日本自動車工業会の志賀俊之会長は31日、メディア各社と懇談し、史上最高値水準が続く円高について「日本ではかつて経験のない空洞化が起きつつある。自動車産業というよりも国の大きな問題」と強い危機感を表明した。
志賀会長は「自動車の輸出が増加傾向にあり、設備投資も高水準なことから自動車産業は大丈夫との見方をする向きもあるが、(採算悪化の)実態は現場を見てもらえば理解いただける」と強調した。円高による業界の連結営業利益への減益影響は、乗用車8社で1ドル1円の変動につき800億円にのぼるとの試算も示した。
そのうえで、為替影響への対応策は「円のコストを下げることであり、言い換えれば日本でのモノづくりや部品調達を回避することになる」とし、企業が防衛策を強めれば産業空洞化の流れは不可避になるとの見解を示した。
また円高のメリットを生かすため「海外での企業買収などはどんどんやればよい」としながら、それらによる「所得収支の改善だけでは日本の雇用はまかなえない」とも指摘した。