【NAVITIME ドライブサポーター インタビュー】2012年は「次の10年をつくる年」

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ナビタイムジャパンのサービス企画統括部 部長 萩野良尚氏
ナビタイムジャパンのサービス企画統括部 部長 萩野良尚氏 全 9 枚 拡大写真

ナビタイムジャパンは、「NAVITIME」「ドライブサポーター」、「EZナビウォーク」、「au one ナビウォーク」「EZ助手席ナビ」、「au one 助手席ナビ」にて、2011年9月から、プローブ交通情報を活用した『渋滞予測』サービスの提供を開始。これまでのVICSに加え、同社が独自に得たプローブデータを活用したナビゲーションは、どう進化したのか。企画部部長の萩野良尚氏に聞いた。

◆使い勝手の向上とプローブの導入

----:昨年のインタビュー後から1年立ちましたが、この1年間の取り組み・進歩などをまずはお教えください。

萩野:大きなポイントとしては3つです。プローブ交通情報による渋滞予測サービスの提供と、「景観優先ルート」機能の追加、そして「スポットアイコン」機能の追加ですね。

まず、プローブ交通情報による渋滞予測サービスでは、従来のVICS(リアルタイム道路交通情報通信システム)に加え、我々のユーザから得たプローブデータ(ユーザのGPS測位データを収集・分析し道路状況を推測・生成する交通情報)を採用することで、より最適できめ細やかなルート情報を提供できるようになりました。

VICSは高速道路や比較的大きな国道などの情報は充実しているものの、一般道はカバー率が低いということで、そのあたりをプローブデータを利用して全体のカバー率を上げているというところです。

----:ナビで案内する際、VICSとプローブはどのようなデータの反映をおこなっているのですか。

萩野:たとえばルート検索などはVICSとプローブの情報、どちらをとるかは時間によって変わります。直近1時間はVICSデータ、その前後はプローブデータを利用した情報を提供するというイメージです。

----:2010年にはAndroid、2011年にはiPhone向けに「NAVITIME ドライブサポーター」アプリの提供を開始しました。

萩野:AndroidとiPhoneに対応したドライブサポーターに、新たな「景観優先ルート」機能を2012年2月に追加しました。これは、旅行やドライブのプランを立てているときに、“ナビゲーション前のドライブプラン”を楽しんでいただけるサービスとして登場させています。

そして、Android向け機能の「スポットアイコン」。駐車場やガソリンスタンド、テレビで紹介されたお店、観光名所、イベント開催中のスポットなど、8つのカテゴリーの中から3つを選んで、スポットアイコンを地図上に表示できる機能です。

ちなみに、4月にリリースした「スマートフォンホルダーCKT-01」もたいへん好評を得ています。量販店などでは売れ筋アイテムとして注目されています。デザインなどが受けているようで、女性にも喜ばれていると聞きました。

----:新しいプラットフォームへの対応にも積極的ですね。

萩野:当社では、マルチデバイス・マルチプラットフォームという考え方をすすめていまして、例えば、Windows Phone向けドライブサポーターの提供(2011年8月)や、タブレット端末向け「auスマートパス」に 「ドライブサポーター」「乗換NAVITIME」「バスNAVITIME」「こみれぽ」 の提供(2012年6月)などは、他社が入る前に先んじて全方位でサービスを提供するという姿勢で取り組んでいます。

auスマートパスの影響力の大きさを実感

----:この1年でスマートフォンユーザーは激増しましたが、ビジネスとして考えると難しいと思えるプラットフォームにも積極的ですね。

萩野:当社はフィーチャーフォン時代からマルチキャリアという姿勢でしたが、現在はキャリア+デバイスという姿勢で取り組んでいます。デバイスでいうと、例えば、タブレットが今後どうなるかわかりませんが、爆発的に普及したときに「我々は最初からそうしたデバイス向けの取り組みを手がけていました」という立場にいたいと思っています。

----:今年2月に提供を開始した、auスマートパスからのダウンロードを可能としたことについてはいかがでしょうか。

萩野:かなりのユーザに使っていただいています。大きいのは、キャリア(au)が500アプリを厳選してもらっているところですね。ユーザへのタッチが非常に早くなった。ランキングも常に上位に入るようになり、相乗効果でアプリのダウンロード数・アクティブ率が上がっています。

---:昨年のゴールデンウィークにリリースした「ガソリン節約ルート」はナビ機能のひとつの目玉でしたが、利用状況は。

萩野:ガソリン節約優先ルートは、「ドライブサポーター」、「EZ 助手席ナビ」、「au one 助手席ナビ」のルート検索結果に、これまでの「有料道優先ルート」「一般道優先ルート」「距離優先ルート」に加え、文字通りガソリンの消費をなるべく抑えたルートを表示する機能です。全ルート検索結果の15%程度に表示されますが、表示された場合、そのルートを見ているのは25人に1人とまだ少ないというのが実情です。一方、マイカーマネージャーでは車種ごとに燃費カーブを登録し提供しておりますが、この1年で愛車の型式を登録したいただいた数が2倍も増えました。

