自転車で登校中の高校生2人が巻き込まれて死傷することになった乗用車の暴走事件について、検察は運転していた高齢の男を過失致死傷の罪で起訴した。鑑定によって認知症の症状は否定されたが、意識障害の症状が確認されたという。
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今年1月、群馬県前橋市内の県道で乗用車が暴走させ、対向してきた自転車2台と衝突して高校生を死傷させたとして、前橋地検は26日、クルマを運転していた85歳の男を過失傷害の罪で起訴した。
問題の事故は2018年1月9日の午前8時25分ごろ発生している。前橋市北代田町付近の県道(片側1車線の直線区間)で右折待ちをしていたクルマに対し、対向車線を走行してきた乗用車が接触するとともに、対向車線側を約150mに渡って暴走。対向するように路側帯を走行してきた自転車2台とも次々に衝突した。
この事故で最初に衝突した自転車に乗っていた16歳の女子高校生が死亡。2台目の自転車に乗っていた18歳の女子高校生が頭部強打などの重傷を負った。警察はクルマを運転していた同市内に在住する85歳の男を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕。検察は認知症の疑いもあることから鑑定留置を行うなどして、慎重に調べを進めてきた。
鑑定の結果、男には認知症の症状は確認されなかったが、意識障害を伴う低血圧の症状を有していたことが捜査の過程で発覚。医師からもクルマの運転を控えるように注意されていたことがわかった。
事故当時も意識障害を起こしていたとみられ、検察は鑑定の結果からも「刑事責任能力あり」と判断して男を自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死傷)の罪で起訴している。
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起訴された男が有していた意識障害の症状は低血圧によるもので、運転中に発生する可能性を認識していたとしても、危険運転罪の適用基準には入っておらず、よって同罪の適用ができなかったようだ。
男には以前から運転中の意識障害が発生していたとみられ、本人がその症状と危険性を自覚してクルマの運転を控えていてくれたのであれば、このような悲惨な事故は起こらなかったことは間違いない。