トラック・バスの次世代自動車エネルギーはEVではない?…IVECO日本進出の背景

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CNGは航続距離1500kmも可能
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9月7日、スバルは2020年をめどにディーゼル車の生産・販売事業から撤退すると発表した。EUでも脱ディーゼル・脱ガソリンの動きが加速しているのは周知のとおりだが、ディーゼルエンジンといえばトラックやバスなど大型車両のエンジンという認識が浸透している。

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環境問題を考えるとき、ディーゼルエンジンについては乗用車より商用車を考えるべきなのだが、ディーゼル廃止の流れのなかでは乗用車ばかりが議論の対象となっているきらいがある。日本やアメリカはディーゼルエンジンの排ガス規制がEUと異なり、CO2、NOx、PMなどの対策が進んでいるため、まだ実感がわかないのかもしれないが、乗用車の規制や電動化の動きが落ち着いたら(すべてがEV化されるという意味ではない)、同じ動きが商用車にも及ぶ可能性は十分にある。

すでにダイムラーや三菱ふそうは、EVトラックの開発・実用化を進めている。ダイムラーは総重量25トンクラスのEVトラックで航続距離200kmを達成しつつある(実用実験段階)。しかし、EUではEV化以前から、大型車や商用車の天然ガス転換が進んでいる。その理由は、大型車や長距離輸送を考えたとき、燃料電池やEVは技術革新とインフラの問題で現実的ではないとの判断からだ。全世界で、すでに2400万台もの天然ガス車が走っており、天然ガスの充てんスタンドも2万9000カ所に及ぶ。世界の自動車保有台数は12億6000万台といわれており、その3割がトラック・バスを占めている(およそ3億4000万台)。概算では全世界のトラック・バスの約7%が天然ガス車ということになる。

ちなみに、次世代カーの代表とされるEVの世界保有台数は201万台。台数だけの単純な比較なら、天然ガス車の1割以下の台数しかまだ走っていないことになる。

EUでは、天然ガス自動車普及のために4兆円規模の投資を決め、その中、ブルーコリドーというプロジェクトでは、域内幹線道路においてCNGスタンドは150kmごと、LNGスタンドは400kmごとに設置を義務付け、2017年にほぼ目標を達成している。これにより北欧地域から、スペイン、ポルトガルまで天然ガス車での走行が可能になっている。なお、CNGは高圧縮した気体の状態の天然ガス。LNGは液体の状態の天然ガス。

そしてこの動きは近年加速しているといい、2012年以降は毎年150万台以上増加して現在に至る。このけん引力は中国、イラン、インド、さらにアルゼンチンやブラジルなど中南米諸国によってもたらされている。

日本は、タクシー業界が油田から石油とともに産出されるLPガス(天然ガスではない)を古くから使っているが、天然ガスのトラック・バスの累計台数は2万1000台ほどだ。充てんスタンドも270カ所(2015年)となっている。トラック・バス、重機についてもディーゼルエンジンの規制が進んでいる日本においては、天然ガス車はEUほど注目されていない状態だ。

しかし、その中、6日にはイタリアIVECO(イベコ)社が、天然ガス事業で日本に進出することは発表した。まずは岡山県に拠点をもつ両備グループとの提携を通じて、日本にも天然ガスインフラや車両を展開していく予定だ。両備グループは、電車・バス・フェリーなど地域交通を担う企業だが、LRT(ライトレール交通)やエコカーによる旅客輸送を考えていたといい、天然ガスの経済性や環境性能を評価して、BRT(専用レーンとバスを組み合わせた交通機関)車両に天然ガス車を増やしていきたいとする。

今回想定しているBRTでは、連結バスを利用して電車並みの輸送能力を確保し、専用レーンが必要だが電車のような軌道、架電設備が必要なく、導入・開通コストが抑えられる。天然ガスを使えば高い環境性能も期待できる。天然ガスはPMをほとんど排出しないし、ディーゼルエンジンとの比較では、CO2は10%、NOxは50%ほど削減できるという(IVECO製天然ガストラック、New STRALIS NPの場合)。自然由来のバイオメタンを利用すれば、排出されるCO2を相殺することもできる。

IVECOはグローバルでは、トラック・バスなど完成車を市場に供給しているが、日本では直接完成車を売るのではなく、事業者との提携により天然ガスエンジンの供給、インフラ設備の提供、自動運転や運行管理システムの技術提供、開発支援などから始める。

日本では、天然ガス車に対する注目はまだ高くないが、大型トラック・バスなどディーゼルエンジンの市場に、さらなる環境性能の法規制や社会ニーズが高まれば、大型車両、長距離輸送の分野でも代替燃料や代替エンジンを考える必要がでてくるだろう。EVや燃料電池の活用も期待されているが、航続距離とインフラ整備の問題がたちはだかり、どちらも重い荷物を遠くまで陸送するというニーズには不十分だし、いまのところ現実的ではない。

資源を持たない日本は、エネルギーのマルチソース化は重要で、特定資源に頼らない政策が必要だ。ガソリンやディーゼルなどを単に排除するのではなく、EV、燃料電池、天然ガスと用途、分野ことにうまく共存・棲み分けができることが望ましい。EUのように天然ガス転換が日本でも進むかどうかは判断が難しいが、大型トラック・バスの分野でも、ディーゼルエンジンのクリーン化以外の方向性も検討すべき段階に入ったといえそうだ。
イベコは、日本市場に進出する「最初のステップ」として、岡山を拠点とする両備ホールディングスと覚書を締結。バスや鉄道…

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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