【トヨタ カローラハッチバック 試乗】世界中の“若者”の反応が楽しみな1台…木下隆之

試乗記 国産車
トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)
トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ) 全 44 枚 拡大写真

「これがカローラ?」

富士スピードウェイで開催された試乗会の会場に並ぶ新型『カローラ』のプロトタイプを見た瞬間、僕は思わず立ち止まってそうつぶやいてしまった。

カローラといえば、言わずと知れた日本の国民車である。初代がデビューしたのは1966年だから、時代は戦後の動乱期を乗り越えた高度成長期の真っ只中。2018年の今年、年号は昭和から平成になり、来年にはあたらしい年号を迎えようとしている。それほど長い間、日本を代表する大衆車として君臨してきたのだ。

カローラは、日本の国民車に留まらない。世界の16拠点で生産され、世界152以上の国と地域で販売されている。世界販売台数は4600万台。「10秒に1台がお客様のもとへ」届けられているという計算。

そんな世界の大衆車カローラが、52年目を迎え、12代目モデルとなる新型で、がらりと宗旨替えとなった。「大衆車=凡庸=チープ=地味」というイメージの完全払拭を狙ったのだ。

開発責任者の小西良樹CEはこういう。

「カローラを若い人達に…」。

これまでのユーザー構成は、60歳~70歳。それを半分以上若い、20歳~30歳の男女にしたいという。ターゲット層を孫子の世代に落とし込むのだから、大胆な施策が必要だった。旧態依然としたイメージが全くなく、趣がガラリと変わったのも納得がいく。

かくして完成したカローラ プロトタイプはまず、ハッチバックが先行してデビューしたことがエポックだ。今後、セダンやワゴンに拡大していくのだろうと想像するけれど、まずハッチバックから投入するというのは、『オーリス』の販売が近く停止するという事情だけでなく、若返りの狼煙だと思う。

顔つきはキーンルック。フォルムは塊感が強調されている。何も予備知識がなければ、これがカローラだとはほとんどの方が気づかないのだろう。

インテリアにも大衆車的なチープな印象はない。インパネは水平基調にワイドで、コンソール系は太い。横方向に広い印象なのだ。後述するが、スポーツ仕様もオプションで選べるようになっている。カローラからスポーツという言葉を聞いたのは、いつのことだっただろうか。

そしてさらに、走りも若返りを果たしている。エンジンバリエーションは2タイプだ。1.8リットルハイブリットと1.2リットルターボ。ハイブリッドはトヨタ伝家の宝刀 THS2 であり、プリウス等に搭載されている最量産ハイブリッドである。それに、スマートサイジングターボが加わるのだ。1.2リットルターボには、FFだけでなく4WDも選択可能だ。

そして驚くのは、1.2リットルターボにはマニュアルミッションが設定されていることである。

「若い方にもマニュアルミッションを操る楽しみを味わって欲しい」

小西CEはそういう。

AT限定免許証の取得比率が7割に届こうというご時世に、マニュアルミッションを設定するのはつまり、カローラの若返りである。マニュアルミッションがそれほど若者のハートに響くか否かの議論はともかく、鼻息の荒さはその辺りに現れている。

実際に、1.2リットルターボは、それほどパワフルではなく、高回転まで回るわけでもない。エンジン特性から爽快感や躍動感を受けることはないが、シフトレバーをコキコキするこの感覚は懐かしい。かつて一斉を風靡したホットハッチを思い起こさせるのだ。

特徴的なのは、発進時にエンストしないよう、クラッチミートのその加減に連動して、エンジン回転を引き上げてくれる。しかも、シフトダウン時にも回転を高めてくれるから、ギクシャクすることがない。もはや死語なのかもしれない「ヒール&トー」というドライビングテクニックを、クルマが自動で制御してくれるのである。意地悪なクラッチ操作ではエンストもするけれど、マニアルミッションアレルギーの人には歓迎されるだろう。

操縦安定性も整っている。特にハイブリッドに採用され新開発のダンバーがいい仕事をしている。ステアリング応答の初期レスポンスが鋭く、スッキリしているのだ。これには驚いた。

そう、新型カローラは小手先のイメージだけ若返らせたのではなく、中身にも真摯に手を加えているのである。世界の若者がどう反応するのか、楽しみに見守りたい。

カローラハッチバックプロトタイプと木下隆之氏

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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