11月下旬に発売が予定されている次期『アテンザ』のプロトタイプ車に箱根ターンパイクで試乗した。プロトタイプ車ながら、有料道路を貸し切りにして一般道での試乗会だった。
用意されていた試乗車はセダンとワゴンがそれぞれ2台ずつ。ガソリンは2リッターと2.5リッターで6速AT仕様、クリーンディーゼルは2.2リッター直噴ターボ仕様で6速ATと6速MTがあった。
外観デザインは昨年の東京モーターショーに出展した「雄(たけり)」を具現化したもので、伸び伸びした感じのデザインが特徴。サイズも相当に大きく、セダンは『クラウン』並みのサイズを持ち、全幅は1800mmを超える。
国内で使うにはやや大きすぎるサイズだが、マツダのフラッグシップモデルとして世界で販売するには、アメリカや中国などの大市場で売れるサイズにする必要があったようだ。
面白いのは、ワゴンの方がボディがやや小さいこと。ほかの多くのクルマと違って、セダンに対してワゴンはホイールベースと全長が短く作られている。
セダンはもちろんのこと、やや小さいボディを持つワゴンも居住空間は十分だし、ラゲッジスペースは広さに加えてアレンジによって使い勝手の良さを備えている。
走らせた印象は、2リッターのガソリンエンジンで十分といった印象。既に『CX-5』などに搭載されているエンジンで、SKYACTIV技術によって吹き上がりの良さや燃費の良さを備えるほか、SKYACTIVの6速ATとの組み合わせでダイレクト感のある変速フィールを示す。
2リッターエンジンの搭載車には17インチタイヤが装着(ほかのモデルは19インチ)されていて、乗り心地とのバランスも良い。
2.5リッターのガソリンエンジンは、SKYACTIV仕様が次期アテンザに新搭載となる。2リッターに比べると動力性能の余裕が大きいから、気持ち良く走らせたいと思ったら2リッターよりも2.5リッターということになるが、あえて2.5リッターを選ぶ意味があるかどうか。
というのは、動力性能を考えたら、強大なトルクを発生する2.2リッターの直噴ディーゼルターボがあるからだ。これもCX-5に搭載されているが、V8エンジン並みの強大なトルクで余裕十分の走りが可能だ。
発進してから少しの間はディーゼル車らしいエンジン音が聞こえてくるが、走り出した後はロードノイズなどの方が大きくなるので、ディーゼルのエンジン音は気にならない。
ディーゼル車には6速MT車も設定されるとのことで、これにも試乗した。ディーゼルとMTの相性はよいが、日本ではMT車はほとんど売れなくなっている。北海道などで一部のユーザーに受け入れられるだけだろう。
次期アテンザには、蓄電技術のi-ELOOPを採用して燃費につなげるほか、追突軽減ブレーキなど最新の安全装備も搭載される。マツダはやや採用が遅れていたが、それを一気に取り戻すような最新仕様が設定される。これも次期アテンザの魅力として期待される点だ。
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。