ハイブリッドラインナップ拡充を急ぐトヨタ、その背景とは

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カローラ アクシオ ハイブリッド
カローラ アクシオ ハイブリッド 全 6 枚 拡大写真

国内販売の40%、グローバル販売の14%をハイブリッドが占める

2013年8月6日、トヨタを代表する1台である『カローラ』にハイブリッドが追加された。これにより、日本の販売ランキング(2013年度1~6月)上位10位に入るトヨタ車の『プリウス』『アクア』『クラウン』『ヴィッツ』『カローラ』という5モデルのうち4モデルがハイブリッドを有することになった。つまりは、売れ筋のクルマのほとんどにハイブリッドが用意されている格好だ。

ちなみに、海外では『ヤリス ハイブリッド』の名前で『ヴィッツ』のハイブリッド版が販売されている。もしも、このモデルが日本に導入されれば、ベスト10ランクインのすべてにハイブリッドが揃う。

しかし、トヨタが売れ筋にハイブリッドを用意するのは、ある意味当然の行為だろう。なぜなら、トヨタのハイブリッドは圧倒的な売れ行きを示しているからだ。

2012年の実績で言えば、トヨタの国内販売の40%、グローバルにおいても14%をハイブリッドが占める。注目すべきは国内販売だけでなく、海外でもハイブリッドが売れているというところ。トヨタが2013年4月に発表した数字(「トヨタ自動車、ハイブリッド車のグローバル累計販売台数が500万台を突破」)を見ると、ハイブリッド車の累計販売台数500万台の内訳のうち日本国内が約232万台なのに対して、海外は約280万台。つまり台数ベースでは、海外の方が売れているのだ。

ちなみに、ハイブリッド累計販売台数での日本でのベスト3は『プリウス』約130万台、『アクア』約35万台、そして『プリウスα』約22万台なのに対して、海外のベスト3は1位の『プリウス』(約163万台)こそ同じだが2位以下は『カムリハイブリッド』の約33万台、『RX400h』/『RX450h』約24万台となっている。国内と海外では人気に違いがあることが分かる。

◆2年前の公約よりもハイブリッド追加を加速

ハイブリッドが500万台を突破したトヨタのリリースには、もうひとつ面白いデータが添えられていた。それが年ごとの販売台数だ。それを見ると、日本を除くグローバルでのハイブリッド車の販売数は2005年に年間20万台を超え、その後は20~30万台で横ばいを続けた。しかし、2012年度に一気に54万台を突破している。日本の2012年はエコカー補助金の恩恵も受けて前年の2倍を超える約68万台を記録しているが、日本のみならず、世界でも大きな伸びを実現したのだ。

この勢いに背を押されるかのように、先の500万台突破のリリースで、トヨタは「2013年4月以降、2015年末までに、グローバルで新型ハイブリッド車を18モデル投入する」と発表したのだ。この18モデルという数字には驚いた。なぜなら、2013年4月の時点でトヨタが販売するハイブリッドは、19モデル(+プラグインハイブリッド1モデル)であったからだ。なんと1年半で既存にあったモデル数とほぼ同じ18モデルを投入しようというのだ。既存ハイブリッド車のモデルチェンも当然含まれるだろうが、それを差し引いてもハイブリッド車の積極投入は加速するのだ。

もちろんトヨタがハイブリッドに力を入れるということは、既定の路線ではある。しかし、2011年3月に発表された「トヨタグローバルビジョン」では、「ハイブリッド車については 2015年までに約10車種の新型車を投入して、ラインナップを拡大する」とあった。2011年の目算が10モデルであったのが、2013年では18モデルに拡大している。つまり、それだけトヨタにおいて、ハイブリッドにかける力が大きくなったのだろう。

◆ハイブリッドを巡る熾烈な戦いはこれからが本番

しかし、現状を見渡すと、トヨタにとって決して生やさしい状況ではない。9月にホンダが投入する『フィットハイブリッド』は新世代の1モーター+デュアルクラッチトランスミッションを搭載することで、JC08モード燃費36.4km/リットルを達成。燃費性能でトヨタの『アクア』を抜きさった。また、6月に日本にデビューさせた『アコード ハイブリッド』も新世代のハイブリッド・システムを搭載してラージサルーンとしては『カムリ』や『クラウン』を大きくしのぐモード燃費30km/リットルを実現し、好評を集めている。

さらに見渡せば、三菱からは『アウトランダーPHEV』、スバルから『スバルXV ハイブリッド』という、それぞれ独自のハイブリッド・システムを搭載した新型モデルが、あいついで生まれている。また、BMWやアウディなどの欧米メーカーも少しずつではあるが、ハイブリッド・モデルをラインナップするようになってきた。

これまで、『プリウス』や『アクア』の圧倒的な燃費性能を背景にハイブリッド市場を席巻してきたトヨタ。しかし、新世代のハイブリッド・システムを次々に投入する最近のライバルの勢いは、決して侮れるものではない。

一方で、トヨタ自慢のハイブリッド・システム『THS II』は、長年使い込まれてきただけ熟成されているが、その分、今後の飛躍的な進化には疑問符がつく。ホンダに先行を許したトヨタが、次世代のハイブリッドシステム(『THS III』?)をいつ、どのモデルに投入するかも注目だろう。ハイブリッドを巡る熾烈な戦いは、これからが本番だ。今後どのような新型ハイブリッドが登場するのかに注目したい。

《鈴木ケンイチ》

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