慶応大、巨大ブラックホールを周回するガスリンクの化学組成を解明

宇宙 科学
中心核巨大ブラックホールは、電離ガスから成る渦巻き構造「ミニスパイラル」のほぼ中心にあり、周りに「核周円盤」、外側に2つの「巨大分子雲」がある。
中心核巨大ブラックホールは、電離ガスから成る渦巻き構造「ミニスパイラル」のほぼ中心にあり、周りに「核周円盤」、外側に2つの「巨大分子雲」がある。 全 1 枚 拡大写真

慶應義塾大学大学院理工学研究科の竹川俊也氏、岡朋治准教授らの研究チームは、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を使って、天の川銀河中心の巨大ブラックホール周りを回転するガスリング「核周円盤」について詳細な電波分光観測を行ない、化学組成を初めて明らかにした。

観測の結果、核周円盤には比較的簡単な構造の分子が多く含まれる事が明らかになった。これは、核周円盤内部が大きな分子の存在できない過酷な環境であることを意味しており、過去の中心核巨大ブラックホールの活動性と密接に関係している可能性がある。

今回の研究では、ガスリング「核周円盤」と天の川銀河中心核「いて座A」方向の無バイアスなスペクトル線サーベイ観測を初めて行ない、81GHzから116GHzの周波数範囲に50本の原子・分子スペクトル線を検出した。

それぞれスペクトル線に現れる視線方向に重なる星間ガスを、速度範囲を適切に選ぶことで分離、核周円盤に多く含まれる分子種と隣接する巨大分子雲に多く含まれる分子種とを分類した。核周円盤に隣接する巨大分子雲には複雑な分子が多く存在する一方、核周円盤には比較的単純な構造の分子しか存在しないことを発見した。そこが複雑な分子が存在できない過酷な環境であることを示唆している。

今回得られた観測データは、天の川銀河中心と他の銀河の中心とを比較研究する上でも有用なもので、今後多くの研究に活用されることが見込まれる。

今回の研究成果は、米国の天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Supplement Series」オンライン版に掲載された。

《レスポンス編集部》

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