トヨタ自動車が2012年発売した次世代エコカー『プリウスPHV』。燃費・走行コストを検証した結果、ハイブリッド燃費自体、ノーマルの『プリウス』と互角。EVモード走行の割合が高ければ高いほど、経済性の高さが上乗せされることがわかった。今回はエコノミーとは別の、エコロジーという角度からプリウスPHVを考察してみることにする。
●プリウスPHVのCO2排出量を算出
レスポンス・三浦和也編集長のプリウスPHVは、2月16日の納車日から5月27日までの3か月10日間で、トータル3756kmを走った。その間に使ったエネルギーは、レギュラーガソリン117リットル、電力220kWhであった。ノーマルプリウスで同じ距離を走った場合、燃費データサイト「e燃費」のリッター21.74kmで計算すると、消費量172.76リットルと考えることができる。また、三浦が乗り換えた2004年型のメルセデスベンツ『C200 コンプレッサー ステーションワゴン』のe燃費ユーザー平均はリッター10.06km。これで換算すると354.3リットルものガソリンを消費したことになる。
そのデータをもとに、地球温暖化の原因物質とされているCO2(二酸化炭素)がどのくらい排出されているかを検証してみよう。
まずはプラグインハイブリッドカーから。ガソリンを1リットル完全に燃焼させると、計算上は2360gのCO2が出る。実際にはそれより若干少なめとなることから、2320gで計算するのが一般的だ。では電力のほうはどうか。発電に使われるエネルギーソースは火力、水力、原子力、太陽光、風力など様々だが、環境省が質、量の両面でそれらすべてのエネルギーをミックスした数値を発表している。現在発表されている最新データは2010年度のもので、沖縄電力を除く電力9社発電量1kWhあたりのCO2排出量の平均値は422gである。
このデータをもとに、3756kmのトータルCO2排出量を試算してみると、燃料のレギュラーガソリン117リットルから271.4kg、電力220kWhから92.8kgのCO2、合計で364.2kgとなる。カタログスペックによく使われる走行1kmあたりの数値でみれば96.9gだ。
●プリウスPHVとノーマルプリウスのCO2排出量を比較
排出の内訳をもう少し細かく見てみる。燃料117リットルを2543kmのハイブリッド走行時に使った結果、1kmあたり107.7g。それに対して1213kmのEVモード時は1kmあたり76.5gであった。
e燃費の最新データがリッター21.74kmというノーマルプリウスが、その燃費で同じ区間を走ったと仮定すると、401kgのCO2を排出することになる。走行1kmあたりの排出量は106.7g。一方で同じ距離を走ったと仮定すると354.3リットルを消費する2004年型ベンツは218.8gとなってしまい、世代の違いを感じざるを得ない。やはり興味深いのはノーマルプリウスとプリウスPHVの比較である。三浦のEV走行比率32%に対してプラグインハイブリッド化による改善率は約1割と出たが、PHVユーザー平均は42.6%ということなのでEV走行率が高まるぶん、エコ度もアップする。
●電力会社のCO2排出量に大きな格差
ただし、エリアによってはエコロジーに貢献するどころか、かえってCO2を増やしてしまうケースも出てきそうだ。実際のCO2排出係数は電力会社の間で大差がある。端的な例が四国電力で、電力1kWhあたりの平均排出量422gに対して728gもある。この数値だと、EV走行時のCO2排出量抑制で燃費の良いハイブリッドカーや第三のエコカーに負けかねない。935gを排出する沖縄もしかりである。
スコアがいいところでは、先ほどの試算にも増してエコロジー度がアップする。関西電力の311gを筆頭に、四国電力の326g、北海道の353gと続く。経済性だけでなくエコロジーの観点からも、プラグインハイブリッドカーを普及させる意義のあるエリアと言えよう。また、昨年の福島第一原発事故以来、低CO2では水力、地熱などと並ぶ水準であることが売りだった原発が停止したままなのも気になる。火力で代替するとなると、CO2排出量が大幅に増える可能性は意外に高い。これからのエネルギー政策から目が離せないところだ。