【テクノフロンティア16】大型トラック、トレーラーの横転事故を防ぐ装置開発…重心検知協会

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重心丸のシステム全体。手前の箱の中にセンサー類を組み込んでいる。
重心丸のシステム全体。手前の箱の中にセンサー類を組み込んでいる。 全 3 枚 拡大写真

重心検知協会と中央バス商事、東京海洋大学大学院が共同開発した三次元重心検知システム「重心丸」は、近年トラックの中でも増えている大型トラックやトレーラーの重心位置を特定し、横転の危険性を教えてくれる装置だ。

そもそも東京海洋大学大学院の渡邉豊教授が三次元重心検知理論を導き出し、このシステムを考案したそうだ。「船は設計図から重心が求められ、それにより固有の振動の振動や揺れが起こることが分かっています。そこで船の揺れを算出できる関数を逆に利用して、揺れから重心を求める逆関数を導き出したのです」と渡邉教授。

特に横転の危険性が高いのは、タンクローリーやコンテナを運ぶ車両。これらは都市から都市へと荷物を運ぶトラックやトレーラーを思い浮かべるが、実は港湾内で活躍する海上コンテナを運ぶトレーラーで横転事故の危険性が高いそうだ。というのも海上コンテナはサイズが決まっているものの、内容物によって重量や重心がまちまち。そのため積載した時のトレーラーの重心の変化は予測することなどできないからだ。

システムはPCにインストールされたソフトとセンサーで車体の揺れを検知して分析、ドライバーに警告してくれる、というもの。20秒間の走行で揺れを分析して重心位置を特定し、走行中の揺れの加速度を検知して、横転の危険性を4段階の表示と音声でドライバーに知らせてくれる。横転の危険性が高まった場合、ステアリングの切れ角を減らせば横転を回避できる場合が多い。画面上にはトラックの真横と後方図があり、重心を表示し続けているのも、ドライバーには目安になりそうだ。

先日、熊本の地震で被災地に駆けつけようとした自衛隊のタンクローリーが横転事故を起こしたが、この装置があれば事故は防げたのではないか。中央バス商事の齋藤氏は、そんな筆者の質問に「おそらく、そうだったと思います」と答えてくれた。

「実は船の転覆防止システムを開発する過程で、車両用の三次元重心検知システムが生まれたのですが、船の方が転覆に至る状態の検知が難しくて、まだ完成していないんです」と渡邉教授。なんと副産物だったはずの車両用の横転警告装置の方が先に完成してしまったのだとか。

既に実証実験も済ませ、この春から本格販売が開始される。ちなみに価格は取り付けまで全て含んで20万円とか。これで横転事故が防げると思えば高いものではないが、量産されればさらなるコストダウンも期待できるそうだ。

《高根英幸》

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