産業交流展2017(11月15~17日、東京ビッグサイト)のユタニのブースで、まるで双門の機関砲のような機械に遭遇した。
これはトラックやバスのタイヤ交換の際に2本ずつホイールナットの締め緩めができる2軸ホイールナット締付システム。同社によると、大型車の車輪脱落事故の大半は、ホイールナットの締め方が正しくない等の整備不良が原因なのだとか。そこで整備士1人で速く確実にタイヤ交換ができるための工具として考えられたのが、このシステムだ。
従来の工具ではインパクトレンチで締め付けた後で、トルクレンチでもう1度締めてトルク管理をする必要があるが、このシステムを使えば1度の締め付け作業でトルク管理も行える。
最初に製作した1号機は本体が回転するようになっていたが、整備の現場ではタイヤは浮かせて整備するため、上下と前後にスライドする機構に簡素化したそうだ。既に生産ラインでホイール1本分を一気に締め付ける専用レンチを使っている、いすゞや日野自動車に使ってもらって、評価してもらうとともに改良を重ね、商品化する方針だ。
同社はエアレンチの専門メーカーとしてインパクトレンチやエアラチェットなどを生産しているが、単なるインパクトレンチだけではなく、より専門性の高い工具製作を得意としている。
ETCレンチシステムはコントローラと接続することにより、締め付けトルクと締め付けたネジの本数を記録する。
「これはそもそもSRSエアバッグシステムを確実に装着するために、ホンダの依頼で開発された工具なんです」と同社技術部の本合一男氏。
さらに面白いのは、クランク状にオフセットされたエアレンチ。これは航空機のジェットエンジンのブレードを取り付けるための特殊工具。
「これで仮止めして、同じ形状のトルクレンチでトルク管理をするんです」
レンチ先端からまずシャフトで延長し、横方向への延長は平歯車をいくつもつなげることで実現しているそうだ。
もう一つ、見せてもらったのはダブル締付保証システムと呼ばれる工具。これは先ほどのエアレンチに似ているが、トルクセンサを2つ備えて、エアラチェットとして規定トルクで締め付けた後、トルクレンチとして確認の締め付けにより確実なトルク管理ができるのだ。しかもグリップ先端にはLEDランプがグルリと組み込まれている。
「これはエアで規定トルクまで締め付けると緑のランプが点滅し、その後手で締め付け直してトルクを確認すると点きっぱなしになるんです。航空機の内部で暗くて狭い部分に潜り込んで作業する場合でも分かりやすくしています」
従来の工具に比べ、5倍から10倍の速さで確実な締め付けができるとか。空の安全を確保しつつ、作業効率を高めてコストダウンに貢献する。航空業界のし烈な競争は、こうした工具メーカーの工夫によって支えられている部分も大きいと感じた。