ドコモとパイオニアのコラボレーションにより誕生したスマートフォン向けカーナビゲーションアプリ「ドコモ ドライブネット」。2013年12月には、より多くのユーザーへの浸透を図るため、ナビゲーションアプリの「ドコモ ドライブネットナビ」(一部機能は有料)と、渋滞情報提供に加えてSMS送信/音楽再生などの機能を車載ユーザーインターフェースに統合した無償アプリ「ドコモ ドライブネットインフォ」の2本立てのサービスへと発展した。
今両社が進めているのは次世代のテレマティクスサービスに向けたクラウド基盤の構築。様々な自動車の走行データを集めて顧客サービスに反映させるクラウド環境は、自動車メーカーを始めナビメーカーなど、環境整備を進めている分野だ。一番のキラーコンテンツとなる、ナビゲーションサービスはユーザーの満足度にもっともインパクトが大きいため、各社はこぞって力を入れている部分でもある。この状況にあって、「ドコモ ドライブネット」のサービスの特徴について、ITジャーナリストの神尾寿氏に話を聞いた。
◆「ドコモドライブナビインフォ」の登場でナビアプリ系サービスは2種類に
まずは、サービスの内容を解説しておくと、従来の「ドコモ ドライブネット」はプローブ交通情報を核とするナビゲーションアプリだったが、2013年の12月に無償の交通情報提供アプリ「ドコモ ドライブネットインフォ」が加わり、これまでの「ドコモ ドライブネット」と呼ばれていたナビサービスは「ドコモ ドライブネットナビ」という名称になった。
「ドコモ ドライブネットインフォ」は、車内での使用を前提としたユーザーインターフェースを備え、運転中に渋滞情報などをリアルタイムに提供する無料アプリだ。目的地を設定しなくても進行方向の渋滞情報が流れ、ラジオのニュースに近いカタチで情報を知ることが出来る。また音声入力によるSMS送信や、音楽再生、天気予報、スケジューラなどの機能もある。
一方、既にあるナビアプリの「ドコモ ドライブネットナビ」は、ルート案内の音声ガイダンスが利用でき、リアルタイムでの渋滞情報やガソリン価格、駐車場の満空など、テレマティクスサービスで必要とされる基本機能を搭載するクラウド型カーナビサービスとなっている。
神尾氏は「「ドコモ ドライブネットインフォ」に関しては無料で提供されるので、本格的なスマホナビを使うことのない人に向けカーテレマティクスを体験してもらうお試し的な意味合いがあると思います。旅行の時ぐらいにしかカーナビは使わないといった人でも、無料で使えるものなので“ナビは必要ないけど渋滞情報や天気情報といった交通情報は欲しい”といった人が毎日使えるサービスと言えます」と解説する。
「ドコモ ドライブネット」では、個々の端末から集まってくる走行データ(プローブ)を活用した渋滞予測情報を採用している。通信型カーナビの特徴でもあるプローブ情報は、目的地までのルート品質などナビの基本機能に大きな影響を与える存在となっている。
ドコモ ドライブネットの渋滞予測品質について、神尾氏「今後、「ドコモ ドライブネットナビ」に加えて、無料で提供する「ドコモ ドライブネットインフォ」のほうでもプローブ情報を集めていますので、集まってくる情報の量が増えて渋滞予測の精度などもより上がってくると思われます(※「ドコモ ドライブネットナビ」は「スマートループ渋滞情報」、「ドコモ ドライブネットインフォ」では「パーソナルトラフィック」と呼ばれるプローブデータを使用)。私が使った実感としても、既に自動車メーカー等が提供しているプローブ情報を活用した渋滞予測サービスに匹敵する実用性を持っていると感じています」と語った。
