トヨタ自動車のハイブリッド車『プリウス』が12月10日で発売から15周年を迎えた。同日開催された「永遠の記憶に残るトヨタハイブリッド 15周年ミーティング」では、「トヨタハイブリッド開発者への15の質問」と題した質疑応答が行われた。
参加者による15の質問に回答したのは、トヨタ自動車製品企画本部小木曽聡常務理事、同豊島浩二チーフエンジニア、同岡部慎主査、同田中義和主査ら4名の開発陣。
「結局はプリウスとハイブリッドという言葉しか残っていない」
田村修平さん:多治見から来ました田村といいます。私は15年前まで家電メーカーに勤めていて、主にテレビをつくっていました。テレビは真空管式からトランジスタ式、やがてIC式といった具合に進化するわけですが、私たちは真空管とトランジスタを組み合わせたテレビをハイブリッド方式と呼んでいました。なので、トヨタからハイブリッド車が出ると聞いた時、真っ先に思い浮かんだのは真空管とトランジスタでした。なぜトヨタは"ハイブリッド"という言葉を使ったのでしょうか。例えば"混成方式"とか、"ハイブリッド"に代わる名称は候補としてあったのでしょうか。
小木曽:僕たち技術者の間では、プリウスが出る前からエンジンと電気モーターを組み合わせた動力源を"ハイブリッド"と呼んでいました。ご存知だと思いますが、"ハイブリッド"とは異質なものを組み合わせたという意味で、動植物の交配種、雑種もそれに当たります。トヨタがプリウスを開発する際、技術者の間では、すでに"ハイブリッド"という言葉が定着しており、それで僕たちも素直にそのまま使いました。
ただ、2代目プリウスが出るくらいまでは、"ハイブリッド"という言葉はさほど認知されず、真剣に代わりの名を関係者らで話し合ったことがあります。"混合"にしようかとか、候補には日本語もありました。さらに2代目は、欧米にも広めたいという狙いで、2003年から"ハイブリッド シナジー ドライブ"を採用しました。クルマのリアについている小さいバッジ、あれに記されている名称です。余計に分かりづらくなったという意見もありましたが、アメリカからの要請が強かったこともあり、採用に至りました。
アメリカでは"ハイブリッド シナジー ドライブ"という言葉を広めようと宣伝費をいっぱいかけてきましたが、最近、アメリカの幹部と話す機会があって、彼ら曰く「結局は"プリウス"と"ハイブリッド"という言葉しか残っていない」のだそうです。あれほど時間を費やしたのに、なんだかなぁ、という気持ちです(笑)。