【アイシンAW NAVIelite インプレ前編】カーナビメーカーが本気で作ったiPhoneアプリ、最新バージョンの実力

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
アイシンAW NAVIelite
アイシンAW NAVIelite 全 12 枚 拡大写真

カーナビ専用機の機能と使い心地をiPhoneアプリで再現した『NAVIelite(ナビエリート)』。高価であっても高い人気を誇る実力派のアプリだ。個性派ゆえのウィークポイントもあったが、度重なるバージョンアップで解消された。

カーナビメーカーが本気で作ったアプリ 純正カーナビに匹敵する実力

NAVIeliteは2011年1月に発売されたiPhoneアプリだが、その登場は非常に衝撃的だった。3800円/年というiPhoneアプリとしては高額な値段も衝撃ではあったが、それ以上に多くの人を驚かせたのが、その開発元がアイシンAWであるということだ。

アイシンAWは自動車用オートマチックトランスミッションのメーカーとして有名だが、もう一つの事業の柱がカーナビ。トヨタをはじめ、国内外の数多くの自動車メーカーに純正ナビを供給しており、事業規模は世界で1、2を争う。そのナビ製造メーカーの最大手が、iPhone向けのカーナビアプリを開発した。

これ以前にも以降にも、カーナビメーカーがカーナビアプリを開発した例はない。自社製品と競合するものをわざわざ作らない、ということなのか、それは推測の域を出ないが、確かなことは、カーナビメーカーがそのノウハウを惜しみなくつぎ込んで開発したカーナビアプリは、このNAVIeliteだけだということだ。

惜しみなく、と格好をつけた言い方をしたが、もっと直接的に言えば、NAVIeliteは純正カーナビのソフトウエアをほとんどそのままiOSに移植したといっても過言ではない。それほど、純正カーナビそのままなのだ。その結果として、NAVIeliteは極めて完成度が高く、性能もインターフェースも高価なカーナビ専用機に近いレベルに達している。

前述のとおり高額な価格設定でありながら、NAVIeliteは発売と同時に高い人気を獲得した。その後もコンスタントに売れ続けているが、そこにはもうひとつ特筆すべき点がある。NAVIeliteは驚くほど頻繁にバージョンアップが繰り返されており、初期バージョンに散見された弱点が次々と潰されているのだ。衰えない人気の秘密と言えるが、これについては後ほど詳述しよう。

◆地図はiPhone本体内に保存 mini版追加で低価格化も図る

まずNAVIeliteの概略を確認しておこう。ラインアップは2種類あり、フル機能が使える「NAVIelite カーナビ 渋滞情報プラス」は3800円/年。低価格化の要望に答えるため、全国詳細地図とオンデマンドVICSを非搭載として追加発売された「NAVIelite mini カーナビ」が2800円/年。

どちらも地図をiPhone内に保存するという珍しい方式を採用しているため、インストールには約2GBの空き容量が必要になる。ファイル容量が非常に大きいことから3G回線によるダウンロードはできないので、Wi-Fi接続か、パソコンでダウンロードして転送する必要がある。さらにフル機能版では全国詳細地図をダウンロードできるが、これも約1GBを超えるデータサイズとなる。全国詳細地図は必須ではなく、空き容量が少なかったり必要性を感じなければダウンロードしなくてもいい。無料オプションのような位置付けだ。

なお、対応ハードウエアはiPhone 3GS、iPhone 4及びiPhone 4S。iPhone 3GやiPod touchだけでなく、iPadも対応ハードウエアに含まれていないので注意したい。

地図データは年間6回の更新が約束されており、常に最新の状態で使用できる。また、使用にあたって通信環境がなくてもVICS関連機能以外は正常に使える。もともとVICSの無いmini版であれば一切支障ないということだ。iPhoneはiOS 4.0以降でモバイル通信をオフにする設定が追加され、これにともなって3Gデータ通信を一切使わない、いわゆるWi-Fi運用をする人も増えてきた。NAVIeliteはこういった人にも使える数少ないナビアプリでもある。

