【VW up!GTI 試乗】“GTIらしさ”あふれるファインチューン…島崎七生人

試乗記 輸入車
VW up!GTI
VW up!GTI 全 44 枚 拡大写真

GTIと聞いただけで心ときめく…というクルマ好きの方は多いのでは? かく言うレポーターもそんな1人で、なので今回『up!GTI』の導入を知った時には「本当に!? やるなぁ、VW!」と思った次第。

ところでGTIというと、やはり初代『ゴルフGTI』が今でも真っ先に思い浮かぶ。以降リアルタイムで試乗してきたどのGTIよりも走りがキレッキレで、回すとパワフルさ全開のエンジンは痛快そのものだった。確か中古車誌の取材で並行輸入車を日本で乗ったのだったが「これでポルシェを追い回すのかぁ」といたく感銘を覚えたもの。

次いで『ゴルフ2』時代に正規輸入された最初のSOHCモデルも記憶が鮮明な1台。このクルマは初代とは打って変わり、下から実に息の長い加速が味わえ、しなやかな身のこなしと相まって、大人の味わいで、気持ちよく走らせていられるクルマだった。

ほかにGTIというと『ルポGTI』も思い出す。日本では1999台が販売されたそうだが、小さなボディに1.6リットルのハイパワーエンジンとマニュアルミッションを搭載。このクルマもまた、回すと活きのいいパワーフィールが味わえる上、ヒラリヒラリとワインディングもこなす、すこぶる気持ちのいいクルマに仕上げられていた。

さてup!に限定600台/219.9万円で設定されたGTIである。資料には初代ゴルフGTIに対し、ボディサイズ比で80mm短く、95mm高く、22mm幅広いと書いてあった。初代ゴルフは当時、背の高い部類だったが、現代のup!はさらに95mm高いのは驚き。だがホイールベースは初代ゴルフが2400mmだったからその差は20mmの近似値、2ドア同士という点は共通ということになる。ちなみに車重はup!GTIがちょうど1000kgなのに対し、初代ゴルフGTIは何と820kg。前述のルポGTIは1010kgだったから、車重の感覚は今回のup!GTIにほぼ近い。

そして実際の走りだが、第一印象は“意外にも重厚で穏やか”だった。2ドアだからなおさらだが、実感するのはまず、剛性が相当に高そうなボディがビクともしないのが乗員の身体に伝わってくること。次いでサスペンションだが、きつい入力があった時だけ17インチタイヤ(195/40R17 81V・グッドイヤーEFFICIENT GRIP)がガツン!とショックを伝えるものの、それ以外は街中でも十分にしなやかな乗り味をもたらしている。

エンジンについては、3気筒の1リットルエンジンがターボ化され、116ps/20.4kgmの性能を発揮。こちらも回せばグングンと回転をあげ、パワフルさをみせつける。また“音の演出”も入っているため、2500rpmあたりから、スポーツカーのようなメカニカルな疑似エンジン音が響く仕掛けも。回せばヴィヴィッドなパワー感が味わえ、アクセル操作次第でスマートに走らせることもできる…そんな許容力の大きさが特徴だ。シフト、クラッチはクセがなく、乗った瞬間からスムースな操作を可能とさせてくれる。

ハンドリングはセオリーどおりに走らせている限り、コンパクトな高性能車らしい冴えのある走りが楽しめるものだ。

ボディカラーはソリッドの赤、白、黒の3色の設定だそう。これもGTIらしい。赤いストライプや室内のチェック柄シートもGTIらしいアイテムだ。全体として、最新の各種デバイスに頼っている風ではなく、エンジンも足も仕立ても、あくまで素朴なGTIという名のファインチューンが楽しめる…そういうクルマに仕立てられている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

《島崎七生人》

島崎七生人

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト 1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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