Moto2プロトタイプに最速試乗!トライアンフ製3気筒765ccは「分厚くも鋭い刃物のよう」

モーターサイクル 新型車
Moto2プロトタイプマシンに試乗(ライダー:佐川健太郎)
Moto2プロトタイプマシンに試乗(ライダー:佐川健太郎) 全 13 枚 拡大写真

2019年シーズンよりFIM世界ロードレース選手権シリーズ「Moto2」クラスに独占的サプライヤーとしてエンジンを供給することが決定しているトライアンフ。その開発テスト車に試乗する機会を得たのでレポートしたい。

トライアンフは昨年6月に、MotoGPの商業権を保有するドルナとの契約により、新開発したエンジンを2019年から3年に渡り「Moto2」に供給することを発表、着々と準備を進めてきた。エンジンは新型『ストリートトリプルRS』が搭載する3気筒765ccがベースで、これにレース専用チューンが施されたものだ。

改造箇所はピストンやシリンダー、動弁系とギヤボックス、クラッチ、潤滑系など多岐にわたるもので、ECUもマニエッティ・マレリ社との共同開発によるレース専用タイプに変更されるなど大幅な強化・改良が施されている。スペック的にも最高出力133ps、最大トルク80Nmを実現するなど、ベースエンジンのストリートトリプルRS(123ps/11,700rpm、77Nm/10,800rpm)に比べると、パワーとトルクの大幅な向上が図られている。

今回試乗した開発テスト車は『デイトナ675』のシャーシにMoto2エンジンを搭載したマシンだ。アローのレーシングマフラーが奏でるビブラートがかった排気音がピットに響き渡る。前後サスペンションは英国・Kテック製で、ロータリー式のステアリングダンパーと鍛造ホイールが装備されている以外はノーマルのデイトナと見た目はほぼ一緒だ。

走り出してまず驚くのがスロットルレスポンスと回転上昇の鋭さ。エンジン内部のイナーシャーを極限まで削り取った俊敏な吹け上がりは、ストリートモデルではけっして味わえないものだ。スペック的には133psではあるが、このシャープさは紛れもないレーシングエンジンの証である。

車重もノーマルのデイトナより明らかに軽く、コーナーでの倒し込みも鋭いため、相当車速を上げていかないとクリッピングに早く付き過ぎてしまうほど。そして立ち上がりでは、3気筒ならではの分厚いトルク感とともに猛烈に加速していく。クイックシフター付きの逆チェンジを忙しく踏み下げていくと、あっという間にストレートエンドが迫ってくる。すべてが速いテンポ感になかなか身体感覚が慣れることができないまま、数ラップという短い試乗を終えた。

あくまでも開発テスト車ということで、実際のMoto2マシンとはシャーシ性能やディメンションも異なるため、ここで現行Moto2マシン(エンジンはCBR600RRベース)とどっちが速いかという比較はできないし、自分もそれを評価する立場にはない。ただ、765ccという排気量のアドバンテージはけっして小さいものではないと思う。

トライアンフ開発陣の話でも、「現状でエンジンはほぼ完成している。我々にとっても新たな挑戦であり、期待して欲しい!」と自信をのぞかせていた。2019シーズン開幕戦、3気筒エンジンを搭載したMoto2マシンの咆哮を聞ける日が今から待ち遠しい。


佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  2. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  3. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  4. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  5. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
  6. ホンダ『ヴェゼル』マイナーチェンジで3グレードに集約、納期改善へ…「HuNT」「PLaY」新設定で個性強調
  7. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  8. 多胡運輸が破産、首都高のローリー火災事故で損害賠償32億円
  9. ノンジャンル220台のマニアック車が集合…第15回自美研ミーティング
  10. <新連載>[低予算サウンドアップ術]“超基本機能”を駆使して「低音増強」を図る!
ランキングをもっと見る