【アテンザ開発者への10の質問】Q.2 開発はデザインありきで進んだのか?

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マツダ アテンザ
マツダ アテンザ 全 12 枚 拡大写真

2012年11月、マツダが販売を開始した新型『アテンザ』。3月3日現在での受注台数は当初の予定を大幅に上回る1万2000台超と、上々の立ち上がりを見せている。

同社の新世代技術"SKYACTIV TECHNOLOGY"をフルに採用した新世界戦略車である新型アテンザはどのようにして生まれたのか。それを明らかにするため、アテンザ開発陣に「10の質問」を行った。

Q.2 開発はデザインありきで進んだのか?
A. 1840mmという全幅には反対もあったが、デザインのために許してもらった。

新型アテンザの大きな特長は、そのスタイリングにある。しかし、それが実現するまでには様々な所での折衝があったと新型アテンザ開発主査の梶山浩氏は語る。

不評だった試作車のスタイリング

「実を言うと、役員へのお披露目では試作車のスタイリングは不評でした。同時期に行なっていた新コンセプトモデルの『靭(SHINARI)』のデザインが明確になってきたことで、「誰がこんなクルマ(=試作車)持ってこいと言ったんだ。靭を持って来い!」と言わんばかりに試作車を突き返されたんです。結局、スタイリングは2回作り直しました」

魂動デザインという優れたデザインコンセプトが立ち上げられたことで、役員からの要求も厳しくなったのだろう。しかし、並行して行なっていた開発だけに、靭の完成を待つ訳にもいかなかったそうだ。となれば、どのようにデザインを作り上げていったのか。

◆アテンザのデザイナーは、世界で一番クルマに乗ったデザイナー?

「新型アテンザのシャーシに、先代アテンザのボディを切り刻んで寸法を合わせた、ダミーのボディを被せたクルマをデザイナーに運転させて、そのフィーリングからイメージするスタイリングを描かせたんです。その他にも色んなクルマに乗せて、イメージをよりリアルに、膨らませました。多分、彼は一番たくさんのクルマを運転したデザイナーでしょうね」

走りからイメージしたデザインが魂動デザインと融合し、アテンザのプロトタイプであるコンセプトモデルの『雄(TAKERI)』、そしてアテンザが生まれた。しかしプロトタイプと市販車では、要求される内容やレベルが異なる。燃費や快適性との兼ね合いに無理はなかったのだろうか。

◆風洞実験を繰り返して得た"マツダらしい美しいデザイン"

「たくさん問題はありましたよ。例えば、空力だけを考えるならリヤエンドはスパッと切り落とした方が有利なんです。でも、それでは実用的なセダンになってしまいます。マツダらしい美しいデザインと空力性能を追求するためにデザイナーと風洞実験を繰り返してフォルムを作り上げたんです」

ワイド&ローの流れるようなボディは、空力性能も良さそうな印象を受けるが、実はフォルムを研ぎ澄ませつつも空力面での改善を施した結果、仕上げられたものだということが分かった。それにしても1840mmもの車幅が生み出すワイド感は存在感を高めるが、一気に成長したボディサイズに反対論は出なかったのか。

◆デザインのために許してもらった全幅1840mm

「靭のモチーフを移植して表現するためには、どうしてもこの車幅は必要でした。日本以外の市場では、車幅はあまり意識されることはないんですよ。日本だけが色々な制約があったんですが、デザインのために許してもらいました。ただ、『車幅の理由は分かったから、最小回転半径などの取り回し性だけは確保してくれ』という営業側からの要望があったので、駆動系を工夫して対応しました」

ホイールベースを105mmも伸ばしていても、最小回転半径が100mmほどしか増えなかったのは、ドライブシャフトの等速ジョイントの可動域を広げるといったブレイクスルーができたからだった。さらにホイールベースを伸ばしたスタイリングは、走りにもいい影響を与えたと言う。

◆"走りの良さ"をも生んだホイールベースの延長

「百害あって一利なしのオーバーハングは、できるだけ短くしたいんです。そのため全長が増加した分のほとんどはホイールベースの延長なんですが、このホイールベースを長くしたことは、室内空間を広くしただけでなく、走りも良くしてくれたんです。フロントタイヤを前に持っていって、エンジンをスラントさせることで、キャビンとエンジンの間の空間にゆとりができます。ここの4-2-1のエキゾーストマニホールドを組み込めましたし、ホイールハウスが出っ張らないのでペダルレイアウトも理想的な配置を実現できたんです」

10度後傾されたエンジンは、様々な角度を検討した結果得られた、ベストなスラントだった。これによりボンネット裏側のスペースにも余裕ができるだけでなく、エンジンの重心も下がる。それに加えて乗員がリヤ寄りに配置されることで前後の重量配分なども改善が見込めた。つまりハンドリングにもいい影響を与えたのである。

《高根英幸》

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