三菱 エクリプス クロス は「アウトランダーとはコンセプトが違う」

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三菱自動車 林祐一郎チーフプロダクトスペシャリスト
三菱自動車 林祐一郎チーフプロダクトスペシャリスト 全 16 枚 拡大写真

ジュネーブモーターショーでワールドプレミアされた『エクリプス クロス』。三菱自動車の新世代デザインを纏う商品の第一弾であると同時に、先進国から新興国までグローバルに販売される世界戦略モデルだ。それではその商品企画はどのように定め、進められたのか。担当者にインタビューすることができた。

SUVの機能とクーペのスタイリッシュさを融合

エクリプス クロスは、「ダイナミックシールド」に代表される三菱車の新しいデザイン言語を、当初から織り込んでデザインされた最初のモデルだ。車格は欧州で言うコンパクトクラスで、これまでフェイスリフトでダイナミックシールドを導入した『アウトランダー』と『RVR』の間に位置するということになる。

同じくコンパクトSUVに属するRVRとサイズは近いが、RVRはコンパクトの中でも小さめのクラス。一方エクリプス クロスは、コンパクトでも大きめのクラスとなる。そしてアウトランダーはミッドサイズ相当。三菱にとってはいままで商品が存在していなかったクラスに投入されるわけだ。

ただし、単純に市場の空白を埋めるためのクロスオーバーSUVではないと、コンセプト立案段階から開発に携わってきた林祐一郎チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)は語る。「アウトランダーの機能と、スタイリッシュクーペの世界観を融合したモデルがエクリプス クロスです。実用性やSUVとしての機能はしっかりと押さえながらもスタイリングを重視した、新しいSUVというのがコンセプトです」という。RVRやアウトランダーとはキャラクターが明確に異なる車種というわけだ。

自分自身が楽しむためのクルマ

それでは、その商品企画はどのように立案され、開発が進められたのだろうか。林CPSによれば、開発初期の分析で「コンパクトクラスのSUVは、他のセグメント以上にスタイリングが重視されている」、「女性や年配層のユーザーが増えていて、ユーティリティ重視の従来型SUVとは異なった使われ方が多くなっている」という結果が導き出されたという。

これを受けつつ、ターゲットユーザーを思想や価値観で設定しようと試みたと林CPS。グローバル商品だから、先進国と新興国という価値観の異なる市場に対応する必要がある。「どちらでも向上心のある人というのが大前提」と前置きしつつ、先進国では「エンプティネスター(子育てを終えた熟年世代)、あるいは比較的若く社会で活躍する女性」。いっぽう新興国では「ビジネスで成功したエリート層、クルマをステータスシンボルとして他人に見てもらいたい人」がターゲットユーザーだと林CPS。

いずれの市場にも共通しているのは、想定ユーザーに子供の影が見えないということだ。これは「自分自身を楽しむ」ということに主眼を置いた結果。アウトランダーでは、家族や子供を楽しませることでドライバーが楽しさを得ていたと分析。そうではなく、オーナーそしてドライバーが直接的にクルマを楽しむという点で「両方の市場ニーズに合致できると考えました」とのこと。

思わず運転したくなるスタイリング

こうしたニーズを満たすためには、スタイリッシュさと実用性を高いレベルで両立させることが重要。さらに「想定ユーザーにモノを提供する」という従来型の思想ではなく、新たな付加価値を規定してから開発しようと決めたという。そこで商品の特徴として3本の柱を立て、それぞれ「Stimulating Design」、「Human Connectivity」、「Reliable Driving」というキーワードを与えて開発を進めたとのこと。

キーワードの内容を順番に説明すると、思わず運転したくなる、ワクワク感を与えるスタイリング(Stimulating Design)を持ち、運転中はスマートフォン接続で楽しみつつ、新たな行き先を見つけることができ (Human Connectivity)、その目的地に安心して向かえる走行性能 (Reliable Driving)を備える、ということになる。

新興国ではいくらスタイリッシュなパーソナルカーでも恋人や友人を乗せ、複数人で出かけることも多く、SUVとしての機能性が劣っていては商品力に欠ける。そこでパッケージレイアウトはきわめて実直なものにされている。座席は前後ともアップライトな着座姿勢で、頭上空間も荷室も確保。ボディ前後のオーバーハングは短くされ、アプローチアングル、デパーチャーアングル、最低地上高も十分。こうしたSUVの基本を踏まえつつ、犠牲にしないギリギリのところまでスタイリングを追求したという。

林CPSは開発にあたって「どの車種でもデザインは大切だが、今回はとくに重要だ」と社内を説得して回り、スタイリングにもコストを配分するように苦心したと振り返る。たとえばキャビン部分のモックアップはいくつも作り、前後席の乗降性を確認しつつスタイリングを決めていったとのこと。

こうして実現したのが、後席の200mmスライド&8段階リクライニング機構や、後方視界を確保する2分割リアウィンドウなどだ。また裾を汚さずスマートに乗降できるよう、ボディではなくドア側にサイドガーニッシュを装着するといった処理は「日本車らしい、細かな気遣い」の一例だとか。いずれもコスト面では不利となる要素だが、スタイリングと機能性の両立のために採用したとのこと。

スマートフォン接続による付加価値を訴求

それでは「コネクティビティ」はどうだろうか。ここではApple CarPlayそしてAndroid Autoとの連携を重視。インパネ中央の薄型タッチスクリーンに各種情報を表示しつつ、音声認識で操作する前提とした。またApple CarPlayは、センターコンソールのタッチパッドでブラインド操作も可能になっている。

注目点は、カーナビを装着しない前提でセンタークラスターがデザインされているということだ。この理由について林CPSは「最近はとくに新興国で顕著ですが、道路の変化がめまぐるしく、地図のアップデートを頻繁にする必要がある。こうなると車載ナビよりも、スマホの地図アプリのほうが使い勝手がいいと感じる場面が多いのです」と説明する。

そして「ドライビング」に関しては、走行状況や路面状態により後輪へ伝達するトルクを常に適切に配分する電子制御4WDを搭載。これにAYCブレーキ制御を追加した車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用したほか、ボディの高剛性化に注力したとのこと。3点ストラットタワーバーや、構造用接着剤といった技術が採用されている。構造用接着剤は、通常のスポット溶接ラインに工程を追加するだけで、レーザー溶接に近い剛性を出せるという。

ちなみにエンジンは三菱車に初めて採用した1.5リットル直噴ターボと、2.2リットルのクリーンディーゼル。組み合わされるトランスミッションはそれぞれガソリンがCVT、ディーゼルは8速AT。意外なことに、日本市場ではディーゼルが先行することになるという。

《古庄 速人》

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