ダイキン工業は、耐高電圧性・高容量化したリチウムイオン電池用に、フッ素系正極用変性PVdFバインダー「VW700シリーズ」を開発した。7月から順次出荷、販売を開始する。
フッ素系バインダーは、リチウムイオン電池の正極活物質の接着剤として「PVdF」が使用されている。今回開発した商品を使用することで、これまで実現できなかったリチウムイオン電池を4.4V以上の高電圧時での使用で高容量化が可能となり、電池の寿命も従来より10%改善する。
リチウムイオン電池を高容量化するには、電極の高密度化、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸化物)などのニッケル系正極材の使用による高電圧化が必要。通常のバインダー材料は、4.4V以上の環境で高容量化する場合、電極が固くなり、割れの発生や劣化するケースがある。
また、ニッケル系正極材を使えば、電極作製用の塗料がゲル化を起こすことで電極作成が困難になってしまう。
今回開発した「VW700シリーズ」は、分子構造に耐酸化性のユニットを導入するなど、同社の得意とするポリマー変性技術を応用することで、高電圧でもバインダーが劣化しにくく、電池が長寿命化を実現した。バインダーの柔軟性も高く、高密度化しても固化、割れが発生しにくい。ニッケル系正極材使用時にもゲル化せず、生産性が向上する。
スマートフォンやタブレットPCの需要拡大に加え、EV(電気自動車)、ハイブリッド車の普及が見込まれており、フッ素の特徴を生かした電池材料のニーズが高まる見通し。同社は、フッ素系バインダー「VW700シリーズ」以外にも、リチウムイオン電池も含めた蓄電デバイス分野での商品開発を進め、2020年度までには売上高100億円を目指す。