動的な地図情報の収集に注力するボッシュ…幹部来日[インタビュー]

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ボッシュの、ロルフ・ブーランダー モビリティソリューションズ統括部門長(左)と、日本法人社長のクラウス・メーダー氏(右)
ボッシュの、ロルフ・ブーランダー モビリティソリューションズ統括部門長(左)と、日本法人社長のクラウス・メーダー氏(右) 全 15 枚 拡大写真

自動運転・電動化・コネクティビティのトレンドの中で、自動車産業における存在感を急速に拡大しているメガサプライヤー。その代表格であるドイツのボッシュは、この先どのようにトレンドをリードしていくのか。

東京モーターショー2017に合わせ来日した、ロルフ・ブーランダー モビリティソリューションズ統括部門長と、日本法人社長のクラウス・メーダー氏に聞いた。

動的な地図情報の収集に注力

----:東京モーターショーのプレスブリーフィングで、地図会社のインクリメントP社との提携を発表した。どのような狙いがあるのか。

ブーランダー氏(以下敬称略):自動運転の実現のためには、高精度の地図データが必要なことは明白だ。ボッシュではオープンな形で地図プロバイダーと共同作業をしている。欧州ではHERE、トムトム。中国でも3つの地図プロバイダーと共同作業をしている。日本も非常に重要なマーケットなので、そのような活動が必要だと考えた。

ボッシュは自動運転用のセンサーも手掛けており、それらの情報を統合して、車両の状況を正確に把握することができる。これらの情報をボッシュのクラウドにアップする仕組みがあり、さらに地図プロバイダーのクラウドにも送信してデータを有効活用することもできる。クルマがどこにいて、周りに何があって、どう動くべきかを検知できる。これは共同作業の大きなメリットだ。

自動運転用のマップは、静的な地図情報の上に何層もの動的な情報が加えられる。いわゆるダイナミックマップだ。このように動的かつ高精度な地図情報を作るために、「Bosch Road Signature 」が不可欠だ。ビデオとレーダーの情報を活用する。

さらに話が複雑になるが、ダイナミックマップのさらに高度な動的データの例として、超音波センサーを使って、どの駐車場が開いているか検出してクラウドに送ると、他のドライバーが情報として利用できる。これをコミュニティベースパーキングと呼んでいる。

メーダー氏(以下敬称略):クルマが一種のセンサーのような役割を果たし、ロードサイドの動的情報を吸い上げる仕組みだ。

----:日本にはダイナミックマップ基盤企画が提供するダイナミックマップの静的な地図レイヤーがあるが、この取り組みによって独自の地図データを作るということか。

メーダー:そうではない。基本の静的マップに対して、ボッシュのセンサーやビデオから集めた動的な情報をその上に載せるということだ。工事現場があると仮定して、例を挙げよう。静的な地図では渋滞情報が分かる程度だが、動的な情報として、工事現場に障害物があるかどうか、レーダーやビデオを使って、センチメートル単位で特定できるといういことだ。

競合するメガサプライヤーとの違い

----:他のメガサプライヤーとの差別化要素はなにか。

ブーランダー:ボッシュは自動車のドメインだけでなく、スマートシティも含め広い領域をカバーしている点が他のティア1サプライヤーとの違いだ。また、自動車に搭載した各種のセンサーで様々な情報を検出し解析する知見がある。それをボッシュ独自のクラウドにアップして、他のサービスに利用している。クラウドスイートというプログラムによって自動車以外のサービスにも提供しており、IBMやSAP(ドイツのビジネス向けITシステムサプライヤー)が利用している。

----:ボッシュは都市交通のプロジェクトに参加しているが、自動車領域にフィードバックするためか。

ブーランダー:将来は人口の3分の2がメガシティに集中し、市街地交通が3倍になるという見通しがある。ロンドンでは市街地の交通の約40%が物流になっているという分析もある。そういう状況を解決しない限り、都市交通の未来はあり得ないので、力を入れているのだ。

地域によって、クルマだけではなく、バイクであったり、国によっては自転車が重要なモビリティというところもある。そこに我々の強みがある。バイクの事故が大きな問題になっているが、我々はバイク向けのABSを提供している。またバイクの大気汚染に対しても、自動車の技術を活かして安価なソリューションを提供している。バイクの盗難に対しても盗難防止デバイスがある。自クルマに限定せず幅広く対応しているところが大きな強みだ。

そしてこれはボッシュのDNAと言ってもいいが、ボッシュのスローガンは「Invented for life」であり、人類の問題、ユーザーの問題に幅広く対応していく。エミッション、交通ストレス、交通安全といった問題に対して、テクノロジーを通じて貢献したいという想いが我々の原動力だ。

自動運転・電動化・コネクティビティのなかの注力領域とは

----:いまから5年後に、自動運転・電動化・コネクティビティの3つの領域のうち、何がもっとも成長すると考えるか。

ブーランダー:比べることは難しい。コネクティビティは、いまは規模が小さいが、3桁の成長率で急拡大している。いっぽうパワートレインはすでに大きなビジネスで、成長率はせいぜい一桁。土台が違うので相互に比較することはできない。

メーダー:3つの領域を分けて考えることはできない。自動運転はコネクティビティがあって初めて成り立つものであるし、電動化も、パワートレインだけでなくステアリングも電動化し融合して、一つの大きなテクノロジーとして成長していくので、単に3つのうちどれか、と分けて言うことはできないだろう。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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