【フォード フィエスタ 試乗】世界の10ベストセラーカーである理由…森口将之

試乗記 輸入車
フォード フィエスタ
フォード フィエスタ 全 13 枚 拡大写真

フォードの精神的ルーツはやっぱり、20世紀初めに生まれた『T型』にあると思う。T型は決して速いわけでも、高級なわけでもなかったが、大量生産によって実現した低価格、クラッチレスによるイージードライブなど、実用車としては嬉しい特徴を数多く備えていた。現在のフォード、たとえば『フィエスタ』についても似たようなことが言える。

ニューエッジスタイルを導入したフォルムはかなりダイナミックだが、意外にも全長は4m以下なので取り回しでは有利。前席は固めで素っ気ない雰囲気もするけれど、姿勢をピシッと保持してくれる感触が心地良いし、後席の作りはこのクラスの欧州車でトップレベル。デザイン重視と思いきや、パッケージングもしっかり追求しているのだ。

エンジンは数々の賞に輝いたことでも知られる1リットル直列3気筒ターボの「エコブースト」。このクラスの輸入車では最少排気量だ。でも加速はこれで十分。6速デュアルクラッチ・トランスミッションがひんぱんに変速を行い、トルクバンドをキープしてくれることも効いている。サウンドは4000rpm以下では3気筒っぽさとは無縁。レスポンスは小排気量らしく生きがいい。必要以上に背伸びせず、コンパクトカーにふさわしい性能を真摯に追求したキャラクターが好ましい。

乗り心地は低速では固め。でも速度を上げていくとその印象が消え、サスペンションがストロークして、ショックを吸収するようになる。ステアリングの切れ味は正確かつ滑らかで、身のこなしはコンパクトカーらしく軽快そのもの。とにかくノーズがスッスッと動く。でもグリップは前後ともに安定していて、路面が荒れてくるほど真価を発揮するような懐深いタイプだから、安心感も高い。基本性能の高さに圧倒されてしまいそうな走りっぷりなのである。

ただ個人的には、ここまで走りを追求した仕様でなくてもいいのでは?と思った。45扁平の16インチというスポーティなタイヤを組み合わせるのではなく、ボディもリアスポイラーなどのない、実用車っぽい出で立ちで売ってほしい気がする。ブランド勝負、付加価値勝負の感がある現在の輸入車マーケットでは、そのほうがむしろ目立つだろうし、世界の10ベストセラーカーである理由が、ユーザーに伝わりやすくなるはずだ。

5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

《森口将之》

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