【鈴鹿8耐】レギュレーションは? ライダー構成は? 勝つための条件は?

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ
カワサキ Ninja ZX-10R(耐久レース仕様)
カワサキ Ninja ZX-10R(耐久レース仕様) 全 6 枚 拡大写真

7月下旬恒例の二輪モータースポーツの祭典、「8耐(ハチタイ)」こと「鈴鹿8時間耐久ロードレース」。バイクに全く興味が無い人でも、鈴鹿8耐という名を知っている人は多いだろう。4輪のF1と並んで、鈴鹿サーキットで開催されるレースの中でもっとも有名なひとつ。でも、なぜそれほどまでに有名なのか、そもそもどんなレースなのか知らない人も多い。

先頃、第1戦鈴鹿2&4レース A.R.T.合同走行が行われ、鈴鹿8耐を見据えた国内のトップライダーが多数登場した。8耐前哨戦のスタートを機に、「鈴鹿8耐とはどのようなレースか」を改めて解説しよう。

出場マシン

8耐に出場マシンは、1000ccまでの4ストロークエンジンを搭載した市販車(2気筒の場合は1200cc)。そう、4輪のSUPER GT(GT300)などと同じように、8耐は市販車ベースのマシンで走るのだ。しかも、その改造範囲は比較的に小さい。したがって、市販車の性能がレースの行方を左右する事にもなる。そこで、各メーカーではレースに勝つためにサーキット仕様に近い市販モデルを発売している。そこにはメーカー間の熾烈な開発競争があるのだ。

各メーカーの代表的なマシンを挙げていこう。まずホンダの『CBR1000RR』。ホンダは長らくV4エンジンのRVFで8耐に参戦し、そのあとは2気筒のVTRを使っていたが、現在はこの直4モデルを使用。市販状態で178PSもあり、電子制御によるハイテクも満載している。

ホンダのライバルヤマハは『YZF-R1』だ。歴史に残る名車との呼び声も高いこのマシンは他メーカーのモデルにも大きな影響を与えた。1998年に登場して以来、7代目となる現行モデルは182PSを発揮。

スズキ、カワサキはそれぞれ『GSX-R1000』、『ZX-10R』を使用する。最高出力はそれぞれ185PSと200.1PSというモンスターマシンだ。これら4メーカーのマシンはどれも直列4気筒エンジンで、公道走行用の市販車とはいえレースで勝つことを目的に開発されたマシンと言っても過言ではない。

実際にレースで走る車両はもちろん耐久レースのために改造してある。通常、サーキットを走るマシンは燈火類がないが、8耐はナイトセッションのあるレースなのでヘッドライトの装着が義務付けられているのが大きな特徴だ。また、前後のタイヤも素早く交換できるように工夫をこらした改造がなされている。さらに、8耐ならではの改造として、暑さ対策のために冷却系の増強が行われる。

◆3人のライダーで走る

耐久レースでは1台のマシンを数人のライダーが交代で走らせる。8耐の場合、2人か3人のどちらかで、チームが自由に決定できる。2人の場合、優秀なライダーを揃えやすい、マシンのセッティングをしやすいといったメリットがある。反面、1人がアクシデントで走行できなくなればリタイヤとなってしまう(1人で連続して走行できる時間が決められているため)。

一方、3人体制では粒ぞろいのライダーを揃えるのが大変だし、そのライダーの体格が大きく違っていたりすると、マシンのセッティングに苦しむことになる。反面、1人が怪我などで脱落しても残り2人で走り続けられるし、3人で走れば1人あたりの負担は減る。

◆ル・マン式スタートに注目

8耐のスタートといえば、1列に並んだライダーが一斉にマシンに駆け寄る「ル・マン式スタート」が有名だ。マシンを支えるのはセカンドライダーの役割で、交わされる熱い視線も感動を呼ぶ。

ところでこのル・マン式スタート、その名の通りル・マンで行われていたもので、4輪の24時間レースを描いた映画「栄光のル・マン」でもこのスタートを時間をかけて描写している。しかし、このスタート方法は4輪の場合にシートベルトの装着が疎かになるとの指摘があり、かなり昔に廃止された。2輪でル・マン式スタートを採用していたレースもたくさんあったが、予選順位の重要性が薄れるなどの理由で次々と廃止されている。

現在では、世界的に有名な格式の高いレースでル・マン式スタートを採用するのは2輪、4輪問わず、8耐が唯一と言って過言ではない。それだけにこの独特のスタートには注目したい。

◆チームの戦略とピットワークが勝負を分ける

耐久レースの大きな魅力がピットワーク。8耐の場合はだいたい1時間に1回、7~8回のピットインを行い、給油とライダーチェンジ、時にはタイヤチェンジを行う。7~8回と簡単に書いたが、実は7回にするか8回にするかは非常に難しく、チームの戦略が試される。燃費走行で7回で済ませるか、燃費を犠牲にしたハイペースで走って8回ピットインするか、難しいところなのだ。

ピットワークのスピードも見どころだ。ライダーがせっかくタイムを縮めても、ピットワークが遅ければ意味が無い。しかし、2輪のピットワーク、特にタイヤ交換は4輪よりもはるかに作業が複雑で、短い時間で行うのは難しい。そのためピットクルーはレースの何ヶ月も前から繰り返しその練習を行う。現在ではタイヤ交換に要する時間は4輪レースと大差ないまでになった。その芸術的ですらある交換作業には注目しておきたい。

◆もっともたくさん走ったマシンが勝ち

スプリントレースでは規定の周回数を一番早く走ったマシンが優勝となるのに対して、耐久レースではまず時間が決まっていて、その時間内により多くの周回を重ねたマシンが優勝となる。ただし、8時間の経過とともにレースが終わるわけではない。8時間が経過した時点で最も多くの周回をしているマシン(同じ周回に複数のマシンがいれば、その先頭のマシン)が、次にメインスタンド前に戻ってきてチェッカーフラッグを受けた瞬間に優勝が決定するのだ。レースである以上、やはりそのゴールはチェッカーフラッグを受けなければ締まらないのだ。

このように勝敗の決め方はシンプルなのだが、実際にレースを見ていると周回遅れがたくさんいるから、どのマシンがトップでどのマシンが最下位かなんてわからない。スマホやケータイでWebの情報を見たり、会場にあるサーキットビジョン、あるいはアナウンスで順位を確認することは必須だ。

《山田正昭》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 「赤色くるー!!」2026年モデルのカワサキ『エリミネーター』に熱視線!新カラー&グラフィック追加へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る