過去にとらわれず、新しい価値を提供する技術開発へ…パナソニック技術IR

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技術IRは4名のプレゼンターによって進められた
技術IRは4名のプレゼンターによって進められた 全 14 枚 拡大写真

パナソニックは11月29日、同社の技術戦略をアピールする「技術IR」を開催し、中長期における同社の技術的な方向性を示した。

IoT時代を迎え、顧客価値がモノだけではなく、モノ+コトのイノベーションによってもたらされる社会へと移行しようとするなか、同社がこれまで得意としてきた、大量生産による製品(モノ)のイノベーションからの脱皮を強く訴える内容となった。

Society5.0時代のビジネスとは


説明会は4名のプレゼンターによって行われた。まず最初に専務執行役員の宮部義幸(みやべよしゆき)氏から、全体の方向性として、注力する領域と競争環境の変化について説明がなされた。

「住宅・自動車・エネルギーの3つの商圏に対して、「IoT/ロボティクス」と「エネルギー」という2つの領域に注力して進めている。」

「世の中はSociety4.0からSociety5.0(*)に移行しようとしている段階。パナソニックはこれまで、Society3.0の時代に大きく成長してきた企業であるが、5.0でのビジネスのやり方を身に着けるのが当社にとって喫緊の課題である。」

*Society5.0:内閣府・第5期科学技術基本計画による
宮部氏のプレゼンテーション資料

「Society5.0はIoTの世界。工場から製品を出荷した後にも価値を提供しなければならない。開発プロセスも、ウォーターフォール型からアジャイル型に移行すべきであり、そういった能力をつけていく必要がある。」
宮部氏のプレゼンテーション資料

”β”は完璧主義へのアンチテーゼ


続いて、各論について担当者よりプレゼンテーションが行われた。まずIoT領域について、ビジネスイノベーション本部 副本部長の馬場渉(ばばわたる)氏から、「ビジネスのデジタライゼーション」というテーマで説明がなされた。

馬場氏は、シリコンバレーに拠点を置く全社横断プロジェクト「Panasonic β(ベータ)」を統括する立場でもあり、同社のレガシーなビジネスモデルの変革者としての立場を強調する内容となった。

「歴史ある会社は新しい取り組みを、やもすると阻害する場合もある。それを解くための仕組みとして、全社横断プロジェクトとして「Panasonic β」を設立し、シリコンバレーを拠点として活動している。」

「ベータとは、(マーケティングや生産・品質管理に時間を費やす)完璧主義に対するアンチテーゼだ。Panasonic βは、とにかくスピーディーに数多くのトライアルを実行するチーム。設立して3か月の間に、約1300のアイデアからすでにプロトタイプを生み出している。シリコンバレーにも、こんなにスピーディーに動いて切る組織は無い。資金の問題や人材の問題が無い(本社全カンパニーから人が集まる)からだ。」
馬場氏のプレゼンテーション資料

「FacebookやAmazon、Googleは、彼らのサービスの指標としてDAU(デイリーアクティブユーザー)を使うが、パナソニックのテレビ、照明、家電・・製品に1日1度でも触れている人は推定5000万人だ。これらを製品を横串で繋ぎ、プラットフォーム化することを目指す。住宅、住設、家電がプラットフォームとなり価値を提供する。」

「パナソニックは、デジタルネイティブの企業と伍して戦えていない。完全に過去と決別し、ゼロから考え、始めなければならない。」

生産プロセスもアジャイルへ対応


続いて、生産技術本部 本部長の小川立夫(おがわたつお)氏から、高速プロトタイピングについての説明がなされた。アジャイル型の開発プロセスにおいては、アイデアをすぐにプロトタイプとして形にすることが必要であり、その点においても同社のノウハウが活かされているとアピールした。

「シリコンバレーから毎日のようにアイデアが出てくる。それらを形にするために、これまでやってきた大量生産や、ガチガチの品質基準といったやり方とは違うが、モノづくりのノウハウはある。それをラピッドプロトタイピングに活かしている。」

「ラピッドプロトタイピングには、金属3Dプリンターや立体物への加飾印刷技術を利用した。100個から1000個のプロトタイプを作るためには、金型製作の時間短縮が最大のポイントとなる。1000個程度の試作には十分耐える金型を、金属3Dプリンターで作り、デザインや質感を加飾印刷技術によって加えることができる。」
小川氏のプレゼンテーション資料

まずはリチウムイオン電池の性能向上


最後に、もう一つの注力領域であるエネルギー領域について、先端研究本部 本部長の相澤将徒(あいざわまさと)氏から説明がなされた。最近特に注目が集まる車載二次電池の基礎研究について、同社の知見を活かした取り組みをアピールした。

「車載電池については、当面の方向性はリチウムイオン電池のエネルギー密度の向上であり、続いて全固体電池や、空気などの新原理電池へと発展していく。」
相澤氏のプレゼンテーション資料

「次世代電池の研究は、何といっても新材料の開発が重要であるが、新材料の創出は非常に時間がかかりコストが高い。そこで当社では、Materials Informaticsというコンセプトを導入した。これはAIをベースとした新材料の創出方法であるため、AIのベースとなるデータの量と質がたいへん重要だ。そこで、外部機関と連携して論文データや材料データを導入し、さらに当社が持つ50年を超える電池開発のトライアンドエラーの実験データを組み合わせ、世界最大のデータベースを構築した。これにより、データ駆動型の材料探索を進める。」
相澤氏のプレゼンテーション資料

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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