画を打ち出しているが、このうち半数強は日本に投入するという。

単一モデルで月1万台売れるヒット車種が不在の日産だが、日本・アジア太平洋地域を統括する西川廣人副社長は「国内でトップ10に入れるような魅力あるコンパクト車の企画も進めている」と、『フィット』や『ヴィッツ』への対抗車を仕込んでいると明かす。


◆生産維持には日本の販売増が必須

13年度の前半には三菱自動車工業と一体的に開発を進めることになった軽自動車の第1弾も投入、軽も順次、商品強化に取り組む。西川副社長は国内生産のうち、10年度は46万台だった日本市場向けを将来は60万台(他社へのOEM供給車含む)へと拡大することによって100万台の生産維持を盤石にしたいという。

日産に限らず、世界で戦える先進の車両技術や生産技術を生み出すためには、日本で一定の生産規模を確保するのが必須条件となる。そのためには、足元のマーケットでの占有率を伸ばすこと。それもまた必須条件である。

自動車各社にとって新興市場にこそ成長の源泉があるのは紛れもないが、斜陽の市場とはいえ、なお世界で3番目に大きい日本は生産維持の観点からも重点地域だ。日産のシェア20%宣言は、国内市場が激しい争奪戦に突入するゴングである。ユーザーにとっては、メーカー各社が必死で日本向けに開発する新モデルに期待してよい展開となる。

《池原照雄》

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