自然科学研究機構、世界で初めて国際天文施設「ALMA(アルマ:アタカマ大型サブミリ波干渉計)望遠鏡」の観測により、宇宙で最も激しい爆発現象、ガンマ線バーストの発生に伴う分子ガスの放射を検出することに成功したと発表した。
6月12日付の科学雑誌「ネイチャー」に掲載された、国立天文台チリ観測所 廿日出文洋特任助教のチームは、アルマ望遠鏡により二つの銀河で発生したガンマ線放射が2秒以上続く、ロング・ガンマ線バーストを観測した。約43億光年の距離にあるうお座のGRB 020819Bの母銀河を47分、約69億光年の距離にあるペガスス座のGRB 051022の母銀河を71分、それぞれ観測した。
観測した母銀河は、新しい星を活発に作り出している領域で、星の材料となる分子ガスが多く存在していると考えられていた。高い感度をもつアルマ望遠鏡により、世界で初めて一酸化炭素の分子ガスから発せられる電波を観測することに成功した。また、同じく星の材料となる塵からの電波も検出している。
アルマ望遠鏡により、初めて見えたガンマ線バーストの環境は、これまで考えられていたものと大きく異なっていた。GRB 020819Bの母銀河では、分子ガスはガンマ線バーストが発生した場所ではなく、別の場所(銀河の中心部)に分布していることが明らかになった。逆に、塵はガンマ線バーストの位置に大量に存在し、銀河中心部では検出されなかった。天の川銀河や近傍の銀河では、塵の質量は分子ガスのおよそ1パーセントであるのに対し、今回の観測結果では塵の割合がそれよりも10倍以上多いことがわかった。
廿日出助教は「これほどガスが少なく塵が多い環境でガンマ線バーストが起きているとはまったくの予想外でした。これは、ガンマ線バーストが普通とは異なる特殊な環境で発生したことを意味します。」とコメントしている。
研究チームは、今回観測した領域では、活発に星が作られており、新しく生まれた数多くの大質量星から発せられた強い紫外線が分子ガスを破壊しているではないかと考えている。今後は、アルマ望遠鏡で可能になった観測方法により、さらなる観測を重ねる。観測結果は一般的な特徴なのか、それとも特殊な例であるのか明らかにすることが課題だ。すでに、新たな研究を提案しており、アルマ望遠鏡の観測計画として採択されたという。
2013年から本格運用が始まったアルマ望遠鏡では、6月初頭の時点で、世界で130本程度の観測成果を元にした論文が発表されているという。国際天文施設として早いペースで成果を上げているといい、日本も含めたさらなる研究成果が期待される。