12月5日に、最新バージョンであるVer.1.10.0がリリースされた。道路情報の更新に加えて、クロスリンク検索にiPhone標準アプリの連絡先連携が追加されたほか、高速道路及び規制情報の配信エリアを拡大(NAVIeliteのみ)、iCloudのバックアップ対象から外してバックアップに要するデータサイズを削減(NAVIeliteのみ)などの改修が行われている。

◆納得のルート検索と質の高いガイド機能

では実際に使ってみよう。アプリを起動すると、おそらく見たことがある人も多いであろう、あの画面が起動する。つまり、トヨタなどの純正ナビとほとんど同じメニュー画面だ。まず目的地を検索する。ここでもほとんどが見覚えのあるインターフェースで、文字の入力もiPhoneのキーボードではなく50音のボタンが並ぶ。ジャンル検索では現在地付近やルート沿い考慮、あるいは指定したエリアで絞込みをすることができる。

目的地を指定するとそのままルート検索となるが、ここがNAVIeliteの実力が発揮されるところだ。なんと、ここでも純正ナビと同じように5ルート同時検索が行われ、その中から自由にルートを選べる。しかも、ルート検索が非常に速い。こんなことができるナビアプリはほかにないと断言していいだろう。

ルート検索の自由度は、ナビアプリや低価格なPNDではまっさきに削られる機能だ。しかし、日本はアメリカなどと違い、高速道路と一般道が並走している事が多い。複数のルートを検索してユーザーに選択させる機能は重要度が高いのだ。

さらに、NAVIeliteのルート検索はVICSの情報も反映している(mini版は除く)。最初から渋滞回避をしたルートが検索され、到着予想時間も渋滞を考慮した確度の高い表示となっているのだ。

ガイドが始まっても完成度の高さは変わらない。交差点の拡大図、ジャンクションや大きな交差点のイラストによる案内、交通案内版表示、レーン情報などなど、考えられる機能はすべて搭載している。また、通信を行わないため操作に対するレスポンスがよく、コースを外れたときのリルートも非常に速い。

ここまで自動車メーカーの純正カーナビと同等の性能を実現していると、逆にどこが純正カーナビと違うかを説明したほうが手っ取り早いとも言える。当然ながら、明確な違いはある。それは現在地の測位に関して、NAVIeliteには車速信号やジャイロセンサーが無いということだ。iPhoneアプリである以上、当然といえば当然なのだが、トンネル内などGPSを受信できない状況では正確な測位ができない。とはいっても、トンネルの連続する道や高架下やビルの谷間など、GPS受信がシビアな環境でなければ精度が問題になる場面はまずない。

《山田正昭》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 水平対向8気筒エンジン搭載バイクは世界唯一、中国長城汽車の「SOUO」ブランドが発表
  2. 6年ぶりビッグネーム復活!? 新開発のV12エンジンが搭載されるフラッグシップGTとは
  3. トヨタ『シエンタ』対応の「車中泊キット」一般販売開始
  4. VWの小型ミニバン『キャディ』、改良新型を生産開始…5月末ドイツ発売へ
  5. BMWの新型車、ティザー…実車は5月24日発表へ
  6. MINI ハッチバック 新型の頂点「JCW」、今秋デビューへ…プロトタイプの写真を公開
  7. スズキ スーパーキャリイ 特別仕様は“For Your Work Buddy”…デザイナーの思いとは?
  8. 「トゥクトゥク通学」学生の問題意識から生まれたレンタルサービス、実証試験を開始
  9. BMWが14車種の新型車を発売へ…『X3』や『1シリーズ』に新型 2024年
  10. 【メルセデスベンツ EQA 新型試乗】“EQ感”がより増した、シリーズ最小モデル…島崎七生人
ランキングをもっと見る