【VW e-ゴルフ 試乗】まるで乙女のように心が揺れた4日間…中村孝仁

試乗記 輸入車
VW e-ゴルフ
VW e-ゴルフ 全 20 枚 拡大写真

生まれて初めて、ピュアEVを4日間試乗した。VW『e-ゴルフ』である。我が家には充電設備はない。だから充電は我が家の周辺もしくは行った先の周辺で、充電施設を探すことになる。

ピュアEVに初めて乗ったのは日産が初代『リーフ』をデビューさせた時、と言いたいところだが、単に試乗という意味ではそれよりもはるか前、たしか1990年代前半だったと記憶するが、GMが作った『EV-1』というモデルに試乗したことがある。後にこのクルマは量産されて、近代では史上初の量産EVモデルとして誕生したクルマだ。リーフにしてもEV-1にしても、その加速力は目を見張るものがあった。しかし、アクセルを全開にすると、電池残量はあっという間に減り、結果としてその素晴らしいポテンシャルを持ちながらも、ずっと我慢を強いられる乗り物というイメージが定着してしまった。

特に充電にかかる時間を考えると、出かけるにも十分な計画を立てないと狂いが生じるから、どうしても長期間乗ることには抵抗があったのである。広報の説明によれば、何の心配もなく乗れるということと、充電は日産だろうが三菱だろうが、最寄りのディーラーに駆け込めば、チャデモ方式の急速充電が可能だし…等々、自分自身で固く閉ざしていたEVアレルギーが減るかもしれないと思い、乗ってみたというわけである。

しかしそうはいっても、疑いの目がそう簡単に晴れることはなく、乗り出したその瞬間から、およそ使うであろうすべての電装品は切った。エアコン、ヒーター、ラジオ等々。そして最も見るメーターは航続距離。どうも相当なアレルギーを持っていたようである。

VWの説明では航続距離はJC08モードで301km。リーフを例に取れば、その航続距離はおおよそJC08モードの70%だから、ゴルフの場合は210kmと見込んでいた。で、借り出した直後の航続距離はJC08を上回る303kmとでた。おいおい、マジか?信じていいのか、これ?そうした思いが交錯しながら、とりあえずは自宅に向かって走り出した。

自宅までは、おおよそ25km程度。ちょっと寄り道をしながらだったので、その距離はおおよそ30kmだ。前述したように、走行に悪影響の有りそうなすべての電気は遮断した。幸い暖かく、エアコンやヒーターの必要がない丁度良いコンディションだったが、それでも上着を脱ぐというほど暖かくはない。

e-ゴルフには3つの走行モードと、4つの回生ブレーキの強さを、ドライバーが選べる。3つの走行モードとは、ノーマル、エコ、エコ+。4つの回生ブレーキとは、シフトレバーDポジションの下にあるBモード、こいつが一番強い回生力を持つ。それ以外の3つはDレンジに入れたまま、シフトレバーを外側に倒すと、1段階ずつ回生ブレーキが強くなる。3回倒せばBの次に強くなるという寸法で、Bを使わずともかなりの回生力が得られる。ただ、日産やBMWと大きく異なるのは、そのままアクセルを離して大きなブレーキ力がかかっても、最後の止まる寸前はその力が抜けて、完全停止に至らないこと。即ち、ワンペダルドライブはできない。

ノーマルとエコは十分な加速力が得られるのに対し、エコ+は大きく制約されて、これは完全な保護モードといっても過言ではないほど加速力が鈍る。その分航続距離は伸びるのだが…。で、帰宅した時、航続距離がどうだったかというと、かなりエコドライブをしたつもりだったが、それでも残りは215km。つまり航続距離303kmで走り出して、30km走って残り215km。ガソリン車のように素直に残り航続距離から走行距離を引けば次の残り航続距離にならないところがEVの嫌いな点。もっとも、それは気温やら交通状況やら、アクセルの踏み具合などに左右されるはず。この時点でEVアレルギーはやっぱりね…と元に戻ってしまった。

ところがそれから3日間、買い物を主に、もっぱら近所の走行に終始したのだが、そうした走りではどうも残存航続距離が落ちない。意地悪してエアコンを付けたり、ラジオ(そんなもの鳴らしたところで減るはずもない)を聞いたりしながら、少しずつ距離を伸ばしたが、最初にいきなりどんと減って以後、航続距離が激減することはなく、こりゃ使えるかも…に変わった。しかし、ならばと試しにガツンとアクセルを踏んで気持ちよい加速を試したところ、案の定航続距離は一気に減少。こりゃダメだ…とまた元の殻に。

結局、充電を試すことなく返却の4日目を迎えてしまい、つくづく自分のチキンさ加減を嘆いたわけである。それにしても最後はエアコンをがっつり効かせて、普通のクルマと同じように走ってまた返却に向かったが、自宅を出る時に140kmだった残存航続距離は、到着時に139kmを指し、たった1kmしか減らなかった。どうして?という疑問は付きまとったが、実際に走行した距離を足すと、実走行可能距離がおよそ270km。もしこれが本当だとすれば、JC08モード電費に対し、その9割という好成績になる。

少なくとも走りに関しては何らノーマルゴルフと変わるところはない。ただし、そのお値段499万円。これはかなり痛い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  2. 15歳から運転できる「小さいオペル」に興味アリ!「通勤用にこういうのでいいんだよ」など注目集まる
  3. ついにハイブリッド化! 新型トヨタ『ランドクルーザー300』の発表にSNSでは「バク売れの予感」など話題に
  4. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  5. 日産 リーフ 新型をライバルと比較…アリア、テスラ、bZ4Xと何が違う?
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る