【トヨタ アルファードHV 試乗】HVに投資するつもりで乗れば悪くない?…青山尚暉

試乗記 国産車
トヨタ アルファードHV
トヨタ アルファードHV 全 18 枚 拡大写真

これまでスライドドアを備えたHVミニバンはエスティマの独占状態。先代にあった『アルファードHV』は現行型では存在しなかったからだ。

しかし『エスティマHV』の場合、ガソリン車同グレードとの価格差は136万円もあるのだから、相当に贅沢な買い物だった。

ところが2011年9月に加わった待望の『アルファードHV』『ヴェルファイアHV』は395万円からで、ガソリン車同グレードとの価格差は約55万円。まぁ、納得できる価格設定になったと言える。車両安定装置はガソリン車のS-VSCより高度な制御を持つVDIMとなり、装備類もより充実。実際の価格差はもっと小さい。

ガソリン車と異なるのは、1列目席間に巨大なセンターコンソールボックスが鎮座する点。実はそこにバッテリーが格納されるのだ。だから、ガソリン車と違い、サイドスルーは不可(エスティマも同様)。ボックスの容量も小さくなる。しかし、HVゆえに不都合になった部分はそこだけ。荷室を含め使い勝手はガソリン車とまったく同じである。

エスティマHV同様、駆動方式は電気式4WD(E-FOUR)のみで、HVシステムもまたエスティマ譲りのTHSII。つまり2.4リッターエンジン+2モーター(出力はエスティマと同じ)。10-15モード燃費は19.0km/リットルとクラス最上の数値を誇り(2.4リットルのガソリン4WD車は11.4km/リットル)、約70%もの燃費向上を果たしているわけだ。

実燃費は街乗りのみだと9km/リットル前後だが、高速中心になると15km/リットルも不可能じゃない。実燃費面でアルファード&ヴェルファイアの2.4リットルガソリン車はもちろん、最新のエルグランドの2.5リットルモデルを上回ることは確実だ。

そんな新型アルファード&ヴェルファイアHVの走りは、ズバリ、重い!思いのほか軽快爽快に走る2.4リットルガソリン車はもちろん、重厚感、高級感溢れる3.5リットルガソリン車とも違うドライブフィールの持ち主だ。

なにしろガソリン2.4リットルモデル比で約200kg、3.5リットルモデル比でも約100kgも重いのだから出足はかなり「よっこらしょ」とゆったり。アクセルレスポンスも穏やかすぎる設定だ。もちろん、速度に乗ればモーターアシストもあって、2.4リットルのガソリン車以上の加速力を発揮してくれるのだが、それでもECOモードだと“胸のすく加速力”など期待できない。そうしたキャラクターは「せっかくのHVなのだから、燃費を重視したエコ運転に徹して下さい」という開発陣からのメッセージのようにも思える。

このクラス、フラッグシップミニバン、豪華な後席を備えたミニバンゆえ、乗り心地に期待して当然だが、乗り心地は決して褒められたものではない。HVは転がり抵抗と乗り心地に振った16インチタイヤに限定されるのだが、それでも2列目席はつねにゴツゴツした振動が気になり、うねり路ではシートごと体がよじれるように感じられるし、段差越え時のショックはかなり大きい。

シート(とくに最上級のエグゼクティブパワーシート)は見た目重視でホールド感に乏しく、かなり落ち着かない掛け心地でもあるのだ。むしろ3列目席のほうが快適と言えるかも知れない(路面からのノイズは大きくなるが)。

理由はフラットフロアを重視するためボディ剛性を十分に取れず、大きく重く高いシートの剛性もまた低いから。乗り心地で選ぶなら、エルグランドである。

とはいえ、3分の2列目席の贅沢感、広さ、アレンジ性は文句なく素晴らしい。2列目席は2種類のキャプテンシートが用意されるが(8人乗りの2列目ベンチシート仕様の存在は忘れていい)、電動だったり、オットマンが付いていたり、膝回り空間が世界の乗用車最大の800mm前後あったりする。

とくに2列目席を最後端位置にセットし、フルリクライニングさせたときの4座独立の居住感は飛行機のビジネスクラスそのもの(天井の間接照明も雰囲気を盛り上げる)。乗り心地に目をつぶれば、東京~京都間のドライブも新幹線のグリーン車並みに快適。愛犬連れならこれ以上の移動空間はないとも言える。愛犬の居場所は2列目席フロア、3列目席座面など自由自在だ。

ところで、燃費のいいHVだから、2.4リットルのガソリン車との差額をガソリン代で回収しよう、なんて考えても無理。実燃費計算で1年に1万km走るとしても、ガソリン代は年間僅か2万円程度の差でしかない。HVモデルはHVならではのEVモードを含む走行感覚やクラス最上の燃費・エコ性能&走行安全性能、エコドライブサポートシステムの先進感などに“投資する”ぐらいのつもりで乗るべきだろう。

ちなみに100V電源は先代アルファードHV、エスティマHVの1500Wではなくなった100W。ガソリン車でナビを注文したときと同じなのが残念だ。アウトドアなどで便利なだけでなく、災害時の電源車としても活躍できるから、早期に1500W化してほしい。技術的にはすぐにでも可能なのだから。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
乗り心地:★★
ペットフレンドリー度:★★★★

青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフジャーナリスト
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組も手がける。

《青山尚暉》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. スバルマークの方が似合う? 新型ダイハツ『ムーヴ』のスバル版にSNSも注目!
  3. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  4. トヨタ RAV4 新型、PHEVのEV航続は150km
  5. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  4. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  5. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
ランキングをもっと見る