【NVIDIA Manufacturing Day 2014】自工会におけるGPU活用研究…コストダウンと省エネ狙う

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JAMA 電子情報委員会 デジタルエンジニアリング部会 スパコン先端技術調査タスク 砂山良彦委員
JAMA 電子情報委員会 デジタルエンジニアリング部会 スパコン先端技術調査タスク 砂山良彦委員 全 13 枚 拡大写真

「NVIDIA Manufacturing Day 2014」の基調講演では、日本自動車工業会(JAMA)の専門委員によるCAD/CAE分野におけるGPUのコスト効果などを検証する技術セッションが行われた。

登壇したのは、スズキ自動車に勤務する傍ら、JAMA 電子情報委員会 デジタルエンジニアリング部会 スパコン先端技術調査タスクで活動を行う砂山良彦委員である。このタスクフォースでは、たとえば衝突安全やEVのバッテリー消耗など車のあらゆる設計や評価にスーパーコンピュータを活用しようと研究するワーキンググループ(WG)といった調査研究が行われており、砂山氏のWGでは、開発時に必要なコンピュータ計算量が増大する中、GPGPUの利用がパフォーマンス向上やコスト削減にどれだけ有効かを検証する研究を行っている。

なお、GPGPUとはGenera Purpose Graphics Processing Unitの略で、本来グラフィック処理に特化したGPUを汎用的な演算目的のプロセッサやコプロセッサとして利用し、システム全体のパフォーマンスを向上させる技術のこと。NVIDIAでは、用途を問わず自社のプロセッサをGPU(Graphics Processing Unit)と呼んでいるが、同じものを指すと思ってよい。

砂山氏によれば、非線形構造解析ソフトや1次元解析ソフトのジョブ数などを調べると、近年その量の増加が目立つという。その背景にシミュレーションの適用範囲の拡大、解析モデルの大規模化があるという。非線形領域や複合領域のシミュレーションニーズが高まり、空力解析では1億要素、衝突解析では1000万要素、構造解析では3000万dof(自由度数)といった大規模な解析が要求されている。

計算量が増えると、必要なコンピュータリソース(プロセッサの個数、メモリ、処理速度)も膨大になり、ハードウェアコストだけでなくライセンスコスト、さらには消費電力なども増えてくる。そのため、業界ではいかに少ないコストで必要な計算を行うかが重要となっている。これが、砂山氏のWGがGPGPUの利用がCAD/CAE分野にどれくらいの効果があるのかを検証する理由だという。

この検証のため、JAMAでは、NVIDIAを始めITベンダーやシミュレーターのベンダーなどと共同で研究する体制を敷き、流体解析ソフトと電磁界解析ソフトとNVIDIA K40 GPUの性能評価を行った。

Particleworksというギアや車体の開発に利用される流体解析ソフトでは、1コアCPUのプロセッサ構成を1とすると、1コアCPU+1GPUの構成では計算時間が96%短縮されたという。計算時間が短縮されるということは、必要なプロセッサ数を節約できることになり、ライセンス費も削減可能となる。プロセッサごとのライセンスコストで、短縮できた時間を割ると、GPU導入によるコスト削減効果を指標化することができる。この数値は、1コアCPU+1GPUで95%の削減が可能だったという。ちなみにこの削減率は、16コアのシンメトリカルマルチプロセッサの構成にするより高い。

車体の空力設計に利用されるOpen FOAMというソフトウェアでは、8コアCPUの構成を16コアCPU構成にしても、57%の計算時間の短縮しかできなかったのに対し、8コアCPU+1GPUで74%、+2GPUで81%まで時間短縮が可能だった。

JMAGという電磁界解析ソフトの計算時間の検証では、2次元過渡応答解析モデルではマルチコアの構成に軍配が上がったものの、3次元過渡応答解析モデルでは4コアCPUや8コアCPUよりも1コアCPU+GPUの構成のほうが計算時間が短かった。

最後に、Abaqusを利用したエンジンの構造解析モデルによる検証では、マルチコア構成にGPUを追加することで、消費電力の削減効果とライセンス費の削減効果が確認できたことが発表された。

砂山氏は、以上の検証実験により、CAD/CAE領域においてGPU活用の効果は高いとし、今後は市販ソフトにおけるGPU実効性能のさらなる向上と、GPUの適用領域の拡大をプロセッサベンダー、ソフトウェアベンダーに期待したいとまとめた。

《中尾真二》

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