【ドライブコース探訪】特攻、その歴史を物語る「貴様と俺の碑」

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【ドライブコース探訪】特攻、その歴史を物語る「貴様と俺の碑」
【ドライブコース探訪】特攻、その歴史を物語る「貴様と俺の碑」 全 7 枚 拡大写真

鹿児島・薩摩半島を海沿いに走る国道225号線。その沿線の鴨池というところに小さな戦没者慰霊碑「貴様と俺の碑」が立っている。ここは鹿児島空港が現在地、溝辺という高台に移転するまでは空港、その前は海軍の航空基地だったところだ。

【画像全7枚】

貴様と俺の碑は鴨池基地に設置されていた予科練(飛行兵養成課程)のための練習航空隊、鹿児島航空隊の慰霊碑で、碑の名称は「貴様と俺とは同期の桜~」という予科練の歌にちなむ。

鹿児島は沖縄の隣県ということもあって、大東亜戦争当時は敵艦に体当たりする特別攻撃最前線の地となった。その歴史を物語る象徴的な存在となっているのは薩摩半島南部の基地跡に設立された知覧特攻平和会館だが、実は鹿屋、国分、出水、万世など、知覧以外にも特攻の拠点はいくつもあり、それらからの出撃のほうが多かった。

貴様と俺の碑の場所にあった鴨池基地は、大東亜戦争前には真珠湾攻撃を想定した訓練の拠点となり、昭和40年代後半までは鹿児島空港として利用された場。現在残されている史料によれば、特攻基地ではなく通常作戦を行う基地であったとされているが、当時を知る人々はここからも特攻出撃が行われていたと証言している。

すでに鬼籍に入って久しい筆者の祖父は戦時中、その鴨池基地近くの宇宿(うすき)というところで寺の住職をやっていた。その寺には実戦部隊だけでなく、鹿児島航空隊の隊員たちも遊びや人生相談に訪れていたという。航空兵には物資の乏しい戦時としては最上の航空弁当が配られていたのだが、主食は混ぜご飯であった。寺には白ご飯があり、当時小学校中学年だった実母は混ぜご飯のほうが好きだったので、ニーズの一致によりしょっちゅうご飯を取替えっこしていたという。

戦争末期にはその鴨池基地も激しい空襲を受け、死傷者が日常的に出ていた。寺に運ばれた棺からは鮮血が滴り落ちていたという。そうして戦没する者、特攻出撃で散華する者等々、その頃の鹿児島には常に死が付きまとっていた。寺に来ていた航空兵たちの中には、出撃時に寺の上空を経由し、編隊を組んだまま旋回してから南へと飛び立って行った者も多くいたそうだ。

そういう戦時の様子についての話者も、もうだいぶ少なくなった。鴨池基地の痕跡はこの碑以外にもバス会社が車庫に使っていた格納庫があったのだが、それも再開発のためあっさり取り壊されてしまった。敗戦から70年以上が経過した今、すべてが変わっていくのは当たり前といえば当たり前なのだが、筆者が幼少だった時代は防空壕跡に行けばアメリカの艦載機が機銃掃射を行った名残りの12.7mm弾をいくらでも見つけることができた。実母とその弟は、艦載機のその弾で射殺されそうになったところを、鴨池航空隊員が防空壕に引っ張り込まれて九死に一生を得たということもあったという。そう考えると、70余年前というのは案外身近なものでもある。

鹿児島の地元民でも皆が知っているというわけではない小さな貴様と俺の碑だが、訪れるとそんな空気がかすかに残っているようにも感じられる。もし知覧の特攻平和会館を訪れるような機会があるときには、鴨池にもちょっと立ち寄ってみることをおススメしたい。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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