“DANCE of F”をテーマにレクサスのレーシングマシンが富士スピードウェイで競演…動画本編公開は今春

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コース上でしばし打ち合わせ。手前はRC F GT500マシン
コース上でしばし打ち合わせ。手前はRC F GT500マシン 全 40 枚 拡大写真

厳しい寒波が本州を襲った2月上旬、粉雪が舞う富士スピードウェイに、レクサスのGTマシンが運び込まれた。昨年からSUPER GTに投入された『RC F』のGT500マシンの他に、2015年シーズンから世界に投入される予定のレーシングカー、『RC F GT3』の姿もある。

この日、富士スピードウェイでは、レクサスの「操る楽しさ」を表現するブランドムービーの撮影が行われた。「走るアート」をテーマに、本物のGTマシン2台と、"F"モデルの頂点である『LFA』、そして2台のRC Fからなる5台をサーキットで同時に走らせ、その一周の中で、レクサスならではの意のままの走りをアーティスティックに描く。キャッチコピーは“DANCE of F”だ。

撮影が許されたのはたった一日だけ。富士スピードウェイという舞台、そして白のボディカラーで統一された5台のレクサスが揃うのがこの日だけだからだ。事前の準備は何ヶ月もかけて入念に行われたが、事前の走行リハーサルは一切なし。撮影自体は言うなれば、ぶっつけ本番に近い。

この日のために一流のドライバーも集められた。GT500マシンを走らせるのは、昨年に続き今年もSUPER GTにLEXUS RACINGで参戦する石浦宏明選手。そしてまだ開発の真っ最中のGT3マシンには、その開発ドライバーでもある片岡龍也選手が乗り込む。LFAはベテランの駒形行春選手、そして2台のRC FはD1ドライバーの佐久間達也、川畑真人の両選手。各ドライバーをドライビングディレクターとしてまとめるのは、レーシングドライバーの木下隆之氏。「今回は日程もタイトで難しい部分はたくさんあるが、みんな最高のドライバーなので、やってくれると思う」と語る。

一触即発とも言える動きを、あらゆる角度から捉えるため、メインカメラは計5台用意された。定点からの撮影には最新型のARRI社製カメラを使うほか、マシンを並走しながら捉えるためにクレーン付カメラカーも用意された。

さらに空撮のため、重い業務用カメラを搭載できる大型マルチコプターを用意。今回は機体の操縦者とは別に、オペレーターがカメラの向きを遠隔操作できるタイプを使用する。また、各マシンの車内には小型ムービーカメラを2基から4基設置。一部の車両には、複数の小型カメラを組み合わせて360度映像を撮影できる機材も取り付けられた。もちろん撮影クルーもトップレベルであり、その数も2日間で延べ100人を越える。これだけのスタッフや機材が集まることは、映画やCMの撮影でも滅多にないという。

撮影の前日は、製作スタッフやドライバーが集まり、ブリーフィングを繰り返しながら最後まで修正を重ね、意思の統一が図られた。全体を統括するクリエイティブディレクターの香田信氏が「条件は厳しいが、とにかくいいものを作ろう」と全員に呼びかける。心配なのは天候だった。予備日はなく、最悪の場合は今回のプロジェクト自体が流れてしまう。

撮影当日の朝5時。天候は曇りで、気温はマイナス5度。ピットエリアで、マシンと撮影機材の準備が始まる。辺りが白み始めた頃、GTマシンがコースに飛び出してゆく。路面もタイヤも冷えきった状態だが、ストレートはほぼ全開。GT500マシンの甲高いエキゾーストノートが早朝のグランドスタンドにこだまする。続いてGT3マシンが、そしてLFAとRC Fが走り始めた。

そろそろ撮影開始かと思われた頃、粉雪が舞い始め、それが徐々に激しくなる。GTマシンが粉雪を煙のように巻き上げながら走る様子は幻想的だが、ドライバーは「ステアリングを切らなくてもマシンが横を向く」と訴える。しかし決して誰も「走れない」「無理だ」とは言わない。メインストレートやピットロードが見る見るうちに白くなり、1コーナーの先は路面が凍結し始めた。スタッフの間に不安がよぎる。

その時、雲の合間から太陽が現れ、雪を溶かし始めた。極寒の富士スピードウェイで撮影が始まった。“脚本”通りフォーメーションを組み、1コーナー、100R、アドバンコーナー、ダンロップ、そして最終コーナーと限られたわずかな時間でカメラテストを兼ねたリハーサルを実施する。道幅が広い富士スピードウェイだが、コーナーを回る2台のGTマシンをアウトから3台がドリフトしながら抜いていく、という走りは至難の業。なにしろGTマシンは開発中の虎の子であり、絶対に壊すわけにはいかない。そして市販車の3台は基本的にノーマルで、ドリフト専用車とは勝手が違う。しかし5人のドライバーはそんなことを感じさせない思い切りのいい走りで、要求された動きを再現してゆく。

日の出と共に始まった撮影はぶっ続けで夕方まで行われた。マシンが万一ぶつかれば撮影そのものが終わってしまう、という緊張感の中、ドライバーと撮影スタッフは、いいものを作りたいという気持ちだけでベストを尽くした。夕闇迫るグランドスタンド前で撮影が終わった時、一日中雲の中に隠れていた富士山の姿が、夕陽をバックにくっきりと浮かび上がっていた。

撮影終了後、香田氏は「今回はみんなが見たことないものを撮ろう、ときめきを与えようということで、たくさんの関係者に協力してもらい、最新の機材を投入して新しいことにチャレンジできた。仕上がりを楽しみにしてください」と語った。木下氏は「とにかくアクシデントがなくてホッとした。今回はレーシングカーというものを、本来の目的とは違う形で特別に使うことができた。そういう新しいことにトライして形に出来たことが嬉しい」。

GT500の石浦選手は「難しいことはいろいろあったが、想像していた以上にエキサイティングなものが撮れたと思う。出来上がりが楽しみなシーンがたくさんある」。GT3を走らせた片岡選手は「映像を作る作業ってこんなに大変なんだなと(笑)。本来レーシングカーには求められない動きが多く、接近戦もあって大変でしたが、これだけ妥協せずに作れば、いいものが出来ると思います」と満面の笑みで語ってくれた。LFAで豪快かつ正確なドリフトを披露した駒形選手は「最初この話をいただいた時は、2ペダルなので難しいかなと思いました。でも絶対にぶつけてはいけないと自分をセーブしながらも、かなり攻めた走りが出来たと思います」。

最後に、このチャレンジングな撮影を統括していたLexus International イベント&モータースポーツG グループ長 天野正秀氏は、「レクサスはAmazing in Motionというコンセプトのもと、期待を超える感動を提供し続けることをブランドスローガンとしている。今回の撮影は、クルマを通したAmazingなチャレンジができたのではないかと実感している。この映像を通して、クルマを操る楽しさや歓びを感じてほしい」とすべての締めくくりとして、力強く語っていた。

この日撮られた素材がどのような形で映像になるのか。ムービーはこの春にインターネットで公開予定だ。

《丹羽圭@DAYS》

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