ドコモでは、「ドコモ ドライブネットインフォ」のサービス開始に合わせて「スマートフォンホルダ01」と「カーナビ用センサーユニット01」を新たに発売した。スマートフォンホルダ01は、車内で「ドコモ ドライブネットナビ」や「ドコモ ドライブネットインフォ」を利用することを前提に開発された車載ホルダだ。Bluetoothにてスマートフォンと接続するハンドル取付リモコンが付属しており、音声操作が可能。また、「ドコモ ドライブネットインフォ」をNFC搭載端末で利用する場合は、スマートフォンを設置するだけでアプリケーションを自動起動する機能もつかえる。このスマートフォンホルダ01は、ドコモ オンラインショップでの価格が4830円とリーズナブルで、車内でのスマートフォン利用の利便性・安全性をアップさせる必須アイテムといえる。
◆スマホナビと車載ナビの今後はどうなる
普及の進むスマホのナビに慣れたユーザーのニーズに応えるため、カーナビゲーションの世界においても、通信を使ったナビゲーションサービスの進化は急速に進むだろう。今後、スマートフォンと車載ナビの棲み分けはどのように進んでいくのか。
神尾氏は「スマートフォンの普及によって、通信しないカーナビの使いにくさを皆さんが感じるようになってきましたので、最近では車載ナビゲーションの方でも通信対応の純正ナビを用意するモデルが多くなってきました。スマホのナビアプリと車載ナビ、今後の棲み分けを考える上でいくつかポイントがあると思いますが、ユーザー側としては、インテリアやオーディオをはじめとする車載機器とのマッチングが良いというのが車載型のメリットになるでしょう。
一方で、スマホ型ナビのメリットはコストパフォーマンスの高さがあると思います。10~15万円する車載ナビと比べて、「ドコモ ドライブネットナビ」に関して言うと月額315円で、一年使って5000円いかないわけです。クレイドル/センサーユニットのコストを加味しても車載ナビよりははるかにリーズナブルです。音声ナビゲーションは利用できませんが、渋滞情報を利用できる「ドコモ ドライブネットインフォ」に至っては無償で利用できるサービスです。非常にコストパフォーマンスが高いと言えます」と話す。
最後に、スマートフォンのナビサービスを提供する上で、ドコモとパイオニアが手を組んだ狙いはどこにあるのだろうか。
神尾氏「この「ドコモ ドライブネット」は“専用カーナビを超える”と意気込んで開発されたサービスです。市販カーナビのトップメーカーであるパイオニアの技術力と、クラウドに関する設備やインフラを持つドコモが協力することで、よりサービスを作りやすい環境が出来上がったと思います。ドコモからすれば、イチからナビゲーション開発するコストを抑えられますし、パイオニアにしてみれば、次世代テレマティクスに向けたクラウド環境を整備するには開発コストもかかりますので、お互いを補完できるいい関係にあると思います。カーナビ分野のナンバーワンであるパイオニアと携帯電話キャリアのナンバーワンであるドコモとの“最強タッグ”の協業の成果を見て欲しいですね。とはいえ、いきなり「ドコモ ドライブネットナビ」の有料課金というのはライトユーザーには敷居があるかもしれませんので、まずは無償の「ドコモ ドライブネットインフォ」で試してみてはどうでしょうか」と語った。
※「ドコモ ドライブネットナビ」の利用には、「ドコモ ドライブネットナビ」対応機種、「ドコモ ドライブネットナビ」アプリのインストールとは別に、ドコモ指定の料金プラン(タイプSS バリューなどのご契約)、プロバイダ(spモードまたはmopera Uのご契約)が必要となる。また、機能により「ドコモ ドライブネットサービス」のご契約(月額使用料:315円)、および「ドコモ ドライブネット」対応機器が必要。
※自動車の運転中にスマートフォン/タブレットの操作をしないでください。スマートフォン/タブレットの操作をする場合には、必ず安全な場所に自動車を停車させてから行ってください。
※「ドコモ ドライブネットナビ」アプリを運転者がナビゲーションとしてご利用の場合は、必ず指定の「ドコモ ドライブネット」対応機器などに装着してご利用ください。