【第101回インディ500】覇者・佐藤琢磨に訊く…前編「強力なチームメイトたちと全員で強くなっていった」

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インディ500の戦いについて振り返る佐藤琢磨。
インディ500の戦いについて振り返る佐藤琢磨。 全 8 枚 拡大写真

第101回インディ500で、日本人選手初優勝という大偉業を達成した佐藤琢磨。凱旋帰国中の英雄は、今回のインディ500制覇を可能にした原動力が「強力で優秀なチームメイトたちとともに全員で強くなっていった」ことにあると振り返った。

ホンダエンジンでのインディカー・シリーズ参戦8年目の今季、琢磨はホンダ勢トップチームの一角「アンドレッティ・オートスポーツ」に移籍した。通常は4台、そしてインディ500ではF1からやって来たスポット参戦のフェルナンド・アロンソらを含めて6台という大所帯での戦いだった。

琢磨は今季開幕前のテストから、データ豊かな環境で戦えることのメリットの大きさを実感している旨を繰り返しコメントしてきている。そしてそれは、強力なチームメイトの存在あってこそのものであった。

「エンジニアリンググループの深いリソースがあることはもちろんですけど、チームメイトが強力なことが大きいんです。どんな状況でもオールマイティに速いライアン・ハンターレイ(インディ500優勝とシリーズタイトル獲得の両方の経験あり)、飛び抜けたスピードをもっているアレクサンダー・ロッシ(昨季インディ500勝者)、そしてマルコ・アンドレッティがオーバルで発揮する感覚的な強さ。そこに今回はフェルナンド(アロンソ=05、06年F1王者)も来ましたからね」

「数字に現れない感覚って、あるんですよ。例えば、アンダーステアやオーバーステアがある状態のクルマでも、優秀なドライバーはそれが出ないように走ってきてしまうことがあるわけです。そこは単純にデータを見るだけでは分からない。データ上では安定して走っているように見えても、実は、ということがある。そういうところはすごく役に立ちましたね」

「あっち(のチームメイト)はどう? こっちは? という感じで、チーム全員で強くなっていった、そう感じています」

アンドレッティ・オートスポーツは近年、インディ500での強さが目立つ陣営でもある。だが、琢磨の今回の優勝は強い陣営に加入したことだけが理由ではない。自分自身の経験に基づく理想的なマシンをつくれる環境、それがアンドレッティだったともいえよう。

今回のインディ500、琢磨のマシンはスティント(ピットアウト~ピットインまでの1回の走行)の後半になってタイヤの消耗が進んだ状況でも、戦闘力の落ち幅が他車より少ないように見えた。

「僕が求めていたのはそういうクルマです。純粋な1周のスピードでは、僕は8~9番くらいだったと思いますけど、ある程度タイヤが消耗してきた時に最もリフト(アクセルの戻し)が少なく走れたうちの一台だったはずです。とにかく安定していましたね」

インディ500は200周、800kmの長丁場。1スティント内で安定しているマシンをつくることの重要性に加えて、レース距離全体を考えての戦略も大切になる。そこには参戦8年目の経験も活きていた。最初の150周は琢磨にとって、ある意味では“テスト走行”だった。

「最初の150周は、生き延びるためにリスクを回避しながら、残り50周、30周で最高のパフォーマンスを発揮できるようにクルマをつくっていくことが重要なんです。もちろん、レース中のピットでやれることは前後ウイングの調整と交換するタイヤの内圧調整くらいですが、特に内圧はすごく重要です。4輪をどう使っていくか、そのために前半~中盤の4~5スティントでしっかりしたデータベースをつくって、路面状況や気象条件の変化も見ながら(エンジニアと交信して)残り2スティントのために細かい作業をしていくんです。それが最後に効くんですよ」

「先頭を走りすぎると燃費的にもよくないですし、クリーンエアで走れるからクルマの状態を(必要以上に)いいと思ってしまいがちなんです。もちろん先頭を走った時の状態の確認も必要ですから、レース途中で一度は先頭に出るのも大切で、僕もそれはやりました。でも、そのあとは(先頭に固執せず)4~5番手あたりで徹底的にいろんな状況を考えて“練習”しました」

「こういうのは長くやっていないと分からない部分でしょうね。僕も3回目(2012年)で優勝寸前までいったことがありましたが、そこで勝てなかったという事実はそれを物語っていると思います。何かが足りなかった。そこからさらに引き出しを増やしていって、チームメイトを含めて最高の環境が今年そろって、インディ500制覇が実現したんだと考えています」

苦い経験もしっかり糧にして、琢磨は見事に大輪の花を咲かせたのであった(後編に続く)。

《遠藤俊幸》

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