2015年に実施した全国都市交通特性調査の詳細が公表された。調査では“動かない”20歳代若者の行動傾向が、より鮮明になってきた。
同年の調査は、国土交通省都市局が、3大都市圏と地方都市あわせて70都市4万7300世帯・約8万人を対象に実施。徒歩、自転車、原付バイクなどすべての移動手段を対象に、移動回数、目的などの詳細なデータを5年に1度、収集する。
年齢を重ねても外出傾向が変わらない65歳~75歳と比較すると、心配なのは20~29歳の若者だ。調査回答を寄せた20代は5000人の中身を見てみよう。
外出傾向を示す「外出率」で見ると、20代の若者、特に男性の休日外出率は51.1%だったこの数字は、20代男性の2人に1人が、休日に外出をしていないことを示す。休みだから寝ていたいと思うのは当たり前と思いきや、同世代の女性は60.1%、全年齢男性平均でも61.6%が外出している。また、同じ20代男性でも、就学や就労で外出しなければならない平日の外出率は81.2%、全年齢の男性平均85.2%、20代女性で80.2%であったことから考えると、若者=活動的のイメージからは遠い結果だ。
1日あたりの「移動回数」で見ても同様の傾向だ。移動回数とは、自宅から仕事、買い物、遊びなど目的を持って外へ出た場合に1回とカウントして、目的地を往復するだけなら2回。いくつもの目的地を渡り歩いた場合は、その分だけ回数が増える。
そうして割り出した20代男性の休日の移動回数は1.24回、平日でも1.91回。1度でも外出したら移動回数は2回になるので、2.0を割り込むほど、一度も外出しない人が多いことを示す。休日・平日ともに同世代の女性を下回り、なんと30年間で47%も“出不精”になっている。
詳細な調査結果は同省都市計画局のウェブサイトに掲載されているが、例えば、休日に「買物以外の私用」で出かける20代男性は、1987年に0.90回だったが、2015年の調査では0.34回に激減した。買物以外の私用には、通院や家族の送迎なども含まれるが、主に考えられるのは食事や観光、いわゆるデート的なものだ。同世代女性も0.82回から0.45回に下がっているが、ここに20代男性の独特な行動形態が見てとれる、というのは言い過ぎか。
20代の若者には、社会的影響も顕著に現れている。男女関係なく世代と就労形態別に1日あたりの「移動回数」を見ると、20代の若者は平日、休日ともに、正規、非正規、非就業の順に移動回数が減っていく。全年齢でみると正規と非正規では、それほど変わらない。それを示したのが、下記の数字だ。
●20歳代 平日
正規:2.13 / 非正規:1.73 / 非就業:1.34
●20歳代 休日
正規:1.56 / 非正規:1.35 / 非就業:1.12
●全年齢 平日
正規:2.38 / 非正規:2.39 / 非就業:1.92
●全年齢 休日
正規:1.90 / 非正規:1.84 / 非就業:1.45
ネット通販利用の普及や免許保有率の低下、可処分所得の減少。それは“動かない”20歳代の原因なのか結果なのか。「過去6回分のデータを初めて、ウェブサイトで公開した。何となくだったイメージが、データで初めて示された」と、集計結果をまとめた都市計画調査室は話す。さらに深い考察が必要だ。