【ホンダ シャトル 試乗】“MM思想” 受継いだ、圧倒的機能性に敬服…中村孝仁

試乗記 国産車
ホンダ シャトル ハイブリッドZグレードの外観
ホンダ シャトル ハイブリッドZグレードの外観 全 18 枚 拡大写真

かつて、ホンダはMM思想というクルマ作りの思想を提唱したことがある。1980年代のことだ。それを今に受け継ぐモデルが新しい『シャトル』である。

【画像全18枚】

MM思想を声高に提唱したのは、確か「ワンダーシビック」だったと記憶する。MMとはマンマキシマム、メカミニマム、つまりパッセンジャー空間を最大に、メカニズム空間を最小にして使い勝手を向上させようというもの。今回のシャトルはそのMM思想をベースに、心に常にリゾートを感じられるステーションワゴンの新価値を追求したと言う。

そのリゾートを感じるか否かはともかくとして、新しいシャトルの機能性には脱帽であった。まず無理をせずに2列シートのレイアウトを採ったことによって、前後のシートスペースには余裕が生まれ、5ナンバーサイズながら実にゆったりとした室内を作り上げていること。次に最大の売りは恐らくラゲッジスペースだと思うのだが、積載容量は実に570リットル。床上で540リットル、床下で30リットルだそうだが、テールゲートを開いて見ても、見るからに広いスペースを実感できる。

余談ながらゴルフを趣味とする僕にとって、9.5インチサイズのキャディバック4つを無理なく積めるというコンセプトは、近年大型のSUVでも稀有な存在だから、実に嬉しいスペース効率だ。

床下30リットルというのは、ラゲッジの床面を開くと出てくる、いわゆるアンダートレイ。汚れ物を収納したり、時にはベビーカーや車いすなどが収納できるという。さらに上級モデルでは後席シート背後に汚したくない大事なものを置く折りたたみスペースを二つ装備した。小さなポーチや、帽子などがここにおける。アンダートレー、この折りたたみスペース、そして本来のラゲッジスペースを「気にならないん棚」「大切棚」「広いん棚」というネーミングで呼んでいる。ちょっとダジャレっぽい。

さらに、後席は初代『フィット』以来伝統となっているチップアップ式の座面を持っているから、例えば背の高い観葉植物を運ぶ時などにも便利する。このように、想像できるあらゆる収納を可能にしたラゲッジ空間こそ、シャトル最大の売り。まさに痒い所に手が届くその利便性には敬服した。

では、走りはどうか。今回のメインエンジンは、1.5リットル直噴4気筒と1モーターをトランスミッション内に組み込んだハイブリットシステム。基本的には「フィットハイブリッド」と同じ構成で、トランスミッションも7速DCTが組み合わされる。ただし、今回はパドルシフトを上級モデルに装備されているのがフィットとの違い。そして、同じ直噴1.5リットルユニットをCVTと組み合わせたガソリン仕様の設定もある。

今回はその両方を少しだけ試してみた。ガソリン仕様は169万円という低価格が売り物。というわけで装備的にはだいぶ見劣りしてしまうが、それは価格に比例するもので致し方ない。ホンダらしい感度の良いステアフィールを持つこのクルマ、ノーズも少しハイブリッドより軽いのか、ステアフィールは少々過敏な印象を受けた。これだと不意に飛び出した障害物を避けるようなシーンで結構面食らうかもしれない。因みにタイヤは185/60R15。借り出したモデルにはヨコハマ・ブルーアースが装着されていた。ホイールは鋳鉄製だ。

もう一方のハイブリッドは最高グレードのZに試乗。シートがぐっと高級感を増し、ファブリックの体への密着度が高く、快適な座り心地を実現している。またこのグレードになると、より快適な乗り味を実現するという振幅感応型のダンパーを装着しているそうなのだが、それよりむしろ大型液封トレーリングアームブッシュの採用の方が効果的なようにも感じられた。この液封ブッシュは『ステップワゴン』にも採用されていて、その乗り心地の良さにビックリさせられたものだ。ガソリン仕様で感じられたステアフィールの過敏さは、基本的には変わりないものの、タイヤの違い(こちらはアルミホイールと185/55R16)とノーズの重さの違いによるものか、多少はナーバスさが影を潜めていた。

DCTの進化も顕著で、パドルを使った素早いシフトにもちゃんと対応し、まだるっこしさは消えていた。パフォーマンスに関しては、元来それを求めるようなタイプの車種ではないので、基本的にはこれで十分と思える。

少々気になる部分を2点。一つは後席のシートベルトの取り付け位置。身長が低いパッセンジャーが乗った場合、ベルトが首筋を通る。子供だとすり抜けてしまうケースがあるかもしれない。そしてもう一つは、5月だというのに30度を超える外気温では、エアコンが必須なのだが、後席へのエアフローが十分でなく、胸から上には冷気が回るが、そこから下はかなり暑く、上半身と下半身の温度差がかなりのものになること。センターコンソールにiPadを収納できる深いスペースを作った結果、後席のエアコン吹き出し口が作れなかったことが一つの理由。深い収納か、エアコン吹き出し口かという究極の選択だが、とりあえずメーカーは収納を選んだ。これも冒頭書いたように機能性追求の結果だから、責めるわけにもいかない。

とまあ、シャトルはこと機能性に関していえば一芸に秀でた性能を持ったクルマである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来37年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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