◆現実世界で起こっていることをアプリで見える化

----:ガソリン節約ルートもプローブ対応も通信ナビならではのリアルタイム性にこだわっているという印象ですが、このリアルタイム性を今後ナビにどのように活かしていきたいとお考えですか。

萩野:ユーザにとって、もっときめ細やかでリアルタイムなナビ情報を提供するというところに尽きます。例えば、一刻一秒じゃないけれども、四季折々の情報や、花火の開催情報など独自性も取り入れていきたいですね。

また、電車の混雑状況などをタクシー会社などに提供すれば、終電が終わったあと、駅にとり残されたお客さんを迎えに行けるなども考えられますよね。新しいお店ができた、このお店が無くなったなど、毎日更新される情報をリアルタイムに提供できればもっと利便性が増すはずです。つまり、「世界で起こっていることが我々のアプリを通してみればリアルタイムにわかる」というところを目指しています。

----:電車の混み具合をシェアしあう「こみれぽ」なども一種のプローブですが、自動車以外のプローブの活用を今後進めていくということでしょうか。

萩野:昨年、自転車向けのナビアプリ「自転車NAVITIME」をリリースしましたが、この出発地・目的地の履歴をデータベース化しています。自転車のシェアリング事業を検討している自治体からの依頼で、このデータベースをもとにした駐輪場のロケーション選定の相談などの話をいただいています。こうした事例以外にも、当社のプローブデータを活用して交通機関の最適化に取り組みたいという自治体から多くの相談を受けています。

◆チームワークでアプリを開発する時代

---:スマートフォンのハードウェアの進化によりアプリの開発や企画でどのような
変化があるでしょうか?

萩野:開発者と企画者がボーダレスに乗り入れてプロジェクトをすすめることが多くなりましたね。というのは、フィーチャーフォン時代ってある程度決まったフォーマットがありましたが、スマートフォンになると、UI(ユーザ・インタフェース)にこだわる必要が出てました。ひとりの企画者だけでなく、プロトタイピングも重ねて、より多くのスタッフによるチームワークでUIをブラッシュアップしていくプロセスが求められるようになったというところですね。

---:具体的にはどのようなことでしょうか。

萩野:例えば、我々はAndroid、iPhone、Windows Phoneと3つのプラットフォームにアプリを出していますが、いずれのプラットフォームにもガイドライン、ルールがあります。それぞれのプラットフォームに最適なUIを作り込むのですが、それだけでは面白くないという企画者がいい具合にその都度開発者の期待を裏切った提案を出していくというプロセスが生まれました。たんにHTMLベースのフィーチャーフォン時代とは違った関係になりましたね。

もうひとつ我々の大きな強みは、一番コアな機能・データはサーバ側にあるというところですね。クライアントにインストールするアプリの変更は極力減らし、サーバのデータ更新頻度を上げ、UIの開発に集中すればいいというのも利点のひとつですね。

◆2012年は次の10年をつくる年

----:「クルマの中で一番力を入れるのが、ディスプレイオーディオ(DA)との連携」とナビタイムジャパンの大西社長は話していましたが、今後この市場はどのように見ておられますか。

萩野:当社としては、いまあるカーナビのあらゆる環境に対してもナビゲーションのサービスを提供できるようにしたい考えています。その提供形態として、スマホ単体での情報提供、DAとスマホを連携した情報提供、そして高級車などに付く純正カーナビにASPによるデータ提供という3通りを想定しています。ナビタイムの強みであるリアルタイム情報やPOI(Point of Interest:スポット情報)、地図、経路探索などの情報を、全方位で対応して提供したいと思っています。

また今後としては、コンシューマー向けのサービスだけでなく、動態管理ソリューションをはじめとしたtoB領域もさらに強化します。スマートフォンやM2M(Machine to Machine)分野の普及で、位置情報やナビゲーション、配送指示といった業務管理サービスが安価に提供できるようになりました。こうしたスマートデバイスを使用した業務アプリの市場は今後急拡大すると考えています。

----:最後に、この1年を振り返っての感想と今後のサービス拡充に向けての抱負についてお聞かせください。

スマホで提供するナビゲーションの企画開発に携わってきましたが、この1年でようやく実用の面で完成したものができたな、という感触です。

2012年は、次の10年をつくっていきたい。10年前の「携帯電話でナビゲーションができる」というインパクトを超えられるようなものをつくっていきたいです。世の中に驚きを与えたいですよね。「そうきたか!?」と思っていただけるようなものを。

《聞き手 北島友和》

《レスポンス編集部》

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